ホアンと稲垣夫婦のホームステイ日記

                                                   愛子 記

8月3日(金曜日)『AFS留学生8・6広島平和体験ツアー』
今日から4日間、中四国のAFS生が広島に結集
し、8月6日の原爆記念日にあわせ
平和学習をする。総勢40名位の留学生が各県から集まって来る。
ホアンは午後3時に広島駅に到着するメンバーのチェックをする役目である。
そしてLPの方も一緒に、留学生と共にこの平和教育に携われる。

賀茂北高校へ通っているコスタリカ出身のErickと、福山大門高校に通っているチリ出身Javier
このピース教育の期間、我が家に滞在する。
短期間のショートステイとはいえ、総勢40数名なので、なかなか引き受けが見つからないので
我が家でまとめて、もう2人面倒みる事にした。

ホアンと同じスペイン語圏なので、さぞかし賑やかな事だろう。
夕方5時15分に私達ホストファミリーは女学院高校にホームステイの留学生を引き取りに行く。

この体験ツアーの間、ホアン達は平和公園の慰霊碑を参拝したり、語り部の方の話を聞いたり
8月6日の原爆記念日当日には、平和祈念式典に参列する。

こういった機会は彼らにとって二度とないチャンスかもしれない。
戦争の愚かさ、原爆の凄まじさ、恐ろしさを語り部の方の実際の体験談や記念館の展示物等を通して
学んで欲しいと切に願う。

平和教育を受けた翌日は、ホストファミリーとのフリーデーも設けられている。
さて、さて何をして過ごそうかなぁ〜??

朝は少し遅い出勤にして、夕方彼らを迎える準備をしておく。
ホアンは空手クラブの稽古がある予定だが、時間の関係で少し難しいので、行かない様だ。

3時までは少し時間があるので、LPの方の家で少し日本語の勉強をしたり、昼食を一緒に頂いて
それから一緒に広島駅に向う予定となった。私が会社に出る時にホアンを伴って出る事にする。
12時半にLP、Nさんのご自宅にホアンを送り届ける。

今日は3時に広島駅に着いた生徒達は会場である女学院高校まで行き
そこで、名札をもらったり、今日からの行動予定等詳細の確認作業をする。
17:15にホストファミリーと面会し、18時にそれぞれのホストファミリーに引き渡され解散となる。

彼らの引き取りは主人に行ってもらう事にする。

   広島支部長 jefe de Hiroshima sucursal    中南米3人組

   なんだか・・・賑やかになりそうな予感!    急遽、ショートステイを引き受けて下さったTさんの奥さんとタイの女の子

6時半過ぎ主人が会社まで連れて帰ったエリックとハビエルを今度は私が自宅に連れて帰る。
ホアンは今日から、駅の近くにあるK−I道場の正道会館に通う事になった。
8時から1時間の練習だ。ホアンは、もううれしくて仕方無い。
エリックやハビエルなんかそっちのけ。気持ちは既にK−1道場に行ってしまっている。

   見よ!この眼光!lucha cuerpoi a cuerpo    ディフェンス dirigente

   スウェー    レッグ・ディフェンス disfrutar de cuerpo

車中では、ハビエルとエリックが賑やかにスペイン語でまくしたてている。
これにホアンが加われば・・・・??? 急に私の心は不安にかられてきた。
まあ、いつもの調子で”なるように、なる!!”だわ。もうほったらかしだ!

今日も一日暑かったので、さぞ身体はべっとりしているだろうと気遣って
「シャワーを浴びなさい!」と勧めたが、どうも彼らにとってのシャワーは
朝出がけ等にするものであって、中途半端には浴びないようである。
それでは・・・と、すいかを食べさせて、冷たいものをとりあえず、出して並べておいた。

お腹が空いているかもしれないと思い、「晩御飯、すぐ食べますか?ホアン待ちますか?」と
聞くと、出された水物でお腹がとりあえず落ち着いたと見えて、ホアンの帰りを待つという。

エリックは国のお母さんから・・・と言ってコーヒーと絵はがきをプレゼントしてくれる。
ハビエルも福山のホストマザー荒木様が、畑で出来た沢山の野菜を箱一杯ことづけて下さった。
お礼の電話をすると、恐縮しながら宜しくお願いします・・・と言われる。
荒木様は先だってホアンがAFSの行事で福山に行った時お会いしているので、
ホアンの事もよくご存知でいて下さる。
さぞ賑やかで大変でしょう・・・と労をねぎらって下さった。

9時半過ぎ、主人がホアンと一緒に帰って来た。
ホアンは肩をいからせて、何だかK−1格闘技の余韻が続いているような様子である。
今日が初めての練習なので、主人も一緒に付いて行った。
一時間があっという間だったよ!と興奮している。
コロンビアでは忍術という格闘技を習っているので、若くてエネルギーは有り余っている・。
足と腕にプロテクターを付けて、実際に相手をヒットするのである。

安芸府での空手クラブも、それはそれで型が美しい!と魅力を感じてはいるのだが
やはり血気盛んな高校生ホアンは、思いっきり打ったり、蹴ったりする実感が欲しいのだろう・・・。

   コスタリカもチリもとってもいい所、是非遊びに来て下さい!!    コスタリカ出身 エリック(Erick)東広島 賀茂北高校です。

   スペイン語沢山話せて、僕ご機嫌!!    チリー出身ハビエル(Javier)です。福山大門高校です。

   おかさん、これちょっと男と男の約束!!    僕 イナガキ ホアンです!!K−1闘って来ました!!

夕食を済ませ、お風呂に入り、二階に上がって行ったが、2時か3時頃までうだうだ
と話声が続いていた。
また明日起きないのだろうな〜!!
8月4日(土曜日)『慰霊碑巡り・原爆資料館見学』
今日は、朝9:00に国際会議場前に集合になっている。
夕べ遅くまでおしゃべりしていたので、3人共なかなか起きては来ない。
私は、近くの小学校で町内会の盆踊り大会があるため、その準備で出かけなければならない。
8時半過ぎ、彼らを主人に頼んで、私は出かけた。いつまでも面倒みてはいられない。
出る間際になって、シャワーを浴びたり、ほんとにのんびりの南米組である。

今日彼らは、一日平和公園内の慰霊碑巡りや、原爆資料館の見学・夕方には語り部による
被爆体験談も聞く予定だ。

私達ホストファミリーは夕方再び彼らを迎えに行く事になっている。
私が町内会行事に手を取られているため、パラグライダーに行った主人は
早々に引き揚げてホアン達を迎えに行く事にしている。

AFSの行事が夕方終ったら、ホアンはジョー君の太鼓演奏を聞きに行くと言っていた。
聞きに行くのは良いが、果たして何処へ行くのか聞いているのだろうか?
主人も場所については全然わからない。
自分が何処へ行くのか、まったく頓着の無いホアンである。
揚句にはおかさんが聞いているはずだ・・・と言う始末だ。
ジョー君が前にほおずき祭りで演奏した、牛田小学校のあたりでするような事を
言っていたので、主人も適当に3人を投げといて帰ったと言っている。
「後は分からなければ自分で聞いて捜して行きなさい!、終わったらタクシーか何かで
帰るように言っておいた」と言う主人。
3人で何とかするよ・・・と主人と携帯で連絡を取り合って話す。

私の盆踊り大会は夕方に始まり、夜9時まで賑わった。
この盆踊り大会にホアン達をカラオケで出す予定にしていたのだが
和教育の後、ジョーの太鼓を聞きに行くと言うので、帰ってくる時間が検討つかない。
やむなく、カラオケ出演はキャンセルだ!

私も盆踊り大会が終り、役員さん達の反省会に出席して、帰ったのは11時半だった。

帰ってみると、息子と主人だけで、ホアン達南米組はまだのようだ。
今日は私も朝早くから出かけ、炎天下ですっかり疲れてしまったので、
ホアン達の顔を見ずに先に蒲団に入った。

蒲団の中でうつらうつらしていると、11時半をだいぶ廻った頃、開けっ放した窓の外に
話声がかすかにこちらに近づいて来る。
「ああー帰った帰った・・・」と思い安心して私は眠った。

8月5日(日曜日)『パラグライダー体験する』
今日は留学生とホストファミリーのフリーデー。
どのフォストファミりーも留学生をどんなふうに、もてなしてやろうか?と
いろいろ計画をたてておられる事だろう。我が家では、主人自慢のパラグライダーの体験
させてやろうと意気込んでいる。
あらかじめ、長袖、長ズボン、スニーカーを持ってくるように言ってある。

私は今日はお花の方の集まりがあって、あいにく一緒に出かける事が出来ない。
もう主人に全部任せる事にした。
最初は低い丘の有る牧場で練習する。この暑い中、彼らはちゃんと練習するだろうか???
途中、暑さで根を上げるのではないか?と心配になる。

   準備体操  experienciade parapente    パラの説明

   緊張のホアンAhora yo toca el turno    何だか分かりませんがハイハイのコスタリカのエリック

   テ−ジャスランチで昼食 Estoy cansado    眠たくなったチリーのハビエル

どうなったか、気になり途中携帯で主人に様子を聞く。
今日は風が少し強いくらいあるのだが、余り方向が良さそうでない。

夕方には神の倉に移動して、インストラクター山本さんにタンデムフライトをお願いしている。
お花の集まりが終わって5時過ぎに家に帰る。
もう一度携帯で様子を聞くと、やはり風の状態がわるそうで、今日は彼らは飛べんかもしれん・・・と主人。
ホアンはこれからいつでも飛べるので、せめてエリックとハビエルにはタンデムフライトを体験させて
やりたいなぁ〜!!

   タンデムフライトのハビエル preparativo    

   心臓バクバクのエリック  lanzarse en parapente    エリックの右足はソックスだけ

   ヤレヤレ何とか無事に終わった    エリックの忘れ物です quitarase un zapatos

家にいてやきもきと気をもんでいると、もう日も暮れてきた8時前頃、なんとか夕方飛べたと連絡有る。
これから帰るが、彼らは今日練習で汗一杯かいたので、お風呂に連れて行きたいと言う。
それでは!と彼らの着替え・タオル等を持ってお風呂で待ち合わせる事にした。

少し私の方が早かった。10分程待合室でまっていると、4人揃って入って来た。
彼らはその存在だけで、賑やかだ。その上、スペイン語でベラベラとまくしたてると
周囲の注目の的となる。
ここの食道は結構美味しくて評判が良いので、席は満杯。少し待たなければならない。
彼らはゲームをしながら待っている。少しして”イナガキ様〜!!”と呼び出しがかかる。
席に付くと、エリックもハビエルも今日のパラグライダーの初体験で興奮状態。
デジカメを向けて今日の感想を一言!!
ハビエルは素晴らしかった!インストラクターの先生がブンブン振り回されたので、ひゃあー!!ひゃあー!!
でも楽しかったヨ!!とニコニコ顔。
エリックはテイクオフで走り出す時、インストラクターの先生ががエリックの靴のかかとを踏んでしまって脱げてしまった。
”僕の靴!靴!”と止まろうとしたら、インストラクターが”Run Run!!”と言われて、靴がテイクオフに片方
取り残されてしまったよ!と興奮さめやらぬ状態で話す。

   僕 片方の靴 脱げちゃった!   despues de parapente    皆さん!感想を一言づつ どうぞ!!

    稲垣おとさん すっごく かっこいいです!    皆んな 飛べて良かったね!! 

   こんなにして びゅ〜んとねー!!心臓バクバクだぁー!!     お風呂で汗もながしたし、最高の一日だぜ〜!!tomar el bano!

明日は原爆の祈念式典参加で朝6時40分頃平和公園近くまで行かなければならない。
お風呂から帰るとすでに11時半。寝なさい!!と言うと、「ちゃんと起きますから、今日のビデオちょと見たいです」
と主人に頼んでいる。
『仕方ないなぁ〜!』と苦笑いしながら、見せてやる主人。
私も今日は一緒に行けなかったので、どんな様子か見たくて仕方無い。
ビデオには、彼らのテイクオフの瞬間の緊張の様子、必死で走るテイクオフの瞬間等
彼らの思いが手にとる様に伝わってくる。
ビデオを見た彼らは安心して2階へと上がって行った。

何事も無く、無事タンデムフライトをさせてやることが出来た。主人も満足そうである。
彼らの良い思いでになれば良いなぁ〜!!

8月6日(月曜日)『第56回原爆祈念日』
今日は原爆投下後、第56回目の祈念祈念日である。
ホアン達もこの式典にAFSから参列する事になっている。
今朝は特別早い!6時50分には平和公園のあたりに行かなければならない。
夕べパラグライダーのビデオを見たりして、少し遅かった。
この寝ぼう3人を起こすのは至難の業だ。
とにかく起きた者から、シャワー、食事を食べさせる。
ところが、起きてもなかなかさっさとはしてくれない。
本当に南米気質というか、南米時間というか、次第次第に私達のボルテージが上がってくる。
際になってもまだシャワー浴びたり、南米の賑やかな音楽をかけて、鼻歌混じりに支度をしている。

ついに主人は車のエンジンをかけて待つ事にした。
どどど・・・・と階段を駆け下りて来る彼ら。やれやれ・・・・!!!

台風一過、やっと出かけてくれた!一息ついて、私も朝食、洗濯など済ませ、会社に出かける。

式典が終わると、彼らはホストファミリーと過ごしたり、一応自由時間となっている。
私達は仕事なので、かまってやれない!
3人で適当に町をウロウロして、楽しんで帰るだろう。

明日、息子はアメリカに戻ると言っていた。
4時頃、会社に電話して来て、「今から大阪に行くから・・・」と言う。「ええっ〜!!明日じゃーなかったの?」
「明日の関空からのフライトが朝8時過ぎで早いから、今日行っておかないと・・・」と毅。
ホアンの事や、平和教育で我が家にステイした、ハビエルやエリックの事にかまけて
息子の事にあまりかまけてやれなかった事が悔やまれた。
間に合うかどうか分からないが、すぐに家に帰って、せめて駅まででも送ってやりたい。
そう思って、すぐに車をとばし、家に帰った。
まだ、居た。支度のととのった息子を駅まで送る。あまり沢山の荷物は無いが、
ノートパソコンと着替えや、本等の荷物が重そうだった。
素直に喜んではくれなかったが、母としてのせめてもの、気持ちであった。

「ホアン、帰ったら、おかさんの事務所に電話してちょうだい」とメモを置いて、会社にもう一度戻る。
さて、南米3人組みはいつ頃帰ってくるのか、どこで何をしているのか、検討もつかない。
ゲームセンターにでも行ってるかもしれない。
ホアンは財布を忘れて行っている。あまりお金を使うような所へは行けないだろう。

いろいろ思案しながら、少し遅くまで会社に居た。ホアンからは電話が無い。
まだ帰ってはいないようだ。
いづれにしても、帰って夕食の支度もしておいてやらないといけないなー。
薄暗くなり始めた外を見ながら思案する。とにかく、帰ってから考えよう!
そう決めて、家路に向う。殆んど家に近いバス停を過ぎたあたりで、薄暗い中に3人の姿。
ああ!ホアン達だ。彼らの横で、車を留める。「ああ!おかさん!」とホアン。
ハビエルも”やれ、うれしや”!!という表情で一番に車の中に飛び込んで来る。
ホアンは所定の席、助手席に、エリックも後部座席のハビエルの横に突っ込む。
彼らは歩きくたびれたという様な表情だ。

3人を家に連れて帰り、「夕食は?」と聞くと、「夕食、ありません!」と言う。
どうやら、未だ何も食べていない様子だ。
「みんな、お風呂に行けば連れて行ってあげるよ」と言うと、ハビエルは行きたくないという。
ホアンは「おかさん、ラーメン、ラーメン」と言う。
「じゃー近くの食道で何か食べましょうかー?」と言うと、ハビエルすかさず「レストラン!レストラン!」と言う。
主人に連絡をとり、会社の近くのトンカツ屋さんに行く事になった。

夕食を済ませ、ホアンは主人の車に乗り、エリック・ハビエルを私が連れて家路に着く。
今日で彼らの平和教育実習も終り、いよいよ明日はホストファミりーの所へと帰って行く。

賑やかな一団であったが、あまり私はかまってやれなかったなぁ〜!!ごめんなさい!
毎日彼らのスケジュールも一杯で、一日出かけている事が多かった。
3人からはあまり原爆の事についての感想等、聞く機会が無かったのは残念だった。
3人一緒にいると、スペイン語がにぎやかに飛び交うので、私たちとのコミュニケーションの場が
全く無かったのは、とても悲しかった。

若い者3人が寄れば、むりからぬ事ではあったのだろうが、やはり、心の中には
ポカンと穴があいていて、私も主人もむなしさだけが、残ってしまった。
それは、せっかくチリー、コスタリカといろんな国の若者と接する機会がありながら
ゆっくりと話をする時間が無かったからだと思う。
家に帰って来ても、直ぐ外に出て話をするし、なにかしら、淋しい思いがした。
ホアンはホアンで、僕達が居間で沢山話しをすると、おとさんテレビ見てるので
うるさいと思って2人を連れて外に出たんだ・・・とホアンのやさしい思いやりがわかって
少しうれしかったが・・・・・。

息子もアメリカにまた行ってしまったし、なにかしら淋しくて、今日は早く蒲団に入った。
3人組も私が早く2階に上がったので、いつもより早く、蒲団に入って様だ。

8月7日(火曜日)『ピース教育終わる』
今朝は8時50分に広島駅だ。
ホアンも皆が来た時と同じ様に、帰路に付くメンバーのチェックをする役目が残っている。
朝私が出かける時、彼らを駅まで届ける。
今朝も相変わらず、ぎりぎりまで、のんびりの3人だ。
揚句の果てに、ハビエルは主人の車にお気に入りの帽子を忘れてしまったと言う。
会社の主人の車まで行っていれば、少し遅くなりそうだ。
えい!!120Kmで飛ばして、無理矢理会社まで行く。
帽子をとって、広島駅に着いたのは8時45分。
「あ〜ぁ、これで、やっと肩の荷がおりたぞー!!」
別れ際にエリック 「おかさんの家、おもしろかった!!ありがとう・・・」
ハビエル「ありがとうございました??・・・」彼はとっても早口なので、
日本語を沢山話せるにもかかわらず、最後まで何を言っているのか、わからなかった。

ホアンもさぞ疲れた事だろう。とってもよく気が付く子なので、彼らと私達の間で
気も使っただろうし・・・。

今日はホアンはK−1の練習日だ。一度家に戻って、夕方出かけて行く。
8時からなので、私が家に帰った時はまだホアンいるかもしれないなー・・・。
空手と違ってK−1は彼の好きな事なので、喜び勇んで行っている。

夕方帰ってみると、ホアンはのんびり庭でくつろいでいた。
K−1行く?と聞くと、「もちろん」と言う顔。
支度をして、出かける時間になったので、私も買い物がてら、近くのお店に
今朝ホアンのバス定期が切れたので、頼んでおいた。
ホアンにお金を持たせ、新しい定期をもらいに行かせる。
「それじゃー 行ってらっしゃい!」バスに乗るホアンを見送って、私は再び家に引き返す。

ホアンのK−1練習は8時から9時までの一時間だ。
ホアンが居ないとどうも手持ち無沙汰だなー・・・。
先にお風呂に入ったり、テレビを見たりして時を過ごす。
10時半、意気揚揚とホアン帰って来る。



8月9日(木曜日)『ジョー君 帰国』
今日は同じクラスにアメリカから留学してきていたジョー君が半年間のホームステイを終え
アメリカに帰る日だ。
ホアンは昨日由也君と打ち合わせて広島駅まで見送りに行くといっていた。
夜、明日は一人で起きるのね?と聞くと「明日は、特別の日です。僕絶対起きます!」なぁ〜んて
一人前の事を言っていたが・・・・

ジョー君は広島駅を7:30の新幹線で発つ予定だそうだ。
今日はスペシャルデーです!と言っていたホアンをすっかり信用していた私は、ホアンの事は
すっかり忘れていた。気が付くと時計は6時半過ぎをさしている。
”これは大変!!”急いでホアンを起こし、支度をさせるものの、シャワーを浴びて出かける支度の
整ったのは7時過ぎとなった。
「おかさん ちょっとお願いが・・・・」とばつ悪そうに私を見て懇願する。
「どうしたの??お金??」と聞くと、「みんなと会うの7:00です。間に合わない!!」と言う。
「何と言う事だ!!あれほど大丈夫と言っておきながら・・・・」
急いで主人を起こし、車を走らせてもらう事にする。この時間観念の無さにはいつも泣かされる私達。

ジョー君を見送った後は、由也君達とまた遊び廻るのだろう・・・。
とにかく間に合えば良いが・・・・。

会社で仕事をしていると、
「今、由也の家です。もちょっとここに居て、夕方帰ります・・・」と殊勝にも報告してくるホアン。
じゃー、あまり遅くならないで帰るのよ」と伝え、今朝急いだのでホアンは家のカギを持って出ていない。
「ホアンが先に帰ったら、カギは横の箱の中よ」と伝えると「おぉ!・・・」と気が付いて、はっとした様子。
「ありがとう!」と言って電話切る。

さてさて、夕方私が早いか、ホアンが先に帰っているか・・・・
そう思いながら家路につく。
帰ってみると、玄関のカギは未だ閉まっている。『ああーまだ帰っていない!!』
夕ご飯の支度をしながら、ホアンの帰りを待つ。

そうしていると、電話だ。
「おかさんですかー?ホアンでーす。今由也の家。おかさん来て下さい」とホアン。
「何言ってるの?おかさん夕ご飯の支度、一人で帰りなさい!」
「でも、砂田君来ています。かれギターとても上手。おかさん、聞かなければ、ならない!!」と言う。
砂田君は由也の一番の友達。山口きららに行く日に由也を送って来た、好青年だ。
「おかさん、砂ちゃんのギター聞きたいけど、行けません。
どうしてもだったら、おとさんに電話してみてちょうだい」と伝えると、
「わかった、会社電話してみる」と言って、すかさず電話切るホアン。
そして1分もたたないうちに「おとさん、OKです!おかさん、こなければならない!!」
ホアンが覚えたての日本語を言うと、何だか断れない、その気になるから不思議だ。
方向音痴の私が夜の町をとばして、由也君の家に向うが、迷わずに行ける訳が無い!
何度も聞きながら、ようやく由也君が近くまで、迎えに来てくれて、ようやく到達だ。

由也君のマンションに行ってみると、ホアンはご機嫌で砂田君の演奏を楽しんでいる。
彼はギター片手にそしてハーモニカまで同時に演奏する、エンタティナーだ。
由也はホアンに自分で料理したという惣菜を、炊きたてのご飯と共に出してくれた。
ホアンは美味しい!美味しい!といって、食べている。
「おかさん、食べてみて、とてもおいしい」とホアン。由也とホアンが食べ終わったので
少し主婦をして、お茶碗を洗い、「おとさんと夕ご飯食べて、また迎えに来てあげるから・・・」と
一旦いとまする。
由也くんも砂田君も今時珍しい位とってもいい子だ。素直でピュアーな心を持っていると思う。
ホアンもそういうところにひかれているに違いない。

主人と夕食を済ませ、ホアン共々我が家についたのは、夜11時頃であった。
ホアンにとっては、ジョー君との別れは悲しかったようだが、日本語を話さなければならない
環境になった事をホアンは少し喜んでいるようだ。
ジョーもエイミーもドイツから来ていた女の子も、皆んな帰ってしまった。
2学期から、留学生はホアンひとりになる。

8月10日(金曜日)『おかさん 怒る』
今日は太田川の花火大会がある。
夕方家に帰ると、ホアンすかさず、「今日、エリック電話ありました。今ホストマザーと広島に
花火を見に来ました。ホアンも来ませんか?」との事だったそうだ。
でも、「僕K−1有ります、行きません」と断ったそうだ。K−1の威力はすごいものだな〜!!。

夕方、あれでも私と主人で花火を見に行くかもしれない。
ホアンがK−1が終わって食事一緒にするようになるかもしれない・・・・と考え、
ホアンに私の携帯を持たせて置く。
勿論、ホアンのK−1の稽古が終わるのが遅いので、何かあったら電話しなさいと言う
気持ちでもあった。

ホアンの帰りも10時過ぎになるので、主人と先に夕飯を済ませ待っていた。
10時過ぎ頃、ホアンより電話。「今から、由也と三滝に行きます。おかさん行っていいですか?」と言う。
「行ってもいいけど、あまり遅くならないようにね・・」と言って電話を切る。
多分由也達は花火を見に行くと言っていたので、クラスの友達が何人か集まって、
花火を楽しみに行ったのだろう。そのながれでホアンを誘ってくれたのだろう。

遅くならないように!と釘をさしたものの、12時になっても、1時になっても帰らない。
携帯を持たせたのに、連絡も無い。
1時を回って主人は蒲団に入った。私もその内帰って来るわよ!と思いながら、蒲団に入ったものの
寝られない!
もう、どこで何をしているのか!・・・と心配と苛立ちがつのる。携帯電話を入れてみる。
「ホアン!今何処に居ますか?」 「今、広島駅。バスありません」と言っている。
そんな事分かりきっている事であろうに・・・ともう私は頭に来た!
「どうして、携帯もってるのに、電話しないの!!」と怒りの言葉が口を突いて出る私。
「おかさん、ちょっと英語で・・・」と私の剣幕におどおどするホアン。
言うだけ言って私は電話を切った。
追いかけて、由也が「遅くなってすみません・・」と謝って電話入れてくる。
「由也君、ホアンに直ぐタクシーで帰るように言って頂戴。」と伝えると、
「ホアンお金が無いので歩いて帰ると言っています」と由也。
とにかく、タクシーですぐ帰らせて!私達はホアンという留学生を預っている責任があるの。
途中何かあったら、私達は申し開き出来ないの。お金は着いた時払いますから、とにかく
タクシーで帰るように言って頂戴!」と伝える。

しばらくすると、由也君がもう一度電話してきた。「ホアンはもう歩いて帰っています」と言う。
自分の責任を感じて、私の電話を切ってすぐに、歩き始めたらしい。
歩いて帰るという気持ちは良いけれど、こんな時間に・・・と思えば、いらない心配が頭をもたげてくる。
ふたたび携帯に入れてみると、ホアンは泣きそうな声で、「ホアンのせい!おかさん寝て下さい。ホアン
歩いて帰ります!ホアン悪いです!!」と繰り返し繰り返し言う。
こうなったらほってはおけない。「おかさん、車で直ぐ行くから、また携帯する!」と車にとび乗る。

こんな時に方向音痴というものは悲しい!あらぬ方向をぐるぐるまわり、ホアンと会った時は
既に、3分の2位の距離を歩いて帰っていた。
ホアンは息もきれぎれに、「おかさん!ごめんなさい」と蚊の泣くような声で謝る。

途中、行っては止まり、行っては止まり、ホアンの言い訳を聞きながら、家に着いたら3時であった。
ホアンは興奮状態でベッドにはすぐ上がらず、居間でテレビを見ています・・・と言うので私は
そのままにして安心して蒲団に入った。

ホアンに言わせれば、「おかさんが携帯を持たせたのは、おかさんの方から電話してくると思っていた。
コロンビアでもいつも、両親はホアンが遅かったりすると、携帯に入れてきて
僕の様子がわかるようにしているよ・・・」と言う。なるほどねぇ〜・・・・・言葉無し!

こうして無事ホアンは帰ったけれど、考えてみれば、仲の良いクラスメートが寄って
ワイワイ言ってれば、時間も忘れるだろう。
ましてや、コロンビアでの彼の生活は土日は必ずパーティ、パーティで、昼間、いや朝から、翌日の朝まで
延々とダンスをしたり、お酒飲んだりするらしい。
そんな事思えば、こんな1時、2時で大騒ぎする私達には、ホアンの方が戸惑いを覚える事だろう。
でもここは日本なの!分かって欲しいの!!