ホアンと稲垣夫婦のホームステイ日記

                                                   愛子 記

4月21(土曜日)[ホアン水風呂に入る!]
今日は土曜日で、朝ゆっくり寝れる!と思ったが、ホアンは学校がある。
お弁当がいらないので、すこし楽。

私はリズム体操の発表会が近いので、振り付け合せに出かける。
学校へ出かけるホアンに「おかさん、今日お稽古があるけど、お昼には
帰って来れると思うよ」と言うと「じゃー、僕と一緒くらいだね・・・」と言って
出かけて行った。
今日はあまり良い天候ではないので、主人も神の倉へ行こうか迷っている。
私の稽古は昼過ぎに終わった。買い物をして急いで帰る。
帰って見ると主人の姿は無い。
雨さえ降らなければ、飛びたい人なんだから・・・・携帯してみると案の定神の倉だ。
パラ中毒もここまでくれば立派なものだ。こんな日に行って飛ぼうなんて・・・・。
「携帯に出た主人、一人しか来とらん!条件も悪いから今から帰る!」 ”ほれ、みなさい”

ベランダで洗濯を干していると、「ただいまー!」のホアンの声。
何だか、不思議な感覚だ。
私が家に居て、ホアンにお帰り!と言ってあげたのは初めてだと気付く。
何だかうれしくなって、ホアンにそれを言うと”にこっ”と笑った。

お腹空いた?と聞くと「ちょっと」と言う。
おとさんいまから一時間程で帰って来られるけど、待つ?それとも
先に食べる?と聞く。
先に食べると、おとさん、あとで一人だね・・・と気遣いをしてくれる。
「じゃー、待ちましょう」
お腹が空いてるだろうに・・・と思い、夕べ作ったいちごケーキと紅茶を
頂きながらら待つ事にする。
ほどなく主人帰って来た。飛べない日は顔色がさえない!

お昼を頂いて、ホアンはいつもの様に散歩だ。
昨日コロンビアのガールフレンドと両親に小包を出した。
私にその代金を返す為、銀行へ行って帰ります・・・・と言って
出かけて行った。

「帰ってから日本語のお勉強しましょうね」と伝えておいたが
夕方からはずっと自分の部屋で考え事をしていた様だ。

お昼が遅かったので、夕方は少しゆっくりして、近くにある
アクアのお風呂にホアンを連れて行く事にした。
前に一回連れて行ったら、大変気に入った様だった。
8時頃から出かけて、夕食もそこで頂く。
頂きながら主人とホアンは宗教の話を始める。
ホアンはものすごく宗教に興味を持っている。深く勉強したいと
願っているようだ。
こちらに来た時もインドのヒンズー教の本を一冊持って来ている。
ベッドのかたわらにいつも置いてある。
カソリックの事や、仏陀に関しての話、私が旨く英語で伝えられないので
もどかしそう・・・。
そんな中で、主人とホアンは宗教に関して、ある一点の共通した
考えがある事にお互い感銘を受け、なんだか二人が接近したように
見え微笑ましく感じられた。

お風呂に仲良く肩を並べて入って行った。
前回水風呂に片足だけ、つかって”軟弱者”と主人からいわれてしまったホアン
今日は水風呂に何回も入ったんだと自慢する。
今日は”オッス”の勢いで頑張ったのだろう・・・。
4月22(日曜日)[AFSオリエンテーリングに参加]
今日はAFSの留学生が来て初めてのオリエンテーリングがある。
午後からなので、この間ホアンと約束していて出来なかった豆つげの刈り込み
する事にした。
ホアンはほっとけばいつまででも寝る。
眠そうな彼を起こすのはしのびないけれど・・・。

私も若い頃はほんとに寝太郎(寝花子?かな)で、嫁いで来ても
起きられないのが最大の悩みだった。
きっと起きる気が無かったのだろう。お姑さんの刺さるような目つきも
私の眠気には勝てなかった。
主人の出張の折りにも、何度か寝過ごして、迷惑をかけた事もあった。
ホアンも本当に眠たいのだろう。

   県木のもみじもきれい   藤の花もきれい

   ・・・・・・   ・・・・・

10時過ぎ、「おとさん、待ってるよ、起きてちょうだい!」と声を掛け
お天気もいいので、お布団干す事にした。
ベランダから「お布団ちょうだい!!」と声を掛け、遂に彼も観念した。
朝食もそこそこに、主人はホアンを連れてすぐ近くに有るお墓に行く。
目と鼻の先にあるお墓だが、盆暮れしかお参りをしない横着者の私達である。
家事を済ませてから、私も手伝いに駆けつける。
ホアンは、大きな剪定バサミを持って豆つげの刈り込みをしている。
主人がどんな形でも良い、ホアンの好きなようにやれ!と言っておいたそうだ・・・。
ホアンは台形や四角の方が好きなようだ。ばさばさに延び放題のつげの木を四角に
ちょきちょきと刈っている。
お墓を見て主人がびっくりしている。
この間の地震で一番上の墓石が2センチばかりずれている。
ちょっと帰ってロープと棒を持って来ると言って家に引き返して行った。
墓石にロープを巻き、棒に固定してずらそうと3人で力の限り頑張った。
とてもとても動くものではない。諦めて墓石屋さんにお願いする事にした。
時計を見ればもう12時が近い。
剪定は途中で打ち切って出かける支度をする。

   いつ墓参りしたの?   つげが伸び放題だよ!

   僕の力で動くかな?   やっぱりダメみたい!

   ここがずれているよ!   僕の刈り込みはどうですか?

13:00から大手町の婦人会館でAFSのオリエンだ。
AFSから広島にやってきた3人の留学生とそのホストファミリー
それにLPの方々も一緒である。
マレーシアから来た女の子は鈴ケ峰高校に、ラトビアの女の子は女学院高校
通っている。
日本に来て一ヶ月なので、彼らの日本での生活の事。またホストファミリーは留学生との
生活の様子や、何か困った事、楽しい事などそれぞれが意見交換する場である。
AFS広島支部の堤さんが進行される。
マレーシアからの女の子のホストファミリーの方は、近年ご主人をなくされて
しばらく何も手につかなくなり、これではいけないと思い、それを吹っ切る為に
この留学生のホストファミリーをやってみようと思われたとの事である。
とてもしっかりした女の子で、これでいいんだろうかと思う程、いい関係で
毎日を過ごしていると言われていた。
またラトビアからの女の子を受け入れられた、Iさんの家庭は子供さん(小学校)2人
がおられて、ときどきテレビのチャンネル争いもしています・・・と報告されていた。
ラトビアの場合は日本食との違いが大いにあるので、食事の面では少し苦労されて
いるらしい。
我が家のホアン君に関しては、「納豆も食べます」「お風呂が大好きなので、パブリックの
お風呂に連れていったら大喜びしています」等と報告したら、皆さんびっくりしておられた。
ホストファミリーと留学生とに分かれて話をしたり、ホアンのLP(リエゾンパーソ)であるNさんも
いろいろホアンと話をして下さり4時前に終了した。

   ラトビアの女の子   シンガポールの女の子(めがね)

   私のLPでNさんです   ホアンはいい子で・・・・

   AFSの広島支部長Tさん   会合風景

今日は天気は良いが、風が一日強かった。
「夕方は風が落ちて神の倉は絶対いいぞ!」と主人。
もう一日も終りに近い時間だと言うのに、神の倉へ行くと言う。
家に着くやいなや、パラ道具をボンゴに積み込み、あっという間に
出かけて行った。
4月24(火曜日)[宮島へ遠足]
今日は彼は宮島へ遠足だ。
昨日日程の書類を持って帰っていたので、どのように行くかは
懇切丁寧に主人が教えていた。
朝10:00に宮島桟橋に集合。広島駅は8:55分の電車に乗ればいい。
あいにく今日は雨模様。
私も朝早く起きて弁当作りに張り切る。
5:10に起きて、支度にとりかかろうとすると、電話のベルだ。
夕べホアンに国の友達から電話がかかった。丁度彼は散歩に出かけていて
電話に出ることが出来なかった。
「30分程で帰りますから、また掛けて下さい」と言っておいたが
かからなかった。
彼についてホアンは、彼はヨルダン出身の友人でククタで生まれ小さい時から
一緒に育ったそうだ。
今アメリカフロリダの大学に行っているので、電話番号分からない。
きっとまた掛けてくれると思うと言っていた。
早朝の電話に夕べの彼だ・・・と思い電話に出る。
「ホアンはまだ寝てますか?」と聞かれたので、「このままで待ってて下さいね
代わりますから・・・」と伝え、2階のホアンの部屋に子機を持って上がる。
後から聞くと、彼と一時間ばかり話しをしたと言っていた。
夕べ寝たのは1時。そして朝5時過ぎの電話。ホアンも眠いだろう。
お弁当を作り、再び彼を起こす。広島駅8:55なら、7時半ころには出た方が良い。
ホアンの支度はなかなかだ。やきもきする。
結局主人が出る時刻と同じ位になったので、近くのバス停までホアンを乗せて行く。
せっかくの遠足なのに、この雨可愛そうにと雨がうらめしくなる。
幸いお昼頃はすこし明るくなって、雨もあがってほっとひと安心だ。

宮島はどうだったろうと、夕方家に帰ると、家は真っ暗。
どうやらホアンは寝ているようだ。
「ホアン!」と声を掛けると『ハイ』と言うが、夢の中の様だ。
疲れたのだろうとそのまま寝かせておく。
夕食の支度もこれでは出来そうにないな〜!
一人で支度にとりかかり、主人も帰ってくる。さあ夕食だ、ホアン起こさなくちゃ!
「ほあん!」と言うと「後5分で降ります・・・OK?]と聞く。あと5分の辛抱!
5分たっても降りては来ない。
またまた2階に上がり「ホアン、起きたくなかったら、いつまででも寝てなさい
おかさんもうホアンなんかあてにしないんだから!!・・・」とホアンに言葉をあびせかけ
私は下に降りた。いささか頭にくるのだ!
それがわかったか、わからなかったかしらないけれど、「ごめんなさい!疲れてしまって」と
髪を逆立たせたホアンが台所をのぞいた。
「あら!目が覚めたの?」と笑いかけると、にこっとホアン。
ご飯にしましょ!
ご飯を食べながら宮島の報告を聞く。
今日は一日歩いた・・・と言っていた。
何を見たの?と聞くと”とりい” ”ばんび”を見たと言う。
これ!と言って2階から、と広島駅で撮ったというプリクラを見せてくれる。
この傘500円だった。日本のティピカルな物だ!と言っているので
主人が「これは多分メイドインチャイナだよ」と言うとがっくりしていた。
あまり口数は多くないので、疲れたのだろう。
私も夕べ遅かったので今日は早めに休ませてもらった。

   これ宮島で買ってきました   広島駅でプリクラ撮りました

   ・・・・   ウッフフフフ
4月25(水曜日)[回覧板を持って行く]
私が帰った時間はたいてい彼は一時間のエクササイズの時間。
10Kgの大きなダンベルで身体を鍛えている。
私は夜お稽古の日なので、急いで夕飯の支度にとりかかる。
彼がいつ降りて来てもいいように、材料を揃えておく。
30分位たって降りて来た。
「おかさん、お稽古だから支度して7時10分頃出かけるわね」と伝えると
今御手伝い?それとも散歩から帰ってからでもいい?と聞く。
中途半端な時間なので躊躇していると、「OK今手伝う!」と言ってくれる。
八宝菜をするので、材料をすべて切っておく。
「あとは帰ってから又手伝ってね」と言うと「OK」とにこっとしてくれる。
「もうひとつ頼んでいい?」と近所に回覧板を持って行ってもらおうと思った。
先日彼を連れて近所に紹介して歩いた。
100mばかり行ったところにHさんのお宅がある。
可愛いおんなの子が居たでしょう?覚えてる?と言うと・・・ホアン「イヤー!」
とにこっとする。ああ・・覚えてる様だ。じゃーこれ『おねがいします』と言って
渡してね・・・とホアンに”初めてのお使い”をしてもらう事にした。

お稽古が終わって帰ってみると、ホアンは主人と囲碁をしている。
今までの五目並べではなくて、ほんとの囲碁の様だ。
私は五目並べしか知らないので、よくわからない。
攻め方について、結構頭を使うらしいので、賢いホアンには面白いだろうと思う。
まだホアンには理解するには、むつかしそう。
早々に囲碁を終えて、台所に来てくれる。

近所の奥様が、大朝の田舎で採れたと言って大きな肉厚の椎茸を下さった。
軸を取り除き傘にぐるりマヨネーズを絞り入れて、オーブンで焼いた。
ホアンが不思議な顔をして、美味しい!!と言ってペロっと食べてしまった。
ほんとに美味しかった。やはり採り立てに勝るものは無いのね・・・・。

「今日は柔道のプラクティスをした」と言った。柔道着は貸してもらったようだ。

彼は格闘技が好きなので、今日は楽しい一日だったようだ。
明日も有るんだ!と言って目を輝かせていた。
4月26(木曜日)[私とホアンの重大決意!!]
大変恥ずかしい事です。
2〜3日前主人は会社で仕事中、椅子に座ろうとしてグラッとバランスを崩し
床にひっくり返ってしまった。
その時椅子の角で背中を打ってしまいまるでお爺さんみたいな歩き方をしている。
病院に行っきレントゲンを撮ってもらったが、肋骨がどうかなった様子は無いとの事で
様子を診ましょうと言ってもらっていた。
良くなるかと思っていた矢先、”くしゃみ一発で”痛めた部分をかばった為
変に力が入ってしまって、最悪の状態となった。
夕方私の運転でとりあえず帰宅した。

帰ってみるとホアンは電気もつけず、下でテレビを見ていた。
主人と一緒に帰ったので『きょとん??』としていたが、一昨日から腰を
痛めているのは知っているので、”おー!!”と気の毒そうな顔をしている。
主人を長椅子に座らせて、ホアンと3人でしばらく雑談。

ホアンが今日も柔道のプラクティスをしたよ・・・と報告。
柔道にかけては主人が先輩、腰の痛みはそっちのけで話に花が咲き出した。
どんな事をした?と聞くと、ホアンは例によって、床に寝っころがって受け身を
したり、足をあげたりとやって見せてくれる。
彼の足は”かもしか”の如く長〜いので、天井にも着きそうだ。

   天井まで届きそうな足   ガリバーとこびと?

来月高校で何かフェスティバルがあるらしい。
僕とアメリカンガイ(もう一人のアメリカからの留学生)とで歌を歌うことに
なったんだ。
黒板に書かれて訳も分からないうちにやる事になっていたよ・・。
日本の歌を歌うんだ!と言う。
「じゃーさくら さくら」を教えてあげる・・・と言うと、マイクを持って歌う真似を
して、手をがたがた、声をぶるぶる震わせて、あがってしまった様子を
表現する。「大丈夫!!」
ホアンのパフォーマンスが面白いので、笑い転げると
主人が”笑わすな 痛いよー”とホアンに言う。
ホアン・・・「おう!Sorry!!」

ホアンと夕食の支度をする。
牛肉のごぼう巻きをする。ごぼうを切り始めると、記念の親指を切った事を
思い出しては、また切る真似をする。
手が休んでいる時は、持った包丁をぐるぐると回して、まるで大道芸人みたいに
持ち替えて見せる。
ほんとに彼は立派なエンタティナーである。
ごぼうを湯がき、お肉に巻いていく。
大根をさいころに切り、それに小さく切れ目を入れ、大根の酢の物も作る。
高野豆腐をもどして、牛乳で甘く煮付ける。
ホアンは水にもどしたこの高野豆腐を見て、”豆腐?”と聞くのでびっくりした。
へー!これ豆腐ってよくわかったわね。
食べてご覧!と何の味付けもしていない高野豆腐を食べさせて見る。
もどした物を牛乳で甘辛く煮付けする。
ホアンに味付けをしてもらう。”美味しい”とホアン。
今夜の献立・・・高野豆腐の牛乳煮・牛蒡の牛肉巻き・かぼちゃ煮物
かぼちゃは残していたが、後はきれ〜いに全部食べていた。

食事が済んで、
ホアンにひとつの提案をした。
「ホアン、明日からホアンは朝一人で起きなさい」
「おかさん、目覚まし時計あなたに3ケ貸してあげるから・・・」と切り出した。
「朝一人で起きれるようになったらうれしいでしょう!」
目覚ましを5分置きにセットして、それも手のたわない所に置くのよ。
「おかさん、起こさなくても起きれるわね?」と聞くと「イヤー!」と言う。
おかさん、絶対 Never!!だからね!と念を押す。
「もしあなたが寝過ごしても、遅くなってもいいから学校行くのよ」と
言っておく。
”じゃー指きりげんまん!!”と指切りをして約束をする。
”ホアンおとさんが証人”よ!と自覚を促す。
家中の目覚まし時計をかき集め3ケ揃った。
どれももらい物だったり、古そうで役にたつか少し心配。一応時計を合わせて、
タイマーを5分置きにセットするホアン。

コロンビアでもきっとご両親、特にお母様はホアン起しに
苦労されているに違いない。ホアンも認めているようだ。
私もそうであったが、次男も私に似て、朝は弱かった。
高校に行きだして、私は彼をほっておいた。どんなに遅れようと、どうしようと・・・
そして、卒業してアメリカでホームステイで生活した。
朝ちゃんと起きていたかどうかはわからないが、日本に一時帰国して
アルバイトをしていた頃は、ちゃんと時間通り起きて勤めていたようだ。
やっぱ起きる気があれば、どんな事をしてでも起きれるのだと思う。

私は嫁ぐ前は両親が働いていたので、誰も起こしてくれない。
でもほんとに良く寝る子だった。
ある時、会社の慰安旅行があり、その日私は寝過ごしてしまって
結局おいて行かれてしまったという、悲しい、恥ずかしい思い出がある。
今はお姑さんも誰も居ないのでちゃんと起きれるけれど・・・・。
ホアンがこの一年で何とか一人で起きれる様にしてやりたい。

「もし一人で起きれる様になったら、コロンビアのお母さんきっとびっくりね!」
と言うと「イエス!!」と希望を込めてホアンもうなずいた。
ホアンは私の気持ちもよくわかっている。
「おかさん、朝ホアン・・ホアン・・・ああ!!6時半・・・7:00・・・って
おろおろするかも・・・・」と身振り手振りで私がはらはらした様子を表現する。
これは私にとっても試練である。

さあ、もう12時よ!早く寝なさい
あああ 神様・・・明日の朝起きれるのだろうか・・・・。
ホアンも胸のところで十字架を切りながら「おやすみなさーい」と上がって行った。
4月27(金曜日)[おとさん 入院!]
夕べ遅くにホアンの制服のズボンが長いので、すそ上げをしておく。
朝ホアンにピザを焼く為、生地を練っておいたので、少し遅く蒲団に入った。
腰の痛い主人は大丈夫か心配。

下でお弁当を作ったり、朝食の支度をしながらも、ホアンはちゃんと起きれるかどうか
心配。彼の朝食のピザも焼けた。お弁当も出来た。
6時20分になるのに、音がしない。
目覚ましの最初の1個くらいは鳴ったはずなのに・・・
上に上がり、ホアンの隣の私の部屋でお化粧しながら、ホアンの起きる音に
聞き耳を立てる。
全然音がしない。時計が鳴る様子も無い。
おかしいな〜ぁ。そーとホアンの部屋に入ってみる。
1個は枕もとに、別の1個は勉強机の上に、そして最後の1個は
ドアー開けてすぐのところの本棚の上に置いてあった。
何だか、時間が全然合ってない。
やっぱりホアンはどこか抜けている!
私は勉強机の上の時計を手にとり、ベルを合わせて鳴らす。
この時計は長男が中国から買って来た物なので、どうもおかしい。
ぴぴ!ぴ!  ぴ!・・・とあえぎあえぎ、きれぎれの音だ。
つついていると、ようやく時計もしゃんとして、ピピピピ・・・・・と鳴る。
ベッドの上のホアンは目をあけて私をみる。
そしてにこっと笑ってさっと起き上がり、支度にとりかかった。
”ああ・・・良かった” 
こんな訳でホアンは今朝は無事起きてくれて一安心
   
ところが、こちらが問題発生!!
朝起きて来た主人、そろりそろりと伝い歩きをして2階から降りて来た。
腰が動かない・・・と言って何とも言えない顔。
あ〜ぁ、何と言う事でしょう。今日は私のリズム体操本番だと言うのに・・・。
厚生年金会館で有るんです!皆さん迷惑かけるようになるぅ〜!!
でも主人をほっとくわけにはいかないし。救急車呼ぶ?と聞く。
「朝病院へ連れて行ってくれ」と主人。
とりあえずリズム体操の方、先生に連絡しておかなきゃー!
「先生!主人が倒れまして、救急車でトホホ・・・・」と緊急連絡を入れ、何とか許して頂く。
朝すぐに会社の近くの外科に連れて行き、そのままベッドが空いているので
入らせてもらう。連休だし、蒲団での寝起きが苦痛なので、自分で希望して病院に
入れた貰ったそうだ。
こちらはホアンでいっかあるので、大人しく病院に居てくれたほうが(失礼!)
手がかからなくていい。
普段からパラグライダーでは、仕事の代わりがいないので、それだけは気にかけて
慎重に!慎重に!飛んでいるのに、椅子から転げ落ちて入院だなんて!!
さまにならない!!
お昼に抜けて、簡単な入院道具を取り揃えて届ける。
これでしばらく、安心だ。

夕方帰ってホアンに「おとさん 病院入った」と伝えると、「おお!!」と
顔をゆがめていた。
夕食を食べて散歩から帰ったホアンに「今日はおかさんとホアンだけだから
お風呂ゆ〜くり入いんなさい」と言う。
「ありがとう」とホアン。
ホアン専用の大きなバスタオルを持ってお風呂に行ったホアンは
延々一時間以上入っていた。
いささか私もヤキモキした。出て来たホアンに『寝てたでしょう?』と言うと
にや〜!と笑っていた。
私もお風呂を済ませ、ホアンと食後のひと時は、トランプをしたり、いろはカルタを
したり、ゲームをして寝たのは2時でした。
ホアン明日はゆっくり休んでいいよ!

   ひらかなは読めるけど・・・・   犬も歩けば棒にあたる・・・どんな意味?
4月29(日曜日)[田舎へホアンを紹介]
ホアンが日本に来て早一ヶ月余り。
彼が来る前に、私の母や兄弟皆にホアンの事を紹介しておいた。
みんな楽しみに待ってくれているので、この連休を利用して
田舎へ行く事にした。主人は病院で大人しくしてくれている。
お昼に焼肉パーティを準備して待っているから・・・と言ってくれたので
「遅くとも1時に着くように出かけようね」と夕べホアンに伝えておいた。
・・・・がやっぱり起きてくれない。
もう11時半。起きて!皆待ってくれているから・・・と伝えて起こす。
目が覚めて朝の散歩に出かけて行った。
私も支度が出来たので、途中で彼を拾えばいいや、と思って彼の通りそうな
道を探しながら走る。
走っている間、彼と出会わなかったので、途中のお店でコカコーラを買い求め、
とり合えず家に帰って見ることにした。
もう家のカギは閉めて来たので、きっと彼待っているだろうなー・・・。
案の定家の前に立って不安な顔をして待っていた。
”さあ、行きましょう”
私の田舎は、ここから1時間の賀茂郡豊栄町という所。
主人のいつも飛ぶパラグライダーのエリアの前を通って30分程の
全くの”ど田舎”である。バスも日に一台しか通らない。
行く前にホアンにはよくよく言っておいた。
隣の家もは〜るか遠くに有るような所よ。おかさんの家も『ピサの斜塔みたいに
斜めに傾いてるよ。敷居もギーギーと落ちそうなんだからね』と。
でもホアンは”僕は田舎大〜好きだ、楽しみだ”と言ってくれる。
ホアンとラテンミュージックを聞きながら走る事一時間。
なつかしの我が家が見えて来た。道路からみあげる少し高台に有る。
今日は朝から雨模様。
田舎の家では兄夫婦と弟夫婦そして、すこしボケが進みつつある、83歳の母親
焼肉の準備を整えて待っていてくれていた。
そうそう、ヨークシャーテリアの犬”クロちゃん”も家族の一員で、母の大事な
番犬である。

普段は母一人がどうにかこうにか暮らしている。デイサービスの人も覗いて下さる。
その間に広島に住む兄や、西条に住む弟達が母の様子を見に帰っている。
土日も殆ど兄夫婦が帰るようにしており、私達も主人がパラグライダーに
ほとんど土日行くので、そのままこの私の実家へと泊まりに行く。

今日は留学生ホアンが来るというので、土間にバーベキューの火をおこし
材料を揃えて準備してある。雨が降るのに山からつつじの花を切って来て
庭の隅にある、御餅をつく臼に飾ってくれてそうだ。
天井から和紙で作ったまるいらんたんが吊るされて、雰囲気が出ている。
家に連れて入ると「ボクノ ナマエハ ホアン デス。コロンビア カラ キマシタ」と
自己紹介するホアン。
里の我が家にとってはまったく初めての異色のお客様である。
みんなそれぞれに少し緊張気味で挨拶を交わしている。
さあさ!とみんな焼肉の囲炉裏のところに集まった。
お肉も焼けてきて、乾杯〜!!!ようこそーホアン!!
コロンビアから彼が持って来てくれた大きな本も持ってきた。
本をめくり、ホアンが説明してくれる。
皆、最初はコロンビアは何処にあるんだ??等とと言っていたが、
だいぶ様子が分かってきた。
コーヒーの産出では世界一、エメラルドも世界2位の輸出国だ。
庭にある黒板にホアンは覚えた漢字を書き並べている。
みんなへー!とびっくりしている。
和気藹々で写真をとったりおしゃべりをして、網の上のお肉も
少なくなってきた。
ホアンも一息ついて、ここでも散歩行ってきます・・・と出かけて行った。

   焼肉パーティー   私の兄と弟

   義姉と義妹   たたき(土間)がパーティ会場

   私の名前は・・・保安ぺどろ   竹刀の素振りは・・・・

外も薄暗くなり始め、一応片付けをする。
私とホアンは今晩は田舎泊だ。ゆっくり出来る。
弟達は大学に通う女の子が待っているので、夜遅く西条へ帰って行った。
遅くまで焼肉の囲炉裏を囲んでいたので、ホアンも私もそんなに
夕ご飯は食べたくない。
ホアンにお風呂に入りなさいと勧めてもらう。

田舎の人は三度三度の食事ははっきりしているので、母は夕ご飯が
気になって仕方ない様子。
今は丁度”竹の子”の季節。昼間に掘った竹の子を兄嫁さんが
美味しく炊いておられ、それを夕飯に頂く。
ホアンはこの竹の子をがりがりと美味しそうに食べている。
「美味しい?」と聞くと「ハイ」。大鍋からお代わりが出される。
ここでもホアンはエンターテナーぶりを発揮して、面白おかしく
兄達を笑わせている。
ホアンが朝起きない!という話から、「僕は夏には、USAワシントンの
おじさんの所へ行くけれども、おじさんがいない時はちゃんと自分で
起きるんだ。
一ヶ月半の英語のスクールへ通うのに、遅れた事はたった1回だよ」と
言っていた。そう!起きる気があれば、起きれるの!と私。
自分が起きるのに使う目覚まし時計があるそうだ。
おじさんのプレゼントで、日本のおすもうさんの形をした”目覚し時計”だそうだ。
そして、”ずんずく どんどん!ずんずく どんどん!と太鼓が鳴って
『じゃらんです!ハラス メラス 起きろ!起きろ!起きろ!』と叫ぶのだそうだ。
それを聞いて私、最初の言葉は”時間です!!”って言ってるんじゃーないの?
と言ったら、はた!と気が着いたホアン。そうだ!そうだ!時間ですといってるんだ・・・。と
いたく喜んでいた。
気が着くとすでに12時になっている。兄は「明日は勤務だから、先に寝るよ」と
納戸に入って行った。
我が家は古い家(築100年以上の)藁葺き屋根の家。
古いけれど、部屋だけは運動会が出来ほどだだっ広い。
週末田舎へ帰り、縁側にすわって、ボーとしながら目の前の山々を眺めるとほっとする。
ホアンもこの田舎の景色は、大変気に入った様子。
何度も何度も『散歩』に出かけて行った。
外は雨模様で真っ暗だ。私もここで育ったのに、夜一人で歩いた事はなかった。
今日はホアンがいるので、怖くないし、行ってみようかしら?と思い立ち、
一緒に家の周りを散歩した。
ホアンはこの川のせせらぎと蛙のゲロゲロ!グアッグアッ!という声が
たまらなく好きだ!と言う。
私が「こんな夜中に歩くのは初めてだわ」と言ったら、”Why?”とびっくり仰天の様子。
多分ホアンの国コロンビアは、いまでも「僕の国は世界で一番デインジャラスな国だ」
と言うくらい、危険なのだ。だからこんな平和な感覚というのは味わえないのだろうと
思った。
何も無いこの田舎をこんなに気に入ってくれて良かった!。
さあ今夜はゆっくり休もう!「おやすみ ホアン!」

   ばあちゃんも、始めは緊張気味   緊張も解けて・・・・ピース・ピース!

   作務衣と正座のご披露   僕の国コロンビアでは・・・・

   竹の子・・・歯ごたえあって美味しいよ!   ハ〜イ!笑って・笑って

   古〜い私の生家   ゲロゲロ・・・蛙の鳴き声いいね〜
4月30(月曜日)[おとさん 退院!]
朝ホアンはここでもゆっくりとお昼まで寝ている。
兄は出勤。残るは母と兄嫁さん(文子姉さん)と私達だ。

今日は主人が退院すると言うので、迎えに行かなければならない。
お昼を食べてから、おいとまする事にした。

良く寝ているホアンだが、お昼の支度も出来たので起こす事にする。
散歩に出かけたホアンを追いかけて、竹やぶの竹の子を掘ってもらう。
ついでに山椒の柔らかい葉を摘み取るのも、手伝ってもらう。
”良い香りでしょう?”と言うと”イヤー”と言いながら、摘み取ってくれる。
お昼を食べてホアンと私は、母に「また来るね」と言い田舎を後にした。
一度に帰ってしまうと母も淋しがるので、兄嫁さんは少し後に出る事に
なった。
ホアンもそれなりに気を使ったのだろう、帰りの車の中では
少し静かだった。私はラテンの音楽を聞きながら車を走らせた。

   明日から仕事・・・退院するぞ〜   イテッ〜