ホアンと稲垣夫婦のホームステイ日記

                                                   愛子 記

3月6日(火曜日)
毎週パラグライダーのHPを書いてはインターネットにあげて楽しんでいる夫が
私に無理矢理このHPを書けと言う。
これが私達にとっても初めてで最後の初体験になるかもしれないので
頑張って書いてみる事にした。Juanと私の日記帳である。

昨年末、ふと新聞の"ホームステイ先募集”という小さな記事が目に止まり
資料を取り寄せたりしていたところ、にわかに話は現実味を帯びてきた。
私達にとっては初めての経験である留学生をホームステイをさせる事となった。
これは全くのボランティアである。
留学生を招き入れる機関はAFSと言って、もともとからボランティア活動により
支えられており、その本部はニューヨークにある。
AFSにより招かれた生徒はその地域の高等学校に通い、日常生活を通して
日本の文化・習慣等を学んでいく。
今回私達にお話を頂いた堤さんは、AFS広島支部の支部長さんで
日頃運送会社で忙しくされているのだが、その傍ら奥さまとホームステイの
段取りやアフターケアーなどで東奔西走されている。
年末に我が家に見えられいろいろお話をした結果、
安芸府中高校へ通う男子学生をお世話する事となった。
安芸府中高校は”国際科”という科を設け、外国から来る生徒と日本の
生徒との交流に力をいれたり、世界に通用する子供達の育成に力を入れている。
新年明けて次第に具体的な内容が知らされてきた。
まずどんな子が何処からくるのか・・・?
        
それは・・・南米コロンビアから16歳の男の子が来るらしい。
名前はJuan。 英語読みではジュアンであるがコロンビアの母国語はスペイン語。
スペイン語では”ホーン”らしいが・・・・ジュアンと呼べばいいのかなぁー??
1月半ば堤様から書類が届けられた。
家族の写真や本人のプロフィール。『どうして日本に来たいと思ったか』とか
『日本に行ったら何をしたいか』等と微にわたり細にわたりの調査書であった。
詳しい事がわかったので、まずこちらもご挨拶を・・・と思って早速E−mailを出してみた。
一週間たっても返信が無い。
なにかの手違いで旨く届かなかったのかもしれないと思いながら、こんどは
確実な手紙にする事にした。
日本地図をデザインした絵はがきを買ってきて、簡単なご挨拶の文章を書いて出す。
一週間たてども一ヶ月たてども音沙汰無し。
堤さんの方へ住所の間違いかメールアドレスのミス等が無いか
お尋ねしてみようと思っていたまさにそのあくる日の事であった・・・・
いつものように、朝6時過ぎ眠い目をこすりながら起床。
まだ頭がぼんやりしているところへ、けたたましく電話のベル。
こんなに早く間違い電話?と思いながら受話器を取る。電話の向こうで女性の声。
ハロー!!This is from Colombia・・・(と言ったように思うのだが・・・コロンビアだけは
聞き取れた)え!コロンビアだって?!ああコロンビアからだ!ようやくシャキっと目がさめる。
手紙でもなく、メールでもなく単刀直入、国際電話だ!
受け入れる事になって、少し勉強したところによるとコロンビアの母国語はスペイン語。
電話口のお母さんも私に毛が生えた位の英語??なので、ゆっくり話してもらえば理解
出来る。・・・が、何せ地球の裏側の国、電話も携帯電話みたいにこちらが話す言葉が
何秒か遅れて向こうが聞き取るので、どうもこちらの言葉とあちらの言葉ががっちんして
なかなかスムースにキャッチボール出来ない。
しかし何分か話している内少し要領得てきた。



思い返すに、私の次男がアメリカにホームステイする時も『どんな家庭だろう?』
『どんなご両親だろう?』『ちゃんと一緒に生活が出来るのだろうか?』等とあれやこれや
胃が痛くなるくらい心配したものだった。
長男は中国の天津市南海大学で1年半お世話になった。
次男は最初カリフォルニアの一家庭に1年足らずだったがホームステイした。そして一時帰国。
資金稼ぎをし、2年後再度ワシントン州タコマという街でホームステイした。
現在はカリフォルニア州サクラメントでアパート住まいでカレッジに通っている。
今回、私達が異国の子供をホームステイさせる事について、彼はなぜか強引に反対した。
タコマでのホームステイでは、半年もしない内に他の所に移ったところをみると
たぶんあまりその家庭での生活は満足のいくものではなかったのかもしれない。
この度私達がホームステイをさせる事に決まっての事後報告になってしまったので
息子は電話口で憤慨していた。
私は、「貴方達二人とも何らかの形で違う国の方々にお世話になったでしょう?
だから少しでも恩返しの積もりでお引き受けしたのよ」と次男に伝え、
「逆に私達がどうしていいか困った時、きっと貴男が的確なアドバイスをしてくれると
思って・・・」と思いを伝えると「うん、わかったよー」と理解を示し、次のような事を私に言った。
「ホームステイを引き受けるにあたっては、こちらがどういう姿勢で対応するのか
きちんと気持ちを決めておかなきゃだめだよ」
と。
「中途半端に『ある時はホームステイの同居人』『ある時は息子』なんて言うのは
絶対ダメだよ。」とアドヴァイスしてくれた。
私は「勿論自分の息子同様に接する積りよ!」と伝えた。
このような些細な私の経験から、まだ見ぬ国”日本”に息子を送り出す母親の気持ちは
いかばかりどろうと察せられる。
「息子に代わります」と言われ、当の本人ジュアンが電話口に出る。
生まれて初めて話す日本の人(だろうと思う)なので、少し大人しくでも声は素直そうである。
プロフィールには、自分はクラスの中で成績も優秀で、他の生徒達も自分に色々な
分らない事を聞いてくるし、家族ともとても良い関係であると書いていた。
そういえば、コロンビア大使館から資料を取り寄せた中に、コロンビアというお国柄について、
家族の和、繋がりをとても大切にする国だとも書いてあった。
またスポーツが得意で特に格闘技が好きとの事。わお〜!!
なんだかわくわく、どきどきする。
「とにかく私達、貴方が来る事とっても心待ちにしてますからね」と言って電話を切る。
”あぁーこうしちゃいられない”。迎える準備早くしなくちゃー。
いよいよ今月23日我が家へやってくるー!!

            
3月23日(金曜日)
いよいよ今日はJuanが我が家に来る日だ!
到着時間は夕方なのだが、朝からなんだか落ち着かない。
仕事も段取り良くしておかないとと思うのだが手につかない。
午前中、広島国際センターで貸し自転車を貸与してもらえるので
取りに行って来た。すべて準備万端!だろうか?
まあ何とかなるわー。
2時過ぎAFSのNさんが事務所に来られる。
AFS生一人ひとりにはLP(リエゾン・パーソン)といって、来日直後の日本語及び
生活習慣などに関するオリエンテーション、滞在中のカウンセリング等を
するボランティアの相談員が付くのだが、NさんはAFSのLP主要メンバーの
お一人である。
彼の到着は4時50分沼田PAという事なので、少し早く私達の事務所に来られ、
私達がホストファミリーをするにあたっての心構えや事例等を
これまでの豊富な経験に基づき、色々お話下さる。
「とにかく余り特別な事をしようとか、気を使いすぎると、長続きしないので
普通通りの生活をしながら、悪い事は悪いとはっきり言ってやって下さい。
中途半端にしていると、かえって子供の方は戸惑い、最初は良かったのに
どうして?と疑心暗鬼に陥り、留学生とホストファミリーの間に次第次第に
溝が出来てしまいますので・・・」とアドヴァイス頂いた。
まあ私達は二人とも働いているので、我が子がそうであったように
全くかまってやれないので、ほったらかし状態になるだろうと思う。
今となってはもう遅いが、我が子には「もう少し勉強しなさい」とか学校での事
もっと声を掛けてやれば良かったなーと後悔している・・・・。
そんな私を主人は「おまえはノーテンキなんだ!」と言う。
刻々と到着時間も迫って来た。Nさんと一緒に沼田PAに向う。
PAに着くと、外国人の家族と他に数名固まって何か話しておられる。
Nさんが走り寄って挨拶を交わされている。
どうやらこの一団が私と同じホストファミリーの方らしい。

   国旗を持ってお出迎え!   AFSも横断幕で歓迎!

今回広島には3人のAFS生がやって来るらしい。女の子2人と男の子1人である。
女の子はラトビアとマレーシアからだそうだ。
広島支部長の堤さんの顔も見える。予定時間過ぎているので、少し心配そうである。
しばらくすると、堤さんの携帯に連絡が入る。
「高速が混んでいて少し到着が遅れるようです。」との事。
お互い紹介し合い、雑談をしながら待つ事一時間、赤い大型バスがすーとPAに入って来た。
「あっ!あれかな?」と心の中で思った。堤さんが「あっ!来ました」と指差される。
やっぱりそうだ!みんないっせいにバスの方を見やる。
駐車した車から、大きなボストンバッグを引きながら、手には大きなバッグ、背中には
リュックサックを背負い若者の一団が降りて来る。
みんな『どの人が私を?僕を?引き受けてくれるんだろう?』と不安そうな顔つきだ。
既にお互いのプロフィールは交換しているが、やはり写真と実物では違うので
お互い目で探り合っている。
私は男の子なので一目瞭然「あっ!Juanだ」と一目で分かる。
降りた瞬間は伏せ目がちだった彼は、私と気付いたのか、ボストンバッグをひこずりながら
にこにことしてこちらに向かってくる。

   僕のホストファミィーは?私はあの人かしら?   僕コロンビアから来ましたホアン・ペドロです!

   仲良くなったコスタリカとベネズエラの友達とここでお別れ!   LPのNさんとご挨拶!

   私のあたらしい息子です!!   マレーシアからの留学生とホストファミりー

   こちらはラトビアから!   みんながんばれよ!


目の前に立ったJuanを”よく来たわねー!”と抱きしめる。笑顔がとっても可愛い!!
Nさんも流暢な英語で話し掛けられている。
皆さんそれぞれ面会を果たし、自己紹介をし、ひと安心したところで
堤さん「無事留学生も着きましたので、今日は疲れているでしょうから
これで解散しますので、ゆっくり休ませてやって下さい」と言われ、留学生はそれぞれの
家庭へと向った。

我が家に来て最初の晩餐である。
腕によりを掛けてと意気込んだものの、私の料理のレパートリーは少ない。
「支度が出来るまで、片付けてゆっくりしてなさい」と2階の部屋へ案内する。
7時半過ぎ主人が帰って来た。Juan!と呼ぶ。
「おとうさんよ」と主人に引き合わす。「よく来たな!」と握手している。
夕食の支度も出来た!今夜のメニューは鶏の丸焼きとオーストラリアンシチュー。
時間を掛けた割りには何だかパッとしない!
さあ!夕ご飯だ!「Juan!!]と二階に居る彼を呼ぶ。
彼は手に何やら一杯抱えて降りて来た。どうやら私達への国からのお土産らしい。
『これはおかあさんに!』とエメラルドのイヤリング。コロンビアはエメラルドの世界一の生産国だ。
そしてコーヒーも!。コーヒーも世界ブラジルに続き第2位の生産国だ。
『お父さんにこれ』と言って大きなA3サイズの本。コロンビアの風景や鳥、花、
風景等カラフルな写真が一杯だ。とっても重い。ビデオも持って来て見せてくれる!
「これはコロンビアの代表的なオモチャだよ」といって、車(ジープ)に山のように
家財道具を積んで走っている置物である。
こんなに沢山重いのに、はるばるコロンビアから持って来たなんて・・・と
おもわず彼がいとしくなってしまった。

   重いのにこんな大きな本を!   コロンビアの代表的なお土産だそうだ!

   わあー!!耳に穴あけなくっちゃ!   コロンビアはコーヒーは世界第二位!

   スペイン語ではパラペンテだって!   これを見てとっても喜んでくれた。よかった・・・!

彼の名前はJuan Pedro Mendoza 友達はホアン・ぺと呼ぶそうだ。
それでは!と私もホワン・ぺと呼ぶ事にした。が・・・
どうも”ペ”は余計な感じなので、やっぱりホアンと呼ぼう!!。
ホワンと片言の日本語、片言の英語、そしてスペイン語を交えながら楽しい夕食が始まる。
「日本に来てご両親には電話したの?」と聞くと、一回もしていないと言う。
「それはきっと心配してらっしゃるから、今日は家のを使っていいから掛けなさい」と伝える。
彼の国と日本では時差が14時間ある。
日本で夜の10時が向こうでは、前日の朝8時頃である。
「10時になったら、皆な起きているから、掛けます」と言っている。
話がはずんであっという間に時間が過ぎていく。
電話のベルがなった。女性の声で「コロンビア・・・」と言っている。
あ!お母さんだ。私は「I met Juan today」と言いJuanに交代。
スペイン語でべらべらべらべら・・・とまくしたてている。
こちらはさっぱりわからない。ロスアンゼルス、とかマイアミ、フクオカ・・・と言っているので
向こうを発ってからのいろんな事を報告しているのだろう。
お父さんにも代わって話しは続いている。これでご両親もほっと安心された事だろう。
私も次男がアメリカに初めてホームステイで行った時、とにかく
着いたら『着いたコールをしてね!』と言っておいた。
親にすればそれが何より一番心配な事なのだから・・・。
今の所は私のたどたどしい英語を介して、意思疎通は出来ているが
私達の姿勢としては、とにかく何とか早く日本語を少しでも理解出来る様に
させてやりたいので、身振り手振りを交えて、出来るだけ日本語で
通そうと思っている。

お国柄か彼はとっても明るくて、礼儀正しい子である。
なんたって笑顔がとっても可愛い。
彼なら一年なんとか楽しくやっていけそうだ。
3月24日(土曜日)
私達二人とも仕事をもっているので、ウイークデーはかまってやれない。
学校が始まる4月6日までに、色々な事を教えておいてやらなければいけない。
既に今日のスケジュールは決めている。
無常にも朝9時頃彼を起しにかかる。「ホワン 起きれる?」と言うとニコッとしてうなずく。
「朝ご飯食べましょ!」と言っておいて下に降りると、彼は眠い目をこすりながら
それでも嫌な顔ひとつせず、起きて来た。
覚えたての日本語で「おはよごぜます」と言っている。
彼が来る前に、私は大きな紙に挨拶の言葉を書き並べて、彼のベッドの横に貼っておいた。
ベッドに横になると嫌でも目に入る。
    朝起きたら・・・・OHAYOUGOZAIMASU  Good Morning (in English)
    夜寝る時は・・・OYASUMI NASAI      Good Night
    ご飯を食べる時は・・ITADAKIMASU    
    出かける時は・・・・ ITTE KIMASU
    帰った時は・・・・・  TADAIMA KAERIMASHITA    I'm home!
    外で人にあったら・・・KONNICHIWA           Hello
等と日本語とその意味を英語で書き加え、毎日必要な挨拶言葉を書いておいた。
早速覚えたての日本語を連発する。
私達も「おはようございます」と返事を返す。
今朝の朝食は味噌汁にご飯そして納豆を小さな器に付けて見た。
納豆はちょっと私のあそびごころから、付けてみただけ・・・。
味噌汁の具もひとつひとつ名前を言って教える。
お箸もとっても上手に使っている。福岡でのAFSの研修で使い方を習って来ている。
あれ!納豆に箸をつけようとしている。
主人が器を持ち箸でぐるぐるっとかき回し、高々と糸を引く納豆を見せている。
わおー!と目を上下させて、自分も同じ様にする。
これは代表的な日本の食べ物よ。と説明する。
食べ方を教えると早速ご飯の上にかけて食べ始める。
”美味しい”とその小さな器の納豆を全部たいらげてしまった。
私達は顔を見合わせゲラゲラ笑った。
「日本人でもこの臭いが嫌で、食べない人も多いのよ」と言うと
「なぜー?美味しいよ!」と言っている。ホアン君も変な外人である
さて今日は家から市内への出方やバスの乗り方を教える予定だ。
3人で出かけ、主人は車で、私はホアンにバスの載り方、切符の取りかたを教え
バスセンター迄行く。主人とセンターで待ち合わせた。
ホアンが先に主人を見つけ、「おとさん!」と駆け寄って行く。
パッセーラをうろうろし、広島市内が一望出来る屋上に上がり、本屋で買って来た市内地図で
方向、場所を指し示す。

   バスセンターで!   わおー!かわいいいー・・・

   コロンビアほど厚くないけど・・・   おいしそうに食べるホアン!ペロリだ。

昼食は焼肉をパッセーラで取る。とっても美味しいとこれも気に入った様だ。
「次は何処に行こうかー」と考え、彼が来る途中、コロンビアの空港のチェックで
カメラをポリスマンに差し出した処、後で取りに行ったが返して貰えなかった。
と言い、「カメラがどの位で売っているか見たい」と言うのでDeo Deoに行く事にした。
今日は土曜日で人出も多い。
1階からいろいろな電化製品を見ながら2階に上がった。
その時だ!!足元がぐらぐらぐらっと揺れた。ああぁ〜!!何が起こったか分からず
その場に立ち尽くす。ホアンと夫は少し離れた処に同じ様に立ちすくんでいる。
しばらくすると、がたがたっと激しく上下に揺れた。地震だ!!
主人達の所へ行こうにも足が前に出ない。その場にしゃがみ込む。
ううう・・・怖い!!周りの人たちも「ああぁ〜!!」とどよめいて立ち尽くしたり
どうしていいかわからない様子。エスカレーターも止まった。
しばらくの沈黙の後、揺れが少し納まったので、二人の所へ走り寄る。
「怖かったー!!」と顔を見合わせる。ホアンも顔が引きつっている。
彼の国コロンビアは平坦な国で地震の起こる要素が無いため、
地震等という言葉すら知らない様だ。
主人達も寄り添った壁がべりべりっとひびが入り、ホアンも目を白黒させている。
「とにかく外に出よう」一階に降りる。店員の人が誘導している。
外に出ると、救急車やパトカーのサイレンがけたたましく鳴っている。
電車も止まっている。みんな呆然と立ち尽くし、口々に怖かった怖かったと言っている。

   地震発生10分前!!   このカメラにしようかなー?

少し落ち着いたのが、まだ時間が有るので広島城に行ってみる事にする。
時間は4時半だ。行って見ると丁度閉城の時間だった。廻りをウロウロしてみようと
歩き出すと、係りの人が、今の地震で瓦が上から落ちましたから、近づかないで!
と言われた。くわばら!くわばら!帰ろう帰ろう・・・。
さて今度は何処へ連れて行こう?そうだ護国神社に行こうかー。
ホアンはこの建物も気に入ったらしい。お金を投げ入れ二人でお参りする。
2礼2拝1礼をしてみせる。おみくじも買った。
『願い事・・・一生懸命するが良し。必ず叶う』意味を教えてやるとニヤっと笑った。
近くの木におみくじを結び付ける。
お札を買い、『一年ホアンと仲良く過ごせますように』と願いを書いて板に掛ける。
ホアンも自分の名前を入れる。

   これは橋!食べるのは箸・・・。   ここはHIROSHIMA-JO・・・

   2礼・2拝・1礼なのよ・・・   GOkoku-Jinja Torii・・・

   ホアン 一年の願掛けよ!・・・うーん!べんきょ がんばりまーす!   ホアンもスペイン語でつらつらと・・・何て書いたのかな?

   僕 この建物気に入ったよ!   ホアンのお土産用に一枚購入!

主人は地震で事務所がどうなったか気になると言うので、私はJuanに帰りのバスの
乗り方を教えながら家に向う。
当然帰っていると思った主人がまだ帰っていない。ああー?家のカギが無い!
どうしよう、入れない!!
ホアンが入れるよ!と飛び上がる格好をする。ホアンはコロンビアで”忍術”とやらを
習っているらしい。とは言っても、あのベランダにはねー!
裏から脚立を持ち出してベランダに立てかけた。ホアンがするすると登って行く。
カギの掛けていない部屋から中に入り、いとも簡単に玄関を開けてくれる。
ホアンが頼もしく見える。
早速テレビを付けると、大変な地震だった事を伝えている。亡くなった人もいるらしい。
ホアンもいまだ興奮が覚めやらぬ状態だ!
主人も帰って来た。会社では応接室との隔てがひっくり返り、ガラスがめちゃめちゃだったと言っている。
夜夕食を食べながら、ひとしきり地震談義が続く。
主人とホアンはお風呂を済ませ、今日から寝る前の1−2時間は
主人に依る”ホアン日本語教室”が始まった。あいうえお・・かきくけこ・・・と日本語勉強だ!
ホアンがAFSから提供されたテキストブックを持って降りて来た。
それにもとずいて主人も一言ひとこと口移しで教えている。ホアンも一生懸命だ。
あっと言う間に12時だ。「はい今日はここまで!」
ホアン「ありがとうございます」と言う。そして「おやすみなさい」と言って上がって行った。
3月25日(日曜日)
今日の予定も既に決まっている。彼の通う安芸府中高校の場所を教えなければいけない。
長男は自宅からバスで途中まで行き、そこから自転車で学校まで通っていた。
バスの便利は少し悪いので、彼にも同じ方法で通わせるのが一番いいだろうと話し合った。
まず場所を教えるため、車で行ってみる。ごちゃごちゃしてないので、覚えやすいとは思うのだが
私みたいに方向音痴な人間は、いまだに反対方向へ曲がったりして、迷ったりしている。
1回往復し、2回目はホアンに方向を言わせて行ってみた。
彼はとっても頭の良い子だと、我が家に来てから何かにつけて思っていたが
ここでも、それを実証した。一発で覚えたのである。右!次を左!と正確に指差している。
途中主人が間違ってUターンした所まで覚えていて、「ここで、おとさん間違ったねー」と
(英語で)言って私達を笑わせる。

家では彼はコーラを良く飲んでいる。
「冷蔵庫に有るものは何でも好きな様に飲んでも食べてもいいのよ。」と言ってあるが
我が家では全くコーラは飲まないので、近くのデスカウントストアーでコーラを買いだめする。
雨の日の事を考えて、息子達のカッパを着せてみた。
うちの子は親に似てどちらもあまり大きくないので、ホアンが着ると
やっぱり”ちんちくりんだ!”彼用にレインコートも買った。
今日は雨なので、覚えた道を自転車で走らせてみたかったがやめた。
夕食は、料理のレパートリーも既に尽きて、いつもの老人食、納豆、味噌汁、お漬物
というメニューだ。それでも味噌汁の具の名前をひとつ・ひとつ覚えながら食べてくれる。
コロンビアではお米は食べるの?と聞くと「イエス、エヴリデイ」と答える。
へぇ〜!毎日ねー。「でも こんなに箸ではつかめないよ、ぱさぱさだから」と言う。
長粒米でチャーハンのようにして食べるんだろうねー。と主人と話す。
今夜も納豆を美味しそうに食べてくれた。
本当に美味しいと思ってくれているのだろうか?我慢しているんじゃーないかしら?
主人も同じ事を心配していて、「AFSからの指導で、出された物は全部食べるのが
マナーだと、教育されているのかもしれんから、一回聞いてみなさい」と言うので・・・・
「ホアン、もし食べられなければ残していいのよ。無理しないでね」と言うと
「No!」と言って、「食べられなければ、僕はそう言います」と言っている。
それを聞いてほっとした。
彼といろんな事を話しながらの夕食の時間は、とっても楽しい。
ずっと話をしていたい気持ちで一杯だけれど、日本語教室再開だ!
主人とホアンはお風呂を済ませ、食卓を片付けたテーブルの上にテキストが並ぶ。
この時間は私は絶対邪魔しないようにこころがけている。
私が居ると、つい彼も英語で意思を伝えようとするから・・・。
あっと言う間に12時!「はい!今日はここまで!」
ホアン「ありがとございました。」そして「おやすみなさい」と言って2階へ上がって行った。

   お箸を上手に使ってみせてくれる!   えーと!あ・い・う・え・お・かきききく・・・???

3月26日(月曜日)
今日はAFSのNさんと、安芸府中高校へ行く予定だ。
予定時間は午後なので、午前中、銀行口座開設区役所へ行く予定にしている。
朝、ホアンに「昨日教えておいたスーパーに10時に来るのよ」と約束をして、私は職場に出る。
10時になるので、指定場所に出かける。”あ、ホアンだ”丁度来たところだろう、自転車を置こうと
している。「ホアン!!」と車の中から手を振る。「彼も安心して、ニコニコしながら近づいてくる」
「さあ、行きましょ」と安芸区役所に向う。
ホアンの外国人登録証明書を発行して貰う為である。
パスポートと写真はちゃんと持って来た?と聞くと「イエス!」と差し出す。
20分程で手続き終わる。
あとは2週間後に出来る「外国人登録証明書」の交付を待つだけだ。
次は銀行口座開設の為、近くの銀行へ手続きに行く。
彼の場合は印鑑など無いので、サインでOKだ。私には彼のサインはさっぱりわからない。
暗証番号を記入する。持って来た日本円を通帳に預けている。
「お引出しのカードは後日、ホームステイ先に書留で送られますから」と女子行員さん。
ホアンが女子行員さんに向って「ありがとござます!」と言っている。
二人の女性行員さんは顔を見合わせてニッコリと笑い「お上手ですね!」と言ってくれた。
「これをどうぞ」とホアンの通帳と景品のタオルハンカチが差し出された。
ホアンは「これを貰った!!」と大喜びしている。
銀行手続きも無事終った。
安芸府中高校へ13:00と言う事なので、時間も丁度良い。
ホアンは方向音痴の私にここを右、次を左!と言ってくれる。
本当に私は主人も呆れる程、超!方向音痴なのだ。つい違う方向へ行こうとする私を
にやにや笑っている。(ホアンにも私の方向音痴度は言ってあるので・・・)
安芸府中高校へ車で向う。目の前をNさんらしき車が同じ方向へ向っている。
応接室で待っていると、国際科担当の先生が見える。
校長先生に引き合わせますのでと私達を校長室に案内して下さる。
ホアンと握手され、「実は私、後1週間ほどで、他の高校へ移動なんですよー」と
言われ「頑張って下さいよ」と激励された。
ホアンの直接のクラス担当の先生も交えて、今後の予定や学校生活について、3時間位
こまごまとアドバイスや指示を頂く。
制服や、靴等は、以前の国際科の生徒が残して行った物を使わせてもらう。
一年しか使っていないので、あまり傷んでなくきれいだ。
Nさんと校門のところで別れ、私達は事務所に向う。
地震でガラスが割れたのや、少し直したいところがあるのでホアンにも手伝ってもらう。
「夕飯はお礼にカツ丼でも食べに行こう。」と主人が言うので近くのカツ丼屋さんに向う。
久しぶりの肉なので、美味しそうに食べている。
別な鉢に小さく刻んだお漬物があった。小皿にとって、食べてご覧?というと
なんとパクパク食べる。
頼んだメニューが来る前に、お漬物でお腹が一杯になるのではないかと私は心配する。
美味しい!美味しい!と言って食べている。
カツ丼でお腹も一杯になったので、「さあ、帰ろう!」と自宅へと向う。

さて、今日で3日目の「主人による日本語教室」も、『あいうえお』から始まり今日は
『たちつてと』に入っている。
ホアンは日中は家で一人なので、教えてもらったひらがなをノートに書いて練習しているようだ。
ノートを見ると横一列に『ああああ・・・いいいいい・・・うううう・・』等とびっしりとひらがなが並んでいる。
結構上手に書いている。(主人の、みみずの這った様な字よりずっと上手に書けている)
復習してみると、80%はそのひらがなの読み方をマスターしている。

このひらがなの字の上手なところをみると、彼は器用なのにちがいない。
それを証明するような出来事があった
納豆を食卓に出した時の事。大豆のひと粒・ひと粒を、お箸で上手に掴むのである。
主人がびっくりしている。「ホアンは箸の使い方が巧いな〜!!」と誉めている。
しかも、納豆のようにずるずるするものを上手にお箸で掴めるなんて!!
主人が宙でお箸の先をかちかちっと2、3度合わせて見せると、ホアンも同じ様にやってみようする。
ところが旨く箸の先がピッタリと合わさらない。
正しい持ち方をすると、主人の様に箸の先がぴったりと合い、目をつむっていても
カチカチカチッと合わさって音がするのだ。でもホアンには出来ない。
良く見ると、人差し指と中指の位置が主人のと違っている。
『こうだよ!』と主人が正しい持ち方を教えると、すぐその通りやって見せる。
そしてもう一度納豆を掴もうとしている。
『それじゃー競争しよう!!』と主人が言ったので、私が”丹波黒豆”を10粒づつお皿に入れて
用意する。『よーい どん!』 私の掛け声に二人とも一生懸命、別のお皿に移し換えている。
主人が何秒か早かった!。ホアンも最後まで必死で頑張っている。
それにしても、これは驚異だ!!日本人だって、出来ない人は数多いのに!・・・。
3月28日(水曜日)
学校が始まるまで、まだ時差ボケが残っているかもしれない・・と思って今朝はゆっくり寝させる事にした。
私達はいつも通りの時間に朝食を済ませる。
私が出かける時は、彼に「行ってきますね・・・」と言って出かける。
彼は蒲団の中から、ちょこんと顔を起こし、「いてらっしゃい」と言ってくれる。
「朝ご飯と、お昼ご飯支度してあるから、食べるのよ」と言うと「ありがとござまーす」と言う。
仕事しながら、今何してるかな〜?と気にかかる。
水曜日は私も主人も習い事が有って、夜は10時前頃になる。
私は一旦家に帰り、夕食の支度をして、出かける。
ホアンに「帰りが10時前になるから、お腹空いたら、先に食べてていいのよ」
「お風呂も先にはいっててね」と伝える。
お稽古を終え、急いで帰ると先に帰った主人はホアンと格闘技のビデオを見ている。
実は今日、主人のお仕事仲間であり、お友達のTさんがホアンの事を聞かれ
「じゃー私の持っている空手や格闘技のビデオを持って来てあげましょう」と言われ
沢山のビデオや漫画をわざわざ会社まで持って来て下さった。
早速主人と二人で見ている。やっぱり”忍術?”や”テンコンドー”やっているだけあって
真剣そのものの顔である。ビデオに合わせて、身体を右へ左へ動かしている。
「夕ご飯よー」と言っても聞こえていないようだ。
主人がきりの良い所でビデオを止めた。やっと我に返った様子のホアン。
私を見てニコニコと笑う。
「先に食べなさい・・・」と伝えて出かけたが、食べず、お風呂も入らず私達を待っていてくれた。
いつも、納豆、味噌汁も彼には可愛そうなので、今日は『すき焼き』にした。
主人が食べ方を教えてやる。まず器に卵をひとつポンと落とし、かき混ぜる。
それからこうして食べるんだよー・・・・と具を入れて食べ始める。
ホアンにはこの『生卵をそのまま食べる』という事が生まれて初めての経験だったようだ!
わおー!!と言いながら、卵を一個取って、同じ様にかき混ぜている。
「コロンビアでは絶対生で食べる事は無いんだよ。煮るとか焼くとか調理するよ」と言っている。
食べて美味しかったようだ。にこにこしている。
次に、またまた彼をびっくりさせた事が有ったようだ。
私に「How do you cook?」とお肉を指して聞く。「ハウ ドゥ ユー」たって、何が???
私には何を聞いているのかわからない。
しばらく考えていた主人が「あっ!わかった!!。コロンビアにはこんなにかざしたら先が見えるような
薄い肉はないんじゃーないんか〜??」
「この肉の薄さが不思議なんじゃろー」と言うので、ホアンに聞くと、「イエス!イエス」と言って
僕らはこんな肉を食べるよと言って、3〜4cmも有ろうかと思われるくらいの厚さを、指で示して見せる。
肉は良く食べるの?と聞くと「エブリーデー」だよと言っていた。
このすき焼きは、大変気に入ってもらったようだ。うれしかったのか?つい口笛が出た!
うちに来てすぐに気になった事だったのだが、彼は口笛を良く吹く。
2日目位の時に、「ホアン、日本では部屋の中では口笛はダメよ」と注意した。
「貴男が自転車で外を走る時や、散歩する時はOK。でも家の中や学校での授業時間は
口笛はやめなさい」と言っておいた。
注意されて、気に掛けてはいたのだろう。しばらく耳にしなかったが国でいつも口笛を吹く癖が
ついているのだろう。
吹いた瞬間、私がキッとにらんだので、彼は肩をすくめ、しまった!という様に口を結んだ。
私は彼が気が付いたという事に対し笑って返した。
そしてまたすき焼きを食べ続けて、ものの2〜3分して又口笛。
彼、しまった!!という顔。
私は「口笛を吹くのは良くない事だけど、でも私は今とってもうれしいわ!」と伝え、なぜなら
「貴方はきっとこのすき焼きが美味しかったので、つい口笛が出てしまったのね。
だから私はとってもうれしいの」と説明すると「その通りなんだ」とニコニコっとした。
彼は注意しても、謙虚で聞き分けがある。

それに今日は私にとって、大変嬉しく、またびっくりした事が有った
今日は天気予報が午後雨模様と言っていたので、朝出かける時
蒲団の中のホアンに、「もし雨が降ったら、少し陰に入れておいてね」と言って出かけた。
夕方仕事を終え帰ってみると、洗濯物が自分のも入れて3−4枚たたんで置いてある。
他の湿ったものはそのまま干して有る。
「ホアン!ありがとう!!」と顔一杯によろこびを表現して感謝の意を伝えると
「どいたしまして!」と答えてくれた。何といい子なんだろう!!
彼が洗濯物を入れる時、通った部屋の棚の上に黒いケースに入った物が置いてある。
彼があれは何?と聞く。実はこれは、主人の妹が学生時代に使っていた楽器である。
私も主人も音楽には、とんと縁が無い。
私はド方向音痴に加え、歌も音痴。主人も私に輪を掛けたように音楽はダメ。

「出してご覧」と言うと、ホアンがほこりをかぶったそのケースを降ろして、そーと開けている。
わー!汚い!私は下に降りて雑巾を持ってくる。
中にはギターが入っていた。
この楽器は私がこの家に嫁いで来た時から、ずっとこの棚に置いてある。
何の楽器かも知らなかった。
ホアンが二つのケースを下ろしてくれた。開けてみるとギターとマンドリンだ!
ギターは1本弦が切れている。ホアンは上手に直している。
そしてボロンボロンと弾き始めた。
マンドリンは全く知らない楽器らしかった。2〜3曲コロンビアの曲を弾いて、聞かせてくれる。
彼の旨さに私はうっとり聞きほれてしまった。
私は名案を思いつき、「ホアン!おとうさんが帰られたら、驚かせてあげようか?」
ホアンは私の言っている事を理解し、目で”うん、うん”と言っている。
「ご飯食べたら私が合図するから、持って降りて弾こうね」と私は食事の支度に取り掛かる。
「いただきます」と皆で手を合わせ、楽しい会話をしながらの夕食だ。
「ホアン?」と目配せすると、彼はさっと2階に行き、例のギターを取りに行く。
主人は「ごちそうさま」と席を立とうとするので、「ちょっと待って!」
ホワンがギターを抱えておりて来た。聞き覚えのある曲を奏でてくれる。
主人も目を白黒させてびっくりしている。
しばらく彼のギター演奏にうっとりして、あっと言う間に11時になっていた。
さあ今夜も”日本語教室”開講だ。
本当にホアンが来てから、時間があっという間に過ぎて行く。
3月29日(木曜日)
先日銀行で口座開設をしたホアン、そろそろ書き留めでカードが届くころだ。
ホアンには「日中誰か尋ねて来られても、出なくていいからカギを掛けておくのよ」と
言ってある。が、もしカードが届いて受け取らなければ、また郵便局へ足を運ばねばならない。
これも勉強だ!と思って、「もしポストマンが来たら、貴男のカードが来るはずだから
この印を押して受け取るのよ」と伝えて仕事に出かけた。
蒲団の中でねむけ眼で聞いていたホアンなので、配達に来たら旨く受け取れるかしら??
と思いつつ、いつもの様に「いってらっしゃーい!」の言葉に彼を残し家を後にする。
日中一人なので、出来るだけ早く帰ってやろうと思い、夕方帰りを急ぐ。
「ホアン只今!」と2階に上がる。「オカエナサーイ」と言ってくれる。
何か変わった事は?と聞くと「これ!」と封筒を見せる。
『ああー、郵便が来たんだ』今朝伝えておいてよかった!!。見るとホアンのカードだ。
ちゃんと印を押した?と聞くと、「ディン ドン」と鳴ってね・・・・とポストマンのしぐさを
身振り手振りで説明してくれる。
丁度夕べの『日本語教室』でハンコという言葉が出たので、実物を見せておいたのが早速役立った。

   

今のホアンの一日は、日本語の勉強を筆記と借りて来たビデオでやっている様だ。
気晴らしに散歩にも出かけている。
私が夕食の準備にとりかかると、台所に降りて来たホアンは、夕べのすき焼きの残りがラップして
置いて有るのをみて、何か私に言おうとしている。
「何?」と聞くと、「今夜これ食べますか?」とそのすき焼きを指差して聞いている。
「げー!また同じ物かと言ってるのかな?」と内心、心配の私。
「ノー!」と言う私を見て「これ好きです」と言ってくれている。今夜も食べたい!と。
「美味しかったの?」と聞くとニコニコッとして私に微笑み返してくれる。
なんと嬉しい事だろう!今夜は上等の肉をはりこんだ。
じゃー!今夜はホアン一緒に手伝ってくれる?と聞くと「オッケー!」とにこにこ。
僕10分ほど散歩行って来ます。と言って出かけていった。
私は早速すき焼きの材料を用意する。
ネギを切らせて、お肉を用意し、食卓にお鍋を持って行かせる。
私の教えた通り、楽しそうに箸でお鍋に材料を入れ、炊いてくれている。
「今日はホアンが作ったのよ!」と主人に言うと、ホアンは嬉しそうに主人の顔を見ている。
「さあ!食べよう」”
食べ初めてホアンがにこにこっとして、「いただきます わすれた!」と私達の顔を見る。
「ああー!しまった」『じゃー 頂きます!』
ホアンは生卵が気に入ったのか、今夜は2個も、たいらげた。
あ〜あ満腹!満腹。
さあ、お風呂が済んだら、日本語の勉強よ。
「ごちそうさまでした」と手を合わせ、流しにお茶碗、お皿をちゃんと持って行っている。
「おとうさんは、おふろフィニッシュ。ホアンどうぞ!」と言うと、「ありがとござまーす」と
2階へ上がって行った。
ホアンに何かしてやると、かならず彼は『ありがとござまーす』と言ってくれる。
ほんとにいい子に育てられている。ご両親の愛情や躾が目に見える様だ。
3月30日(金曜日)
ホアンにとっては夜が遅いし、一番眠い年頃であろうと察しられて、何だか起こすのが可愛そう。
夕べ、日本語の勉強をしていた時、”うめ”という単語が出てきて、実際にうめぼし
見せて食べさせてみた。最初は顔をしわくちゃにさせて、身体をよじらせていたが
もう一個!もう一個と結局3個も食べた。これもまた美味しい!と言っている。
今朝は彼の昼食にと、その梅干を中に入れて、おむすびを作っておいた。

仕事をしていると、3時頃会社の方に、近所の面倒見の良いおばさんから、電話。
何か有ったか??!と一瞬不安になる。
「今ね、雨が降りそうなので、お宅へ行って彼に、雨が降りそうだから、洗濯入れたほうがいいよと
伝えたんだけど、分からないのかもしれない」と言われている。
お礼を言って私が電話しますから・・・と言いかけたら、その奥さん「ああ!入れてる、入れてる」と
窓から見える我が家を実況中継して下さる。「あぁぁ・・・ホアンありがとう!。」

夕方になり雨が降り出した。急いで帰ったが、ホアンが居ない!。玄関はかぎがかかっている。
散歩にでもでかけたのだろう・・・と思いながら、夕食の支度。
30分たっても帰って来ない。外は暗くなり、雨も沢山降ってきた。
心配になり、玄関に出て彼の帰りを待つ。10分位たったろうか。黒い傘をさして、こちらに向かって来る。
ホアンだ。よかったー!
ホアン!と大きな声で呼びかけると、にこにこっとする。
「何処へ行ってた?散歩?」と聞く。先日出来たカードを使って早速お金を引き出しに
行って来たらしい。
初めてで、何回もやり返して、時間がかかったと言っている。
そうかー!私も忙しくしていて、カードの使い方を教えるのを、忘れていた。

 

寒いから早く入りなさい!と中へ引き入れる。
ミルクを暖かくして、ケーキを持って2階へ上がる。
夕食の支度をさぼり、今日は近くのサウナの有るスーパー銭湯へ行く事にする。
お腹も空いていたので、先に食堂で夕食を済ませる。
ホアンと主人は仲良く男風呂の方へと消えて行った。
11:00にお風呂から出てみると、既に二人共待合室で待っている。
良かった?と聞くと「Good]と答えている。彼は日本のお風呂も、とっても気に入っている。
コロンビアでは、朝、シャワーを浴びて出かけるだけらしい。

「さあ帰って、また日本語の勉強よ」と言うと、「友達に電話するので、途中の電話Boxで
降ろして」と言う。
僕歩いて帰りますから・・・と言うので、きっと彼女に電話するんだろうから、お邪魔虫ねと主人と話。
彼を降ろし私達は先に家に帰る事にする。
彼が日本からコロンビアに電話すると、1000円のカードでは、たったの3分しか話せないそうだ。
だから500円のカードでは、ほとんど話したようにない。
1000円のカードを3枚持っていたので、10分程話せる訳だ。
北米だったら、もっと安いだろうと、思えるのだが・・・やっぱりコロンビアでは高いのかな〜??

私達が落ち着く暇も無く、すぐ彼が帰った来た。「どうしたの?」と聞くと、どうも不在だったらしい。
お風呂に入って、少々グロッキー気味の主人。「今日は勉強休みにするかー・・・・」と言っていたら
とんとんとん・・・と勉強道具抱えて降りて来たホアン。元気を奮い立たせて「じゃーやるかー!」と主人。
ここの所、ホアンの勉強に付き合って、好きなテレビも、毎日見ていた、自分のパラビデオも
全く見れない。
加えて、ホアンとの楽しい会話を聞いていると毎日午前様。主人の目も少々落ち窪んで来た
一段落したので、「ブレークタイム」ねとお茶を入れる。
今日何か新しい事あった?と聞くと・・・・・
銀行へ行って、キャッシュカードを使ってお金を出す一部始終を、身振り手振り交えて
楽しく聞かせてくれる。
全て日本語なので、わからないホアン、それでもATMと格闘し、トライしてみたらしい。
自分がやっていると、何人かの日本人が、横目越しに見るんだ!僕はシークレットナンバーを
見られてはと、身体をこうして斜めにして隠したんだ。
ひとつボタンを押して”ブー”次を押してまた”ブー”。
ひとつひとつ全部押して、正しいボタンを見つけ出し、最後にはOKだったよー。
正面みると、カメラが僕をにらんでいるんだ。汗をかきかき、カメラ向いては”にこっ”としてね
と真面目顔の表情をして見せる。
結局何分かかったの?と聞くと、にやっとして2時間!
うそうそ!30分かなー・・・!と2時間に目を白黒させる私をからかう。
この顛末を、おもしろおかしく(実際本人は冷や汗、かきかきだったのだが)聞かせてくれる。
私達は涙を流しながら笑い転げて、それを聞くのである。
あ〜ぁ、今日も既に時計は1時をまわっている。
ホアンまた明日!


3月31日(土曜日)
今日は少し花曇り。
ホアンと一緒に3人で県立図書館に、日本語の勉強の為のビデオを借りに行く。
主人と二人分のカードを作ったので10本借りられた。
今、丁度桜が満開で綺麗なので、黄金山へ行く事にする。
日当たりが良いので、ここの桜は既に散り初めて入るのも有る。
来年は彼の留学期間も終り、見ることが出来ないので、今年の桜を見せておかないと・・・。
車の中で、音痴な私は一生懸命『さくら さくら』を歌って聞かせる。
エンターティナーの彼は、すぐ真似をして、頭の上からでるような、私の声を真似して、
SAKURA・・・SAKURA・・・と一緒に歌う。彼も一杯に口を開け、国歌を歌っている。
時間も丁度良い。風も強く寒いので、家に帰る。

   県立図書館にて日本語のビデオテープ借りる   黄金山のさくら

   初めてのおでん   これはなにですか?

夕食はハンバーグを作ろう!。
この間すき焼きの食卓を一緒に手伝ってくれたホアン、僕、毎晩おかあさんと一緒に作る!
と言ってくれた。
あんな事言ってくれるなんて、きゅっと抱きしめたくなるほど可愛くなる。
まず玉葱を刻む。涙の出る目を私に見せる。ああー!ホアン泣いてる!。
彼女が恋しいんだー!とからかうと、ノーノー・・・と笑い返す。
次はニンジンね。小さくみじん切りにさせる。真剣な顔をして包丁を使っている。
彼は国では全く料理等した事が無い。メイドを雇っているので、その必要が無いと言う。
起用な彼は、料理の支度をとっても楽しんでいる。
にんにくも、みじん切りにさせて、次はミンチだ。
ボール一杯のミンチの肉に、切った材料を入れて、こね回す。楽しそうだ!
おむすび大に丸めたハンバーグを、キャッチボールをする様に右手から左手へと投げて見せる。
「不思議そうにホアン、どうしてするの?」と聞く。
「中の空気が出て、美味しくなるのよ」と(これは私が勝手に思っている事なのだが)
そう説明すると、変に納得してくれる。
フライパンを出して、油を敷かせ、ハンバーグを焼く。
一個、一個ひっくり返す。ハンバーグはすぐ焦げてしまうので、私は別に作ったルーに入れ
”ことこと”と20分位煮ていく。出来たようなので、ホアンと一緒に味見だ。
『ひとくち食べると、ニコっとする』『美味しい!!』と言っている。
結局、味見をした1個と合せると、彼は7個のハンバーグをたいらげた。
美味しい、美味しいと言って食べてくれる彼を見ていると幸せだ。

食事をしながら、明日の予定を話し合う。
明日はパラの総会だ。私は厚生年金での「リズム体操」の発表会が近いのでその練習だ。
ホアンに、「お父さんはパラグライダーの総会。私はジムナスチテックのお稽古で出かけるの
ホアンどうする?」と聞く。
すぐに『僕、おとうさんと一緒に行く』と言っている。
「でも総会は昼までかかるし、その後、掃除もあるのよ。退屈しない?」と聞いてみる。
「うん、いいよ」と言い、「僕、掃除もするよ」とにこにことして答える。
主人と顔を見合わせ、「じゃー連れて行くかー」と主人。
じゃー、明日早いから今日は早く寝よう!!と言ってみたものの
時計は、既に12時半をまわっていた。