スーちゃんと稲垣夫婦のホームステイ日記

                                              愛子 記

2008年 12月
12月7日(日曜日)  日本語能力検定試験
今日は日本在住の外国人の為の「日本語能力試験」が行われる。
全世界で12月7日この日に行われる。
スーちゃんの国スリランカでも日本語を勉強しているスーちゃんのお友達はコロンボの試験会場にて
同じように試験を受ける。
昨年スリランカで3級を受けたスーちゃんは、今年この日本で2級に挑戦する。
試験は9時45分開始だが、8時半過ぎには東広島、広島大学に着きたいと思い7時15分頃に我家を出る。
高速道路を通り西条には8時半少し前に到着する。すでに沢山の外国人受験生が試験会場に向っていた。
案内書きが余り無いのできっと受験生は広い敷地の中で迷うに違いないと思う。
時間ぎりぎりに来ると、あせりまくるだろうなぁ・・・・。
前回パッちゃんやホアン達は3級で、試験会場は総合科学部だった。
てっきりそこがスーちゃん達の試験会場と思った主人であったが中に入って案内の学生らしき人に聞くと、
教育学部校舎であったので、あわててそちらに行ってみる。
ベトナムのチャンと会ったので、スーちゃんも心強い。
二人の教室はそれぞれ違ったが、迷わないように教室まで連れて行ってやる。
グラウンドのもみじはまだ葉が落ちず、きれいだったので、スーちゃんとチャンは写真におさまっていた。
会場に二人を連れて行き安心したので引き上げる事にした。

校舎を出ようとした時だった。一人の受験生が係りの人に受験ハガキを見せて教室はどこかと聞いている。
係りの人はそのハガキを見て「ここは広大ですよ。これは岡山大学って書いてあるでしょう!」という言葉が聞こえた。
受験生は立ち尽くしてハガキを眺めていた。そして途方にくれたようにゆっくりと校舎の外を歩き始めた。
私達は彼に近づいて聞いてみた。そしてハガキを見せてもらうと、確かにひらがなでも「おかやまだいがく」と書いてある。
彼は島根を早朝に出発し、同僚達とここまでやって来たと言う。この受験票は会社の人から昨日渡されたと言う。
同僚は3級を受験するのだが彼は4級だ。なので彼だけ「岡山大学」が受験会場だったようだ。
近くなら連れて行ってもやれるが、なにせこの時間に岡山までは・・・・。
せっかく6000円もの受験料を払い込み、島根からここまでやって来たのに、
会社の人はそのようなサポートをしないのだろうか?と可愛そうになってしまった。
彼は島根の方の工場で働いている中国人であった。
まだ一年は日本にいるとの事なので、また来年頑張って3級に挑戦しなさいと主人が慰め、元気付けていた。
そんな事もあるんだなぁ〜・・・・。
帰りに西条の弟の家を久しぶりに訪問。近況を話て帰宅する。
12月13日(土曜日) IVCクリスマスパーティ
今日は私の属しているIVCボランティアクラブのクリスマスパーティだ。留学生会館のホールで、学習者さんやお友達、そして
日本語のクラスの後でやっているクレッグ先生の英会話クラスの生徒さん達等・・・50名以上参加して頂いた。
皆さんにはポットラックで自国の料理を何か一品持って来てもらうようにお願いした。
スタッフは9時集合で、テーブル設定や、ホールの飾りつけ等準備をする。
飲料水担当の私はボトル20本を買い求め会場に運ぶ。
私達の教えている学習者は初級、中級、上級合わせるとのべ30名前後だろうか。
まず、このクリスマスパーティのメインイヴェントは一年間頑張って教室に来た学習者に表彰状を出す事だ。
今年の1月から12月までの時間数をカウントし、30時間を越えた人を称える為、賞状を出す。
表彰式が終わると、お楽しみの皆さんの持ってこられたお料理を頂いたり、ヴァイオリンの演奏や我こそはと思う
学習者さんや先生の余興、歌等で楽しい時間を過ごす。
学習者さんの自国の唄も飛び出し、なかなか楽しいクリスマス会となった。
残念ながらスーちゃんは、YMCAにてゴミ問題などの集いがあり、そちらに行かなければならず
今日のクリスマスパーテイに来ることが出来なかった。
スーちゃんは日本に来て以来、IVCの日本語教室にずっと参加しているので、30時間を越え、表彰対象になっている。
3時には留学生会館ホールは別の予約が使用する為、2時半には片付けに入り、3時前には滞りなく終了した。
12月19日(金曜日) 
12月というと師走!先生も走る、皆んな走る。忙しい師走!
今日はスーちゃんとお父さんとで宮島にお買い物だ。そろそろ帰国が迫ってきた。
お土産の準備もしなければならないすーちゃんだ。
瀬戸内高校の先生にお願いして、お休みを頂いたスーちゃんは、大手を振って出かけて行った。
お土産というと、宮島に1000円均一のお店がある。国に持って帰るにはもってこいの日本人形を1000円で売っている。
タイのパッちゃんもこの人形を4体か5体買って帰ったものだ。
1000円にしては見栄えがして、日本!!という感じがするのでおみやげには丁度良い。
宮島まで出かけていくのが少し大変ではあるが、そこはお父さんと一緒なのでルンルン気分で出かけた。
その間、私は近くの公民館で、お料理教室があるのでそちらにちょこっと出向く。
お正月が近いのでおせちの作り方なんぞ教えてもらえるかも・・・・。
おせちといえば最近は一見豪華なおせち料理が売られている。
最低でも1万、1万5千円から上は10万とかいったおせちがデパートに並んでいる。
昨年は近所付き合いで2万のを買い求めた。ところが子供達は一向にお箸をつけてくれなかった。
子供達が喜んだのは、主人の手打ちうどんであった。そしてやはりほんの少しでも手を加えたお料理だった。
はたと考えた。いくら見栄えが良くても、家庭の味がするほうがいいんだ!!
今年はおせちを買い求めるのをやめた。下手でも私がぼつぼつ作ることにしよう。
 AFS日本語試験
今日はスーちゃんはAFSの日本語試験を受けることになっている。中区の国際平和センターで行われる。
先日広大で留学生の為の「日本語能力試験」が行われたので、スーちゃんはあれ以来あまり勉強していない。
なんだか緊張の糸が切れてしまったようだ。今日の試験も「まあいいや!」と投げやりの気分である。
今日はスーちゃんやベトナムのチャン、西条の方からも試験の為に広島に来るらしい。
日本滞在の間にどれだけの日本語能力が身についたかをみるのだろう。
12月22日(月曜日)  株式会社ジンテック様訪問  
スーちゃんは今回日本の企業からの奨学金を得て日本留学をしている。その企業が東京にある。
東京千代田区にある「株式会社ジンテック」である。
今日と明日でスーちゃんは会社にお礼の為ジンテック様を訪問する。
当初は広島に来ている留学生とともに3人で東京へ行く予定であったため、なんとかなるわー!とのんきなスーちゃんであったが、
他の2社の訪問が取りやめとなり、スーちゃんは一人で東京に行く羽目になってしまった。
最初は「いやだ!いやだ!どうするん?私行けない!!」と駄々っ子のようにわめいていたスーちゃんであったが、
先日宮島にお土産を買いに行った時主人が「東京行き予行演習」をさせた。
新幹線のプラットホームにスーちゃんを一人立たせ30分ばかり研究させた。
「のぞみ」「ひかり」「こだま」の列車の形、どのホームを走るのかなど、30分もたってみていればわかるから!と主人は命令した。
スーちゃんも実際一人で東京に行かなければならないと切羽詰っている為、泣き言はいっていられない。
主人の言いつけをまじめにまもり新幹線ホームに立ったようだ。そして何とかなると自信を持ったらしい。
AFSより東京行きの日程表や新幹線のキップが贈られて来ている。
朝9:06発ののぞみで東京に向う事になっており、寝過ごしては大変と昨夜は早めにお布団に入らせた。

朝ごはんを食べ7時30には出かけるように伝えた主人であったが、朝食にピザを焼いたので全部平らげるのに時間がかかり、
ゆっくりしていたスーちゃん、出かけたのは7時45分を過ぎていた。「急いで!急いで!」とせかす。
ピンク色の大好きなスーちゃんは紫のセーター、黒の超ミニスカートにブーツといういでたちで出かけて行った。
私達もスーちゃんが出かけたので、ほっとして朝食を済ませた。
片付けなどしていると、私の携帯が鳴った。主人がお守り代わりの持たせた自分の携帯だ。
なのですぐにすーちゃんからだとわかった。
私はすぐに主人に手渡した。「もしもし!」と主人が出ると、「おとうさ〜ん!!!」と言って切れてしまったという。
その声が泣いていたようだったと主人。「えー!!!遅れたのかしら?」と私。
すぐに掛けなおしてコールするもプープーと応答なし。何度も何度もかけたが同じ状態。
あせりまくる私達。とにかく東京でスーちゃんが到着する時間、車両の所でAFSスタッフが待機している。
遅れるならその事をすぐに連絡しなければならない。主人はありとあらゆる状況を考えてあせりまくっている。
すぐにAFS広島支部長さんに連絡。その間にもスーちゃんへのコールも続けていた。
時間は無常にも過ぎていく。もし万が一の時は次に来るのぞみ新幹線に乗ればいいからねとも伝えてある。
日本語のあれだけ上手なスーちゃんだ聞きまくって何とかするだろう。
いや、ホームのベンチに座って泣きべそでもかいてるんじゃないか?いや諦めって帰ってるんじゃないの?など
私達の頭の中にはいろんなスーちゃんの姿が浮かんでは消える。
2時間くらいたったころ、携帯をコールすると呼び出しをしている。でも留守電でメッセージ録音の声が入ってくる。
それを聞いた主人、もう大丈夫だろうコールすると言う事は何とかしてどれかの新幹線に乗って東京に向っていると思うという。
それを聞いて私も一安心。
結局東京着の予定時間まで一度もスーちゃんからは電話は無かった。
東京で待っておられるスタッフの方にも13時過ぎまで連絡もつかなかったが
いちおう大阪支部長宛には連絡を入れたので何とかなるだろう。
気をもみながら到着時間になった。そして・・・・私の携帯が鳴った。
すぐに主人が出ると「おとうさ〜ん、東京へ無事着いたよ!!」のスーちゃんの声。
実は新幹線から降りるとすぐにホームで待っておられた東京のAFSの方から
「すぐに広島のおとうさんに電話しなさい!!!」と血相変えて言われたそうだ。
スーちゃんは何が何やらさっぱりわからず、我家で何事か起こったのか?
今朝行ってきますと言った時は何も無かったのに・・・何事??と言われるがままに電話を受け取る。
AFSの方は電話番号は廻してあり、発信するだけにしておられたようだ。
そして事の顛末を説明する主人に、スーちゃんもようやく理解出来たらしく「ごめんなさい!ごめんなさい!」とひたすら謝る。
続いて私も一言言わねば気がすまない!とばかりに「どうして電話すぐしないの!!」と怒ってしまった。
まあ、当の本人にすれば、「おとうさん、乗ったよ〜!!」と言って電話切ったと思っているので、
どうして怒られるのか納得いかないと思うが・・・・。
そもそも事の始まりは主人だ。「泣いている!」何と言うものだから、間に合わなかったという考えにしか至らないではないか!
我家を出る時間が少し遅かったという事で最初から不安に思っていた主人なので、「おとうさ〜ん!!」の声は
乗れなくて泣いているとしか思えなかったのだろう。早とちりの主人のやりそうな事だ。
主人のいらいらに振り回され、すっかり疲れ果てた半日であった。
笑い話に終わったので良かったけれど・・・。
夜はジンテック様の管理部長さんのお宅に泊めてもらう予定だ。
随分心配かけてしまったと思ったか、夜にもう一度電話してくるスーちゃんであった。
12月23日(火曜日) 
昨日は東京着の後、すぐにジンテック様の会社訪問をした。
スーちゃんが会社訪問するにあたって、スーちゃんがこれまで広島滞在の間の様子、特に二回のスピーチコンテストに優勝したこと、
瀬戸内高校の文化祭の様子など撮ったDVD,主人と私のHPのコピーそしてジンテック様あての封書の手紙も持たせた。
そして潟Wンテックの会社概要についてもインターネットで調べて事前の情報は頭に入れて置くようにスーちゃんに言った。
私達にとっても初めて見知る情報(社業)で、2001年からこのような福祉活動に取り組んでこられた。
特に2004年に起きたスマトラ沖地震による津波被害をきっかけに、2005年4月よりスリランカからの留学生を受け入れ、
2006年1月に正式に、スリランカを重点に置いた「ジンテック社会福祉基金」という活動を始められた事などを私達も知った。
今回スーちゃん一人東京に旅立ち、会社訪問をする事になった事は、大いに彼女の人生の経験になった事と思う。
今日は浅草を案内して頂いた後、昼過ぎの新幹線で広島に戻る事になっている。
どんな顔して帰ってくるか、楽しみである。

 雷門  東京タワー 東京駅
12月24日(水曜日) 昨日の顛末 
昨日は夕方6時過ぎに、スーちゃんは帰って来た。
開口一番「ごめんなさいー!!」と申し訳なさそうな笑い顔であった。
ジンテック様の会社訪問をした時は社長さんをはじめ幹部の方が会って下さったようだ。
夜はジンテック社の管理部長様のお宅に泊めていただいた。
若い子が泊まると言うので、娘さん親子を呼んでくださり対応してくださった。
娘さんは英語が堪能なので呼んでくださったのだが、スーちゃんが日本語がバリバリなのでびっくりであったようだ。
DVDも見てくださり、ジンテック社の奨学生スーちゃんも面目を果たしたように思う。
翌日はジンテック社の女性営業スタッフと共に、東京見物をさせてもらっていた。
はとバスで東京タワーや浅草の観音さん等に行ったようだ。
ジンテック社様に御礼に行ったのに、至れり尽くせりであったようだ。
帰りの新幹線では、AFSスタッフまで来てくださり、席まで案内して電車が出発するまで見送っていただいたらしい。
東京に一人で行くと聞いていたスリランカのお母さんは無茶苦茶心配していたようだ。
スーちゃんにとって人生最大のアドベンチャーになったようだ。
12月25日(木曜日) 
昨日留学生会館で日本語の勉強をしてきたスーちゃんとベトナムのチャンは、明日マツダ工場見学に連れて行くため我家に来た。
ホストファミリーの許可を頂いたので、せっかくの機会なので是非マツダの歴史や工場の見学をさせたいと主人のプランだ。
ホアンの時も、タイのパッちゃんの時も連れて行った。
あらかじめ予約が必要なのでインターネット予約を入れておいた。朝9:30から案内してくれる。
我家を9時前に出かけて行った。
二人とも「おかあさんは?」と一緒に行こうと誘ってくれたが、今日私は集会所の草取りに行かなければならない。
今日は風も寒く、冬の木枯らしが吹き荒れている。今年最後のご奉公なので頑張ろう。
夕方三人マツダ見学を終えて帰宅した。「楽しかったよ〜!!きれいな車がいっぱい有ったよ〜!!!」と目をきらきらさせていた。
二人とも日本語がよくわかるので日本語案内をお願いした。
マツダの歴史や、ロータリーエンジン開発までのストーリーなど主人はいろいろ見て考えてもらいたかったようだ。
NHKの番組「プロジェクト」を撮りためたビデオをスーちゃん達に無理やり見せる主人。
小さな町工場の工員、会社で窓際に追いやられた社員、倒産寸前の町工場、そんな人達の起死回生の成功ストーリーをみせて
「君達も若いのだから、なんでもいい、いつも物事に疑問を持ち、考えながら生きて欲しい」と、熱弁をふるう主人である。
二人とも、「日本に生れればよかった」とか「日本っていいなぁ、何でもあるし、何でも出来る。お金いっぱいあるし・・・」と
自分の国と比べ、羨ましがるスーちゃんたちであるが、決してそうではないという事を話してやる主人。
「となりのトトロ」や「魔女の宅急便」「風の谷のナウシカ」といった宮崎駿シリーズアニメがあるので、
二人ともそちらの方が気になるようで主人の弁舌もあまり本気で聞いてはいないが・・・・。

 マツダ展示場 チャンとスーちゃん 昨年モーターショーのコンセプト車 

 大和ミュジアム 大和ミュジアム 大和ミュジアム
12月27日(土曜日) 
ベトナムのチャンをホストファミリー宅へ送っていく。
主人の口角泡を飛ばし弁舌をふるった事が少しは頭に残っていてくれるだろうか?
けれど、帰る車の中で、「おとうさんの話を聞くまで、物事をそういった目で見たことはなかった」と言ってくれていた。
無事送り届け、我家に帰宅。主人はお天気が良いので、いつものパラグライダーに出かけていた。