ホアンと稲垣夫婦のホームステイ日記

                                              愛子 記

     2004年 11・12月
11月某日 最近のホアン
昨年エリックの国コスタリカ、そして憧れのコロンビアを旅する事が出来て以来
すっかりお互いに安心してしまって、エリックからも、ホアンからも音信が途絶えてしまっていた。
私も元気でやってれば、いいや!と夏以降、ホアンに電話もメールもしていない。
10月のある朝の事、朝ごはんの準備をしていると、電話のベルが鳴る。
「もしもし!??「もしもし!」 電話の向こうでは「おかさん、ぼく、ホアンで〜す」
うっそ〜!! 一瞬信じられない私。
「ほんとにホアン?ホアンなの?」 「おかさん、元気?」とお互い久しぶりの会話のやりとり。
ずっと以前に、ホアンの携帯の電話番号やボゴタのマンションの電話番号を聞いたが
いつもの調子で、電話代滞納のホアンだったのだろう、まったく通じない。
私も面倒になって、しばらくホアンとの音信が途絶えていた。
気になったとみえて、ホアンから電話を掛けて来たのだった。
ホアンから電話をするなんて、天変地異!目の玉が飛び出るほどのびっくり仰天の出来事である。

今ホアンは大学で心を入れ替えたか一生懸命勉強しているらしい。
それも、日本文学に没頭しているらしい。
源氏物語、平家物語、紫式部 そして芭蕉に一茶。
大学の図書館に行っては、それらの本を読み漁っているという。
ホアンにはやはり、日本人に通じるなにか感性を持ち合わせているのだろうか?
電話の向こうで、目を輝かせながら「すっごく、かっこいい!!」と日本文学にのめりこんでいる
ホアンの姿が想像出来る様子である。
私達も高校の教科書くらいでしか、勉強した経験がないので、恥ずかしながら、それらに付いて
語る口がない。きっといまではホアンの方が、より詳しく知識があるのではないかと思われる。

主人ともしばらく大学のことや、普段の生活について話していた。
ただ、電話代も高かろうと心配して、早々に切る。
またメールを書くからねと言って。
ホアンはきっと、日本の事を忘れず、今まして芭蕉や一茶に付いて喋れる事が
嬉しかったのだろう。

ホアンに何を聞かれるか分からないので、私達も源氏物語、芭蕉・・・・
勉強しなおさないといけないかな??


11月23日 (水曜日)勤労感謝の日 「メキシコの友達」 
私は「なるほど世界の料理」といって、日本在住の外国の人を講師に招き、そのお国料理を教えてもらうという
グループに属している。
9月のお国料理はメキシコで、講師は広島大学の学生でアンヘレスさんだった。
私は旅行の為、運悪くその月の料理講習に参加する事が出来なかったので、いつか彼女に
メキシコ料理やトルティージャの作りかたを習いたいと考えていた。

西条に住む「なるほど世界の料理」グループの友達渡辺さんが、アンヘレスさんと連絡をとって下さって、
まずは3人で食事をする事になった。
西条の町外れ、古い民家を改装してカニ料理専門店として営業しているお店がある。
彼女は日本料理は、あのねばねばの納豆を覗いては、なんでも食べるという。
カニ?大好き!!との事で、早速渡辺さんの案内で「かに綱」へ。
このお店は雰囲気もとても静かで、個室になっていて、とても素敵なお店である。

アンヘレスは6年半前に一度来日し、横浜で一年間勉強をした。
そして、広島へは、1年半前から広島大学で環境に関する研究、勉強をしている。
なんだか、聞いていてもむつかしいので、彼女の国メキシコに付いて、たどたどしいスペイン語で
いろいろ質問する。
彼女は4人姉妹の一番下。国に両親、上の3人のお姐さんがいる。
彼女は大学の関係で住んでいるのは、アメリカと国境を接している「シウダーフアレス」と言う街。
エルパソは隣町である。しかし両親はメキシコ南部に在住である。
彼女はこうして日本に来て、自分の専門分野の勉強が出来るというのは、やはり恵まれた家庭
なのだろうと思う。
国では貧富の差も大きく、学校に行けない子も沢山いるようだ。
また、首都のメキシコシティの治安はとても悪いという。
メキシコもカリフォルニア湾や太平洋に面した地域は、素晴らしい観光地が沢山あるという。
それもそうだ、あの有名なアカプルコがあるんだもの。
遠い将来、メキシコも訪れてみたい国である。

3人で話ははずんで、12時から4時頃まで、ねじ座っておしゃべりが続いた。
今度はアンヘレスが私達を彼女のマンションに招いてくれることに。
ところが渡辺さんは来週から10日間ヨーロッパ旅行らしい。
それでは・・・と私だけ次の日曜日に彼女のマンションに伺う事になった。
彼女の要望で、日本の生け花をやってみたいと言う。
というもの、私達が食事した個室の床の間に素敵な花が生けてあった。
それを見たアンヘレス、「巣晴らしい!私も生けてみたい!」と言う。
じゃー私が教えてあげましょう」ということになった。
彼女が日本の伝統的な生け花というものに興味をもってくれただけでも嬉しい事である。
半日彼女とおしゃべりをして、とっても性格の可愛い女性だなと感じた。


11月27日(土曜日) アンヘレスと生け花
お昼のスペイン語が終わって急いで西条のアンヘレスのマンションに駆けつける。
今日は彼女にパエリアの作りかたを習い、私が生け花を教えると言う段取りである。
お花はすでに買い揃えた。
広島東インターから高速にのり、西条でおりる。
云十年まえの高校生時代に西条に住んでいたが、最近の西条はそのころの面影はなく、すっかり様変わりしている。
方向音痴の私は、記憶をたどり、昔の古い道を運転して駅前近くの彼女のマンションへ。

時計は既に2時半頃なので、彼女もお腹を空かせて待っているだろうな〜と心配。
部屋のベルを鳴らすと、ドアが開き、人なつっこいアンヘレスはニコニコと「オラーアイコ〜!!」と出迎えてくれ
頬と頬をあわせてのラテン系挨拶をしてくれる。
「パセン!パセン!」入って入って!と、部屋に案内。
部屋と言っても彼女達留学生達の為のマンションなので、可哀想なくらい狭い部屋である。
ベッドと机ひとつ置くと、丸テーブルがやっと置けるだけの小ささである。
でも、きれい好きな正確なのだろう、物がキチンと整理されている。

すでにお昼の食事を作って待っていてくれた。
小さな食卓に、ご飯とコーンの炊き込み、サラダ、グラタンを並べる。
ジュースは何がいい?等とこまやかに気を使ってくれる。
食卓が賑やかになったので、アンヘレスも座って、さあ頂きましょう!
「ブエン・プロベッチョ!」(この食事のお恵みを感謝します)と言って昼食を食べ始める。
これは、私達がお箸をつける前に「いただきま〜す」というのと同じ意味で、頂く事への感謝の言葉である。
ご飯にお漬物、納豆の食生活の私だが、割と順応性の良いほうで、何でも美味しいと思って頂ける。
今日のアンヘレスの料理も一生懸命に作ってくれた心が伝わる温かい料理であった。
サラダにはマヨネーズと思うけれども、彼女達はオリーブオイルを頻繁に使うようで、今日のサラダも
緑の野菜の上に、オリーブオイルをかけ、塩コショーをパラパラと降る。
これがなんともいえない美味しい舌触り。
そしてチキンを使ったグラタンも、おつな味であった。
しっかり頂いて、もうお腹一杯になると、今度はジェラード、アイスクリームである。
これは既成のアイスクリームに国から送ってもらったというキャラメルをとろっと溶かしたかんじの
ムースをかけてくれる。これも甘くてとっても美味しかった。

もうお腹一杯になったところで、彼女は気分も良かったのか、京都に居る友達に電話。
彼は同じメキシコの友人で、同志社大学に通っている。
「いま、新しい日本の友達が来てるのよー!話しなさい」と言って携帯を私に廻す。
彼は日本での生活はもう3年位で、日本語を勉強する為に来ているので、会話は安心だ。
私が、それを知らずに一生懸命スペイン語で話し掛けると、日本人がスペイン語を話すという
喜びがあるのか、「スペイン語が上手ですね」と褒めてくれる。
京都はどうですか?と尋ねると、「京都はあまり友達も出来ないし、楽しくない」と電話の向こうで
少し淋しそうな感じで答えていた。
クリスマスにかけて、アンヘレスは京都へ旅行し、彼もまた年末から新年には一緒に広島を
訪問するらしい。
私が主人のパラグライダーの話しをすると、アンヘレスはすっかりまいあがって、彼と一緒に
パラグライダーを次の機会に見に行こうという話になってしまった。

時間の経つのが早いので、そろそろ生け花をしなくては日が暮れる!
買って来たお花,花器、ハサミを並べ準備完了。
卵型の花器に生ける花材はユーカリとバラ。
教材にある出来上がった形を見せてイメージをさせ、花器に対する寸法を教える。
大体の基本を教えると、呑み込みの良い彼女は上手に生けていく。
出来上がった作品を横にして、「ハイ、ポーズ」と写真に納まる彼女。
なんでも素直に受け入れて、楽しんでいる。
ラテン系の人はほんとに根っから明るくて、一緒に話をしていてもあっという間に時間が過ぎてしまう。
外も薄暗くなり始めたのでそろそろおいとましなくては・・・・。
大好きなラテンミュージックのCDを5枚位持って行ったけれど、聞く暇がなかった。
予定のパエリアは出来なかったので、旅行に行っている渡辺さんが戻って一緒に
作りましょうという事になった。

「ノスベモ〜ス!」
また会いましょうね!!

    

       

  

12月12日(土曜日) パエリアを習う
今日はアンヘレスが先日のお礼にと、我が家でパエリアの作り方を教えてくれる。
西条に住む渡辺奈保美さんがアンヘレスを連れて来る事になっている。
アンヘレスは友達が多い。今日は同じ広大に留学しているメキシコのマルタを伴って来た。
我が家の近くのスーパーに11時で待ち合わせをする。
3人仲良く定刻過ぎて、ほぼ12時近くやって来た。
スーパーでパエリアの材料を買い込み、いざ我が家へ。

久しぶりの御客様なので、玄関も花で飾り、少し小奇麗にした。
パエリア用のお鍋を買ったのだけれど、アンヘレスは「これじゃー小さいわ」と言って
煮込み鍋の一番大きいのを棚から見つけ、「これで大丈夫!」と言う。
「そんなに沢山作ってくれなくってもいいのに・・・」と思うが、初めてのパエリアなので
おまかせする。
パエリアというのは、ようするにご飯と魚介類とか野菜などをごちゃ混ぜにして炊いた
炊き込みご飯の様なものである。
ご飯を炊く時、水にサフランを入れて炊くので、出来上がりのご飯はとても綺麗な黄色となる。
それに貝や、イカ、さらにピーマン、たまねぎといった野菜を入れて彩りよく炊き上げるのだ。
お米は日本のお米を使った。一番良いのは長粒米が炊きあがりがパラパラ状態になるので
そのほうがいいらしいが。
コトコトととろ火で炊く事1時間ばかり、その間居間の方で写真を見たり、メキシコのお国の事など
歓談が続く。
マルタは広大の工学部に学んでいる。日本にはもう2年半いるので、日本語はほぼ不自由なく
理解出来るようだ。
メキシコでは日本の東大に匹敵するメキシコ大学で学び、日本で更に深く勉強をし、
それを終えると、メキシコ大学で教鞭をとるらしい。
話の間中、アンヘレスはちょこちょことパエリアの様子を見にキッチンに足を運んでいた。
そして、出来たよー!とお皿に盛り付けが始まる。
アンヘレスはメキシコのお母様があまり料理をされないかたらしいので、自分で料理学校に
行ったりして習ったと言っていた。
私も、彼女達が来ると思って一応、スープや手巻き寿司を食べるように準備をしていたので
食卓は所狭しとメニューが並ぶ。

  お味どうかしら?  お鍋一杯のパエリア  私の自慢料理なのよ

「さあ、いただきましょう!ブエン・プロベッチョ!」と手を合わせて、さあ、パエリアを一口
頂いてみる。う〜ん、結構サフランの香りもあり、魚介類からおいしいスープが出て、美味しく
炊き上がっている。みんな少しお腹も空いていたので、一皿ペロリと食べてしまった。
しかし、スープも一緒に頂いているうち、お腹は一杯になる。

    ハーイ!マルタです  広大工学部の留学生です

  渡辺さんと3名で  根っから明るいアンヘレス  

渡辺さんはついこの間、ヨーロッパ数カ国を旅行されたので、そのお土産話にも花がさく。
丁度フランスで、爆破装置を一般客の荷物に混入して、警察犬がそれを捜すという訓練で
何処にその爆破装置を入れたか、分からなくなったというニュースが報道されていた最中の
彼女の旅行だったので、さぞかし大変だったろうと、話を聞く。
彼女の話では、丁度その時は日本に帰国した後だったらしく、間一髪という所だったようだ。
ただ、電動歯ブラシを持って行っていたのが、ひっかかって、荷物を散々開けて調べられたそうだ。
先ほどお腹一杯だったけれど、うだうだ話をしているうち、お腹も落ち着いて来た。
今度は私の焼いたチョコレートケーキを出すと、「甘いものは別腹!」とばかり、甘いチョコレート
のケーキは美味しい!美味しい!と言って、ペロリと皆食べてくれる。
後片付けを機械にまかせて、居間に移動して、今度はパラグライダーのビデオ鑑賞だ。
マルタはメキシコで3度ばかりタンデムフライトの経験があるらしい。
なんだかパラにとっても興味ありあそうだ。
ビデオを見ていると、今日もパラグライダーに出かけて行った主人が帰ってくる。
それではと、みんな腰をあげて、玄関に出がてら、お暇をという事になった。
今日はほんとに沢山食べて、沢山お話をして、とっても楽しい一日であった。
こんどはマルタが私のうちに来て頂戴と約束して、引き上げて行った。

山ほど作ってくれた、パエリアは私達では食べきれない。
さてさて、どうするかという事になり、パラ仲間の河原さん、いっちゃんの
お母さんも呼んで食べてもらう事にする。
今度は、今日のパラグライダーの話や、いっちゃん、直ちゃんが来て、再び我が家は
賑やかな居間となる。

こんな交流も楽しいものだな〜・・・。
あっという間の一日が暮れてしまった。
お鍋を見ると、まだ2〜3日分のパエリアが残っていた。