ホアンと稲垣夫婦のホームステイ日記

                                                   愛子 記

1110日(土曜日)『ir de viaje Kiyoto』
今朝ホアンは4時にドアーをノックしてくれたらしい。私は全く気が付かなかった。
携帯のアラームが4時半に鳴ったので、目が覚めた。
夕べ寝たのは2時半だった。ホアンは一晩中ずーと起きていたらしい。
近所の柳田タクシーさんに予約をしておいたので6時40分に迎えに来て下さる予定だ。
4時半に起きて身支度をする。
6時40分少し過ぎたがタクシー来ない。心配になり電話してみると、今出ましたと言われる。
皆で玄関に出て待つ。
「すみません、遅れましてー・・・」と丁重にご挨拶されるご主人。
柳田さんは去年ヒマラヤ登山に出かける時も朝早くお世話になった。

今朝はホアンもしゃきっとして、しっかり目を覚ましていてくれる。
新幹線・京都という事で少し興奮気味だ。何処へ行ってもグ〜グ〜寝るホアンに、
「寝ちゃダメよ!京都まで行くんだから、しっかり観なきゃー・・・」と言っておいた。

京都に着くとすぐ定期観光バスに乗るので朝食は駅の売店でお弁当を買う。

幹線線( Shinkansen)に初めて乗るホアン、心ウキウキ状態。
6時28分発の列車は既に駅構内に入っている。発車まで少し時間がある。
ホアンは列車の一番先端まで行って写真を撮るという。
主人も私も後を追いかけホアンを写真、デジカメに収める。
コロンビアのお母さんと話をするたびに、新幹線!新幹線!と言っていたので
これで、コロンビアの両親にも自慢出来る・・とうれしそう。

   ホアン始めての新幹線 (Shinkansen!)    Nos quedaba poco tiempo antes de la salida del tren

京都の駅に8時少し前に到着。ニュー都ホテルの所から定期観光バスが出る事になっている。
ホアンの為に英語のガイドが付くコースにした。
ホテルに行くと、正面玄関入り口に小さな机が置いてあり、係りの女性3人がいる。
観光客が迷う事のないよう事細かに説明してくれる。
その女性に私達の行く場所を聞くと、「あちらの方で聞いて下さい」とホテルフロントを
指差された。
そちらに聞くと、「ああ!それは、あそこで聞いて下さい」と、今尋ねた女性のところを指差される。
”どうなってるの?”といぶかりながら、またもと聞いた所へ戻り聞いてみる。
そこは英語でのガイドなので、外国人ばかりがやってくるものという先入観があり
そこへ私達が行ったものだから、彼女はてっきり普通の定期観光コースだと思ったらしい。
ホアンが英語で尋ねれば良かったのかな??

玄関の所でしばらくお待ち下さい・・・・との事だったので、ホアンと3人で5分程待っている。
ホアンと「スペイン語を話す人は少ないようね・・・」と言いながら、集まって来る外国人の
顔ぶれを見ていた。
ホアンが紫色のセーターを着た女性を見ながら、「あの人はたぶんラテン系だと
思うよ・・・・生粋のアメリカ人とちょと違う」等といろいろ観察眼を発揮。
しばらく待っていると、バス到着の案内が有り、玄関前に着いた大型バスに乗り込む。

案内して下さるガイドさんは日本人の様に見えるが、少しハーフのようなにも思える。
50歳半ばの方で、頭にはヘッドフォンのようなものを付け、口の所にはマイクが伸びている。
これで、いちいちマイクを手にする事なく、声も聞き取り安い。
彼女の英語は私達にとってもわかりやすく、ゆっくりと歯切れ良く丁寧に説明される。

バスは私達を入れて35人くらいの観光客を乗せて、最初の目的地、
東本願寺(Kyoto ImperialPalace)
に出発する。
ここは浄土真宗大谷派の大本山。親鸞聖人を祭る大師堂は927畳敷の大広間である。
また女性信者が寄進したという毛髪の太綱が大師堂と本堂を結ぶ廊下に展示されていて
ホアンは物珍しく、立ち止まってしばらく眺めていた。
説明してやると、今更ながらに女性の威力を感じた様である。
ガイドさんの説明される親鸞聖人の宗教感についても、ホアンは興味深く聞き入っていた。

   東本願寺 (Kyouto imperial palace    dentro de le templo

       

次に訪れたのは二条城(Ninomaru Place)
ここは世界文化遺産にも登録されており、徳川初代将軍家康が京都御所の守護と将軍上洛の
時の宿泊所として作られたお城だそうだ。
ここには、ホアンも不思議がる、”ウグイス張りの廊下”があり、観光客がこの床を踏みしめて
歩くと、まるで何百羽もの小鳥がさえずっているように、床が”キュッキュッ”と鳴るのである。
ホアンはこのさえずりを心地良いサウンドだと言っていた。
『大広間一の間』は1867年、15代将軍慶喜が諸大名を集め、大政奉還を発表し、徳川幕府の
幕を閉じた歴史的な部屋でもある。狩野探幽の襖絵にも息を呑む。

       

       

       

駆け足で庭園をぐるりと廻り、次に訪れる金閣寺(Kinkakuji・・・GoldenPavillion)へと急ぐ。 
この金閣寺は正式名鹿苑寺といわれる。お釈迦様のお骨を祀った舎利殿「金閣」が特に有名な為
”金閣寺”と呼ばれるのだそうだ。ここは臨済宗の禅寺で、1994年に世界文化遺産に登録されている。
ここはホアンが一番来たがった場所なので、鏡湖池にたたずむこの金色の建築物に圧倒されていた。
金閣寺の廻りをぐるり一週しながら、あちらこちらで写真を撮る。
この金閣寺で午前中に訪れる名所は終わる。午後からまた別の観光ツアーとなっている。

   la templo color de oro    写真で見ると美しい金閣寺  Kinkakuji

   fotografia tomada de frente    Juan con Padre y madre

       

お昼ご飯を頂く場所となっている『Kyoto Handicraft Center』に案内される。
ここは外国人向けにありとあらゆるお土産が各階にあり、扇・着物、浴衣類・剣や刀類・書・
彫金とにかく時間がいくらあっても足りないくらい私達が見ていても面白い。
ビュッフェ形式の食堂でお昼を頂く。
ホアンの好きな牛肉のメニューが無くて少しがっかり。
ビーフシチューと書いてある所から、お料理をお皿に盛って来て、お箸でミンチのような牛肉を
捜しまくっていた。

午後の定期観光バスはこの場所から2時に出る事になっている。
一時間位時間があったので、ホアンのご両親へのお土産にと、いろいろ見て廻った。
ついこの間、コロンビアからお母様が電話された時、浴衣の様な、膝くらいまでの着物で
お風呂あがりに着る花柄とかの模様の入った着物・・・・とホアンに言われていたのを
思い出し捜してみた。
ある!ある!日本人はあまり着ないので、その時はどんな物を言っておられたのか
ホアンから聞かれても分からなかったけれど、、言われていた通りの着物が
沢山沢山ハンガーに吊ってある。
ホアンに「この間コロンビアのお母さんが言っておられたのはこれよ!」と駆け寄る。
私が買おうとすると、ホアンはそれを察知して、その場から逃げようとする。
「次ぎ行こ!次ぎに行きましょ!」と言って、私に買わすまいとするホアンに
私はやさしい心遣いを感じ彼の気遣いにビックリする。
京都に一緒に来た事も彼はとても感謝していたが、これ以上私達に負担を掛けまいと思ったのだろう。
そんなやさしい気遣いの出来るホアンである。
売り場の若い男性店員さんがホアンを見て「どちらからですか?」と聞かれるので「コロンビアなんですよ」
と言うと、彼は半年間メキシコに留学していて、大学では4年間スペイン語を習ったと言われ
すぐにホアンと流暢なスペイン語でなにやら話を始められる。
後でホアンは私達に「びっくりした〜すごい、スペイン語じょうずー・・・」と目を白黒させていた。

2時近くなったので、下に降りて見た。そろそろ定期観光バスが来るはずだ。
1階フロアーには一緒にまわる人だろうか、何人かの外国人の方が座って待っておられる。
チケットを案内の人に見せて、午後からのバスに案内される。
「あ〜あ良かった、午前のガイドさんと同じだった」
午後からは『平安神宮・三十三間堂・清水寺』へと行く予定だ。

最初に訪れたのは三十三間堂(National Treasure SANJU-SANGEN-DO)である。
ここには1001体を数える千手観音立像があり、この観音様の並ぶ内陣の柱間が
33間あるところからこの名で知られている。
ホアンはこのおびただしい数の観音像を、ただただ黙って眺めていた。
長〜い弓矢が飾られており、ガイドさんの説明される、『通し矢』のことにも興味を示していた。
これは毎年1月15日に20歳の成人を祝して行われる行事である。

三十三間堂を後にして次に訪れたのは朱丹の色鮮やかな平安神宮(Heian Shrine)である。
平安神宮は明治28年に平安奠都1001年を祈念して建立されたそうで、京都市全体の氏神である。
ここは庭園が素晴らしいのだが、ゆっくりと散策する時間がなかった。
こばしりにお庭の一部を見て、バスに戻ったら、私達を捜しにガイドさんと入れ違いに
なってしまい、迷惑をかけてしまった。

       平安神宮

   Heianjingu    

   あれー!おかさん 何をする!!    

今日の最後の場所清水寺 ( KIYOMIZUDERA ) へとバスは向う。
丁度秋の紅葉のシーズンと重なり、清水寺へのバスは一寸ずり。全然進まない。
仕方なく、バスの運転手さん、所定の駐車場へ着く前に私達乗客を降ろし、
「歩いて行って下さい」と指示される。
帰りのバスの待合場所を聞いて、みなさんガイドさんに付いて清水寺に向う。
すでにたそがれ時だと言うのに、わんさの観光客で歩いても一寸ずり状態。

       清水寺

清水寺に向う途中前方を舞妓さんがしゃなりしゃなりと歩いている。
めざといホアンはさっと見つけ、「舞妓さんだ!」
舞妓さんは3人。きらびやかな着物に頭は綺麗に結ってあり、髪飾りが揺れている。
手には風呂敷づつみのようなものを抱え、お人魚さんのような顔。
写真を一緒に撮らせて下さいとお願いすると、喜んでホアンとカメラに納まってくれる。
たぶんこれは彼女達の仕事なのだろう。
観光客と一緒に道中を行ったり来たりしているのだ。ホアンはもう、うれしくて、デレデレ状態。
ここでも観光は駆け足状態。ゆっくり見ている暇がない。
急いでバスの待っている場所へと帰る。

   Maiko-san    

       abanico

これで今日の観光は終了した。今夜泊まる予定のホテルは皆さんそれぞれ違うので
ガイドさんは、ひとりひとりチェックして各ホテルを巡回する。
私達は西本願寺のまん前の旅館に予約していたので、一番近いホテル、リーガロイヤルで
降ろしてもらい、10分ほど歩く。
ホアンは地図もよくわかるので、旅館案内のパンフレットを見ながら、
大体の場所を説明しておいてやると、旅館の場所もすぐ見つけてくれた。

今夜は大阪から主人のおばさんにあたる方が尋ねて来られる予定になっている。
京都に行く事を連絡したら、7〜8年ぶりなので、『夜、旅館に尋ねて行きますから・・・』と言われていた。
清水寺で時間をくってしまったので、もう来られているかもしれない。
案の定、叔母さんは既に来られて、フロントにお土産をことづけて帰られていた。
もう一度、出変えて来ますとの事だったので、私達は部屋に入り、ひとまずくつろぐ事に。
30分位して、もう再び尋ねて来られた叔母さんと部屋で歓談する。
ホアンも話に加わり、日本の生活などを叔母さんに話している。

食事を終えて、旅館の方が、『”高台寺”がライトアップをしていてきれいですよ』
教えて下さったので、叔母さんを送りがてら、タクシーで、出かける事にした。
叔母さんと近くの駅でお別れをして、高台寺に向う。
タクシーの運転手さんは、「このところ観光客が、例のアメリカのテロの事や
沖縄観光を皆さん控えている事などから、ものすごく多い、車が動かないので嫌になりますよ」
とこぼしておられる。
京都へ来たら、だれも行かないような、穴場に行きなさい」と言って、高台寺へ行く途中の
5重の塔のような形の寺を通って見せて下さった。
塔が夜の闇にそびえて、なるほど見事な景観にであった。
ほどなく高台寺に着きタクシーを降りる。

ここ高台寺は豊臣秀吉没後、その菩提を弔う為、秀吉夫人の北政所(ねね)が1606年
開創したお寺である。
夜なので、人出は少ないかな?と思えば、そこはやっぱり京都、どこから聞きつけるのか
ここ高台寺は、夜も昼とおなじ位の人出である。
もみじや紅葉した沢山の木々がライトアップされ、それはそれは綺麗で、昼とは数倍もの風情が有る。
ことに寺の中に有る30m×50m位の池に映るライトアップされた木々は水面が鏡の様で
水の底深くまで吸い込まれそうで、これには圧倒された。
見た人が”まるで、竜宮城のおとぎ話の世界に行って来たみたい”と言われたそうだが
まさに静かな水面を見つめていると、暗い水の底は果てしなく、木々の赤や黄、緑が映り
幻想の世界であった。
ホアンも私達も当分の間、この池の側にたたずんでいた。
今日一番のハイライト、見どころであった。

タクシーを拾って再び「和泉屋旅館」に戻る。
時計は10時過ぎをさしている。
旅館に戻り、今日の疲れをとるべく、B1Fに有る大浴場に行く事にした。
時間も遅かったので、お風呂に入っている人は2〜3人だった。
部屋に戻ると既にお布団が3枚敷かれていて、ホアンも主人も横になっていた。
ホアンは興奮してか、今日行ったお寺のガイドさんの話や宗教について、主人と話ている。
ホアンはキリスト教のバイブルもイスラム教のバイブルも熟読していて、宗教に関して感心が高い。
ホアンも主人とよく感性、考えが似ていて、宗教信者ではない、自分独自の考えを持っている。
ホアンはクリスチャンで、小さい時からバイブルを読み、学校でもキリスト教に付いていつも
勉強するらしいが、まるまるキリスト教の信者ではないと言う。
「キリスト教のバイブルも素晴らしい事が沢山書いてあるけれども、最後まで読むとちょとおかしくなる」と
私達に説明する。それはハルマゲドン??とか言ったような、地球最後のような事柄に関して
説明のつかないような事が書かれているそうだから・・・。
こんな2人の会話を聞きながら、やがてそれは私には子守唄代わりになり、疲れも加わって
いつの程にか寝てしまった。
翌朝は8時に朝食を頼んだので、ホアンの時計のアラームを6時半にセットしてもらい
枕もとに置いて寝た。


       

1111日(日曜日)『嵐山 渡月橋へ』
ホアンのセットしてくれたアラームが”ピロピロッ、ピロピロッ”と6時半のコールをする。
眼が覚めた私は、先に朝風呂に行かせてもらう。
宗教談義が遅くまで続いたのだろう、2人共まだ良く寝ている。
20分程して、お風呂から戻ったが、まだ起きていない。
お化粧をして、身支度をする。主人jも眼が覚めて、お風呂へと行く。
やっぱりここでも、”起きないホアン”である。

今日は予定を別に設定していないので、嵐山方面に出かけてみようと思う。
紅葉がまさに見頃だろうし、”もみじ祭り”があるとパンフレットに書いてあった。
朝食の準備に仲居さんが、来られたので、ホアンを起すが起きてくれない。
ホアンを端っこに追いやって、朝食の支度を始めてもらう。
主人もお風呂から戻って来る。「ホアン、起きろ!」の声にようやく、眠い眼をこするホアン。
朝ご飯を済ませ、ホアンもひと風呂浴びにお風呂へと行く。
「嵐山も早く行かれないと、人が多いですよ・・・」と仲居さんも言われていた。
旅館に別れを告げ、京都駅へ向う。
自家用車も多いだろうから、京都駅から電車で行く事にした。

朝の京都駅は時間が9時ころで、まだごった返しているという感じではない。
新しくなったこの京都駅は、初めてだ。素晴らしい建築物だ。
ホアンのお母様はアーキテクチャーなので、この建物にはきっと興味をしめされるだろうと
時間を掛けて写真やビデオを撮った。
観光案内の本を見ると、この京都駅は平安建都1200年を記念して創造され、平成9年の秋に
オープンしたと書いてある。

ここは”駅”というだけでなく、デパートの伊勢丹ホテルのグランヴィア京都劇場シアター1200
美術館 ”えき”、さらに数々の専門店や公共サービス機関がある。
建築関係のほんのはしくれにいる主人は一体誰の設計によるものだろうか?と興味深々。
天にも続くかと思われる長い階段は171段あるそうだ。
疲れるので、エスカレーターで一気に上がる。
ガラスの屋根に囲まれた壮大な吹き抜けのコンコース。その上に掛かる空中経路は
パラグライダーをする主人やホアン、そして私にも何だか、高いというだけで、
嬉しい気分にさせてくれる。

       

       

上から下中央を見降ろすと、もう年末が近いからか、大きなクリスマスツリーが”デン!”と飾られて、
ステージがセットされて、楽団演奏、コーラス等と言った催し物、どんなパフォーマンスでも出来そうだ。
早速ホアンとうれしげにここに立ち、写真におさまった。

屋上に上がって眼下にひしめく京都の街を見下ろす。
屋上の一角に、この建築の説明碑が石に彫られており、国際的建築コンペにより選ばれた
『原 広司氏の作品』と刻まれていた。
主人・・・あ〜ぁ 広ちゃんか・・・・と言うので、「ぎょっ!知っとるん??」と聞くと
「いいや、知らん」だって!!。
ホアンもお母様の為にいろんな角度から写真を撮っていた。
だいぶここで時間を潰した。そろそろ嵐山へ向ってみよう。

       

       

                       

京都駅から電車で「亀山」行きに乗り、230円の区間だ。
20分程電車に揺られて、嵐山の駅に着く。ここで、どっと観光客が降りる。
トロッコ電車の切符を先に買って、近くを散策しようと思ったが、切符購入窓口は長蛇の列。
それじゃー!レンタル自転車を借りて、渡月橋まで行こうという事になり、レンタル自転車の
コーナーへ行くが、ここも自転車は1台も残っていない。
皆さん諦めて、徒歩で渡月橋まで行かれるようだ。
びっくりする程の距離ではないぞ・・・と主人も言うので、私達も景色を楽しみながら歩く事にした。

ぞろぞろと途切れる事なく、観光客の列は進む。
手荷物は駅のコインロッカーに入れたので、身軽だが、知らない所へ行くというのは
なんだか、遠距離に感じるものだ。天気も良く暑いくらいで、少し疲れてきた。
途中にはお庭のきれいな庭園等もあるので、苔むした日本の庭園をホアンに見せながら
退屈しないように歩いて行く。

       

嵐山は大堰川に架かる渡月橋を中心にして、嵐山公園が広がっている。
渡月橋は端から端まで人で埋め尽くされている。
良く時代劇などで、刀で切られた侍が”どぼ〜ん”としたの川に落ちて行くシーンがあるが
この橋がその舞台である。
「昔は全部木で作られていたのに、今はコンクリートになったんじゃのう!」と主人。
川の側に人だかりだ。後ろから背伸びして覗いて見ると、羽織、袴すがた、
頭には烏帽子をかぶり、古式豊かに、魚をさばく儀式が行われている。
まな板の上に鯉と思われる立派な魚。いっさい手を触れることなく、この魚をさばいていくのである。
さばかれた魚はうやうやしく、神様に供えられていく。
ここでは子舟の上で、雅楽演奏も有った様だ。
川もには何隻ものボートが漕ぎ出され観光客が楽しんでいる。
ホアンが『ボートに乗ろうよ!ホアン漕ぐじょうず・・・』と言う。
ホアンが真中に座り、前に主人、後ろに私。
ホアンじょうず!というので、コロンビアで経験豊富なのかと安心していたら
ホアンの漕ぐ櫂は、後ろの私めがけて、水しぶきを飛ばす。
「ホアン!冷たい!!止めて、静かに漕いで!」私はギャーギャー騒ぐ。
しばらくそ〜と漕いでくれているが、また力を入れて必死で漕ぎ始めるので
またしては、私めがけて、水しぶきが飛んで来る。
沢山のボートが水面に遊んでいるので、時にはゴッチンゴッチン他のボートと衝突してしまう。
一時間が貸切時間なので、そろそろ岸まで帰らなければ・・・。

私のズボンはびちゃびちゃだ。ついにホアンのセーターを膝にかけて、水しぶきをよける。
最後にはもう辛抱しきれなくなり、主人の方へ移動する。
鼻先の方へ2人が乗っているので、ボートに水が入りそうなほど、沈んでいるようである。
上流でカヤックの練習をしている人たちが下って来て、「異常に沈んでいますよ〜!!」と言われる。
からかわれていたのだ・・・と思って、そのままで岸までたどり着くと、
係員の人にも、「そんな乗り方をすると危ないですよ!」と注意されてしまった。

   いか焼をほうばるホアン    ハイ おとさんおかさん笑って〜!!

   ホアンを置いてかないで〜!!    フフフ・・・舞妓さんにうっとり・・・

お昼時間はとっくに過ぎてしまっている。お店を散策しながら、嵐山駅へひとまず帰る事にした。
途中手書き友禅のお店を100円で特別公開しているというので、見せてもらう。
これにはおまけがついていた。100円払って見る人だけに、お店の前に出されて長椅子に座っている
お人形さんの様な可愛い舞妓さんと写真に収まる事が出来るのだそうだ。
ホアンも写真を撮ってやる事にした。ここでもホアンはうれしそう!!

嵐山駅に着き、もう一度トロッコ電車はどうなだろう?と駅員さんに聞くと、
とてもとても、乗れる状態ではないそうだ。
時間も中途半端になってしまったので、諦めてとりあえず京都駅まで帰る事にした。
少しお腹も空いて来た。帰りの切符を買って、地下街で八ツ橋等のお土産を買うことにする。

ホアンもお腹空いた様子なので、地下街レストランで食事する。
食べ終えて、京都はなんと言ってもお漬物。2人を待たせておいて、お土産にと漬物を買いに走る。
とは言っても、主人はあまりこの京都の漬物は好きではない。
私の漬ける”ぼろ雑巾の様な少し酢っぱい白菜漬けだけが漬物!と思っている。
悪い事に最近はホアンまでが、この白菜漬けフアンになってしまって、2人が争うように食べている。
私は甘党なので、千枚漬けなどは好きだが・・・・。

京都駅を6時40分発の新幹線だ。
嵐山で歩き疲れたので、兎に角座って帰りたかったという主人、岡山駅までのが座席指定が取れたらしい。
後は岡山で乗り換えて、多分自由席で充分座れるだろう、広島止まり新幹線に乗り換え帰る事に。

ホアンも行き帰り新幹線でやっぱり興奮気味。
訪れるところもあこがれの”京都”という事で、始終元気良く、楽しんでくれた。
私達もおそらくホアンの帰る2月はじめまで、ホアンとの長旅はこれが最後だろうという
気持ちでこの旅行を惜しみつつ楽しんできた。
ホアンが喜んでくれた事が私達には一番うれしい事であった。

家に帰って夕食をしなければならないが、横着をして、近くのいつものスーパー銭湯に行く事にした。
ついに主人も寄る年波か??銭湯にある”あんまさん”を予約していた。
あんま!というと興味をしめすホアンなので、「さっきやってもらったのをホアンにしてやる!」と
言いながら、家に帰ると、ホアンを絨毯の上に寝転がらせ、足をくの字に折り曲がらせて、腰のあたりを
ぎゅうぎゅうとおしまくると、ホアンは”痛い!痛い!”と言いながらぎゃーぎゃー悲鳴をあげていた。

さあ、あすはまた学校だ。早く寝ろ!と主人に言われて、今日は大人しく2階にあがっていくホアンであった。

1117日(土曜日)
明日はいよいよ、スピーチコンテストの日だ。
夜主人と私を前にして、暗記した自分のスピーチをやってみた。
100%覚えていたようだが、所々後から直した個所が少し不安だ。
主人が先に休んだが、神経質なところのあるホアンは、寝られないようだ。
私がもう一度やってみなさい、とやらせてみる。
表情豊かに、手をかざし、パフォーマンス豊かにやってのけるホアンに私は笑い転げる。
私ひとりがこんなに楽しませてもらう事が惜しい気がする。

あまり遅くなっては、寝不足は記憶力を妨げる。
「ホアンもう寝ましょ!」と1時ようやくホアンも2階に上がって行く

   僕コロンビア帰りたい!!なんちゃって!(pronunciar de paz    あ〜ぁ! ごまかしもきかないな〜・・・・。(saber alogo de memoria)

   身体髪膚 之を父母に受く!・・・この言葉好きね〜!(Juan tiene buena memoria)    「起!承!転!結!」でやれ!!

118日(日曜日)『Extraordinaria!!
『Cano el primer premio al mejor discurso en Japones!』
さて今日はホアン、ナーバス!ナーバス!のスピーチコンテスト当日だ!
コスタリカの友達エリックも応援に来てくれる。広島駅で9時半に待ち合わせた。

8時にホアンを起こし、朝ご飯を済ませ、いつもように、シャワーを浴びにお風呂へ。
夕べ、「明日は学生服着るの?」と聞くと、「だいじょうぶ!だいじょうぶ!」と
何でもいい・・・と言っていたので、適当にホアンの着替えをお風呂場に置いておく。
9時には家を出なければならない。主人はいつもと変らずパラへ行くと言っている。

夕べ、主人はホアンを呼んで、「おとさんは明日はホアンのスピーチ見に行かないぞ。
わしは自分の息子の時も、こんな風な時は、絶対行かない主義だった。
男は自分一人で戦って来るものだ。負けても勝っても男だったらいさぎよくするもの。
負けたからと言って、おとさんは”よしよし”は絶対しない!だからホアン自信をもって
やって来い!」とホアンに言い聞かせていた。
これはコロンビアと日本では考え方はもしかしたら少し違うかもしれないが・・・。
主人は自分の考えを通した。

エリックを待たせては可愛そうなので、9時過ぎ家を出、駅へ急ぐ。
駅前でホアンがエリックを見つけ、柵を越えて2人が走って来る。
エリックはホームステイ先のお姉さんと一緒に広島に出て来た。
ホアンのスピーチを応援してくれる。
会場となっている平和公園近くの広島工業大学広島校舎に急ぐ。
開始時刻は10時30分。少し早かったので、川べりでホアンにもう一度スピーチを練習させる。
しばらくすると、ラトビアのアグネッセとホストファミリーの伊藤さん一家が来られる。
ホアンと同じクラスで、既に夏休みの始めにアメリカに帰ったジョーのホストマザーも来られる。
しばらく立ち話をして、そろそろ会場に入る。
ホアン達出場者は4階に、私たち視聴者は5階へと案内される。

   アグネッセとホストファミリー。 Agnese y familia     エリックとジョーのホストマザーと Erick y familia de Jhoe

ホアンのクラスの友達も何人か来てくれる事になっている。
出来るだけ多くの応援があったほうがホアンも勢がいいので、由也君が呼びかけてくれた。
あいにく英検のテストと重なったりして、クラス全員!とまでいかなかった。

LPのNさんも来られた。ご挨拶すると、いつもホアンの事でやきもき、いらいら
心配の掛けっぱなしで、今日もどうなる事かと、内心心配されている様子。
ホアンはいつもぎりぎりまで何にもしない子で、平和教育の作文の時も
今回のスピーチの原稿提出も、締め切り当日まで書かないで、私たちをやきもきさせた。
今日のスピーチも、原稿を少しNさんに修正して頂いたが、際まで覚えようとしなかった。
2日前になって、ようやく腰を上げ、その気になりだした。
前日の土曜日に、覚えたスピーチを学校へ持って行って皆に聞いてもらうんだ!」と言いながら
ちゃっかり、その原稿を忘れて行って、結局友達に聞いてもらえなかった。
「僕、スピーチだめだったらかまわない!5万円は欲しいけど、いい!」
なんて、最後には少し諦めムードのホアンであった。
開始少し前に、由也君やクラスメートが来てくれた。
わ〜!!沢山来てくれた。
由也、越、泉、おーちゃん、もっとん、ほりケン、いたけ、なつき、れいな、
むんちょ・・
と由也が来てくれている人の名前[通称)を書いてくれる。みんな 有難う!!!

さあ、10時半定刻にスピーチコンテストは始まった。
出場者が皆さんの座席の間をとおり檀場へと進む。
皆さんそれぞれ制服、大学生はネクタイ、背広姿としゃきっとしている・・・なのにホアンだけだ。
ああ〜ぁ、あのだぼだぼジャケット姿に、よれよれズボン!ずんだらだーの格好だ!
あーあしまった!・・・がもう遅い!
司会者の開始の放送に続き、ヒロシマ・ピース・センター理事の上野信子氏のご挨拶に続き
早速スピーチの開始だ。
今日は11名の参加者があるが、一名が都合で参加出来ないので10名のエントリーだ。
ホアンは2番目。

   ホアンと出場者達 participante    アグネッセとポークーンも participante


   ふぅ〜・・・・・僕、帰りた〜い!・・・。Ahora jo toco a ti hablar!    由也 後部座席ではLPの方も心配そう・・・  auditorio

   ホアン頑張って! おーちゃん・なつ来・レイナ companerode clase    越・いたけ・むんちょ・掘ケン ホアン落ち着いて!がんばれ!!companero de clase

この弁論大会の参加者はホアンのようなAFSの留学生の他、広島大学、広島経済大学の学生
市内女子高(比治山女子、鈴峯女子、広島女学院高校)等からのエントリーだ。
昨年は一位・二位・三位をAFS留学生が独占したそうである。
最初の広島工業大学に通っている、中国の丁さんに続いて、いよいよ2番目ホアンである。
司会者が「エントリーNO2 ”心の平和” ホアン・ペドロ・メンドーサ君 コロンビア!」と紹介されると
少しこころもとない顔のホアン、演壇に進む。
「身体髪膚 之を父母に受く 敢えて毀傷せざるは孝の始めなり!!」と冒頭に持って来て
ホアンのスピーチは始まった。
夕べ、手を振り上げて、パフォーマンス豊かにスピーチしたホアンだったが、
パフォーマンスは少ししぼんでいる。だいぶナーバスになっている。
でもまな板の上の鯉だ!やらなければならない!
ホアンは原稿を書いて暗記はしたが、まる暗記!ではない。
ホアンの考えで、言葉で書いて、覚えているので少々忘れても、つかえても大丈夫。
とっさの対応は出来る。
主人はホアンのスピーチに際し、「起・承・転・結」で文章を作れ!それがはっきりしていれば
大丈夫だ!とアドバイスした。
頭のいいホアンはしっかりとそれを理解して、ホアンの頭で平和について考えた。
原稿用紙2枚なので、正味6〜7分位のスピーチ時間だ。

ホアンは時には広島弁をスピーチの中に入れて会場の笑いをとっていた。
『日本に来た時、僕はとってもコロンビア帰りたかった。日本とコロンビアでは習慣も違う。
コロンビアでは毎日友達と会い、沢山しゃべる。
でも、日本ではいっつも、いっつも勉強せんといけん!それのせいで、帰りたかった。
でも僕は考えた。今コロンビア帰ったら、僕の目標は達成出来ん!
自分に言った。ホアンがんばて、がんばて友達作りましょ!。そして僕の心は幸せになった」と。

そして、今世界を騒がせている、アメリカとアフガニスタンの戦争の事。
ビンラディンの事等をスピーチに入れ、
「まず、私たちの廻りから平和を考えましょう、少しづつ何かが変り始めるでしょう・・・」と締めくくり、
ホアンのスピーチは終わった。
会場の拍手がいちだんと大きいように(私はひいきめですが・・・・・)思えた。

   身体髪膚之を父母に受く、敢えて毀傷せざるは孝の始めなり・・・・ Juan toco paz de corazon    平和!まず、私達の身近に出来る事から始めましょう・・・Preima \50,000。

   日本人と同じ位流暢な日本語!マレーシア ポークーン Po Koon Ng    ラトビア アグネッセ  「火を消せるのは水だけ・・・・」 Agnrsr Kleina

席に戻ったホアン、やれやれという表情だ。後はリラックスして聞いていればいい。
マレーシアのポークーンは8番目、『本当の平和』 ラトビアのアグネッセは最後”とり”である。
『火を消せるのは水だけ』という題だ。
一時間でほぼ予定通りスピーチわ滞り無く終わる。後はジャッジメントの結果を待つばかり。
結果が出るまで、弦楽四重奏ミニコンサートを聞く。
ホアンは会場の私たちのところに戻り、いつもの様に冗談が飛び出した。

12時20分、さあ!結果発表だ。エントリー者はもう一度檀場にあがる。
上野理事から今日の総評。
現代の問題を身近に感じ、それぞれが深刻に考えている。日本語が素晴らしく上手である
とくにマレーシアの方はどうしたらこんなふうになるのかと思う位上手ですとポークーンの日本語の
旨さを褒め称えられた。この弁論大会は暗記が第一条件の様だ。
ホアンは朝出かける時、ノートは持って出たけれども、会場に持っては行かなかった。
「僕はノートを持った時点でコンフィデンスが無くなる。だから僕はノートを持たなかった」と
後から私に言っていた。

総評に続きいよいよ、3位から発表だ。3位はマレーシア ポークンと後2名。
2位はアグネッセと他一名。ここまで発表されて、私は内心、ホアンはもらった!と思った。
いよいよ一位発表だ!
『第一位!”心の平和” ホアン・ペドロ・メンドーサ!君”』それを聞いた瞬間、会場の
ホアンのクラスメートからどよめきと大歓声が上がる。
”拍手、ウォ〜!!”私も思わずデジカメを持った手が震え、わ〜い!ホアン!!と叫んでいた。
中央に進み出たホアンもガッツポーズだ。
表彰状と大きな大きな額に入った物を渡されている。
しばらくその興奮はおさまらなかった。
すべての表彰が終り、額を持ったホアンが私たちのところへ戻って来ると、再びクラスメートからの
祝福を受けるホアン。
私もLPのNさんと手を取り合って喜びを分かち合う。
いつもケセラセラのホアンにNさんもハラハラ、ドキドキ。それでもいつも心配して下さり
忙しい中、ホアンのために学校に来て下さっては、日本語を指導下さる。
労がホアンによって報われて、感無量の私達。
ホアンを真中に皆で写真を撮る。

   みなさん ほんとに日本語すばらしいです・・・。decir la impresion    第3位 ポークーン! tercero!!

   第2位 アグネッセ! Segundo!    やった!!僕やったよ!! !Arriba!!

   僕 夢みたい!!ganar la escudo    ふふふ・・・うれしいなぁ〜5万円!!no caber en si de gozo de alegria

ホアンはおとさんに早く言いたい!とフロアーに出て、携帯で主人に電話を掛けているが出ない。
おとさん、飛んでるのか??と言って、しばらく、携帯が繋がるのを待っていた。
2Fのホールでは懇親・交流会で、既に皆さんそちらに移動され、ホアンが来るのを
待っていて下さった。
「一言挨拶を!」と司会者の方に言われ、中央マイクに進み出たホアン、
『「起・承・転・結」 おとさんのお陰です。』とホアンはひとことだけ言った。
そのホアンの気持ちは何にも増して私には有りがたく、ホアンの思いやりがうれしかった。
こんなにも沢山のクラスメート達に囲まれて祝福されるホアンは本当に幸せな子だ。
ホアンのお陰でこんなに嬉しい思いをさせてもらっている事に改めて感謝する。

   ホアンおめでとう!!泉・おーちゃん・堀っぺ !Arriba!    おかさん やったよ!! Papy y Mamy allegria!

今日はこれから神の倉に急いでいかなければならない。
ホアンにとって、今日はパラグライダー初飛びの日になるかもしれない。
会場でクラスメートのみなさんと別れ、一緒に来るという”れいな”を伴い、家へと急ぐ。

        


   『平和』が世界の言葉で書いてあるよ・・・ Paz la mundo    僕が一番欲しかったのはこれこれ!5万円だ!! \50,000

   primer premio    ホアン よくやった!おっす! Juan y padre




喜び一杯のクラスメート、LPさんと私。Felicidades!  翌日の新聞の一面に載ったホアン。articulo en primera plana

   広島版にも詳しく掲載。version de un periodico    コロンビアの留学生ホアン・ペドロ・メンドーサは・・・primera plana

ランディング場へついたのは、既に夕方の3時半頃だ。
イントラの山本さんも丁度、荒槙牧場から帰って来られたところだった。
早速、ホアンのタンデムの為にテイクオフ場に上がる。
風も北斜面に入っている。
すぐに支度をして、ふたりは飛び出した。
もう一度上がって来て、また山本さんが飛ばれた後でホアンの初フライトの予定である。
日が早く暮れてしまうので、今日はホアンは飛べないかもしれない。
すぐに2人は上がって来たが、風は少しフォロー気味。
どうも今日は無理をして飛ばない方が良さそうだ。
ホアンは初フライトを期待して、心ははやっているようだ。
山本さんは飛んででられたが、ホアンが初フライトとして飛ぶには、あまり嬉しい状況ではない。
主人は跳びたがるホアンをなだめすかして、今週末コンペティションの後で飛ぼうという事になった。

ホアンとれいなは夜は国際ホールであるライブコンサートに行く予定になっている。
広島駅で由也と待ち合わせをしているので、2人を急いで送って行く。
今日ホアンにとってはいろいろな事が沢山有った日だった。
なんと言ってもスピーチコンテスト優勝はホアンの忘れられない思い出と成るだろう。

   日が暮れてきたから、飛べないかもしれんぞー!Mi amiga Reina    今日はタンデムフライトだけで我慢しろ!volar!

夕方コンサートに出かけたホアンは夜遅くまで帰って来なかった。

1119日(月曜日)『ホアン学校休む、友達我が家に来る
夕べホアンは楽しいコンサートから12時過ぎに戻る。
ホアンが戻り、昨日のホアンのタンデムフライトのビデオを見る。
今日は早朝、しし座流星群を見に行く予定だ。
出来るだけ星に近い所をと、主人はパラ仲間に尋ねると、いつも飛ぶ荒谷山が良い!と
聞いたらしい。
一番沢山流星の見られる時間帯は早朝2時半から3時頃だそうだ。
3人はごそごそと支度をして2時に家を出る。
ホアンも寒くないようにとジャケットのごついのを着る。
私もホッカイロを5ケ位持って出かける。
ホアンはスピーチコンテストで一位になった興奮がまださめやらない。
車の中で、一日の事を振り返りながら、喜びを語る。
3人の言葉が途切れた時、ホアンが唐突に、「おとさん、きょう ありがとうござました・・」
感謝の言葉をしみじみと口に出す。
私達もそれを聞いて、心から改めて嬉しくなった。
こんなふうに感謝の言葉が素直に言える、ホアンの人柄に見魅せられる。

”起承転結、と身体髪膚・・・・・”主人は「わしの戦略勝ちじゃ!!」とのたまっている。
なるほど、主人は文章はいちいちチェックはしなかったが、それだけをホアンにアドバイスし、
主人の言わんとする事を、きっちりと受け止めて、スピーチを仕上げたホアン。
スピーチの2日前からようやく本気になりだしたホアンは、「もういい、僕一位になれなくて・・
皆は一ヶ月も前からスピーチを覚える事に時間を費やしたんだ、僕は何もやってない・・・」
とほぼ諦め状態のホアンだった。
とても自分では一位になれるとは思ってなかったようだ。
それだけに、あらためて、主人には感謝しているホアンである。

いつも来るパラグライダーのエリア荒谷山に再び、やって来た。
だれも居ないかと思いきや、わいわいがやがや先客万来だ。
広大のメンバーはパラから帰らずにそのまま、蒲団をかかえてやって来ている。
すでに寝っころがって、星が降る度に”うあ〜!!すごい、きれい!!”と歓声があがる。
夜露で冷たいので、パラで使う厚いシートを出して来る。
みなさんそれに座る。ホアンも私もしばらくすわって見ていたが、だんだん首がだるくなってきた。
寝っころがるのが一番楽よ!とだれか言っている。
ホアンにホッカイロを、腰と御腹に貼ってやる。寒さには弱いホアン口をがたがた震わせている。
コンサートの後、夕飯を食べていなかったので、コンビニ弁当を買って来たホアン、
食べながら流星を楽しむ。

しし座を中心に放射状に星が飛ぶと聞いたが、結構あっちこっちで星が飛ぶ。
光のシャワーが夜空を横切る度に、みなさんから歓声と拍手が起こる。
ホアンも”お〜ぅ・・・・”とため息をついている。
2時半ころからどの位たったろうか?時計を見ると4時頃だ。
降る星の数も多少少なくなったかな?と思う。
後ろの方で、地元の方だろうか?6〜7人の方が輪になり焚き火をしておられる。
主人はずっとそこで話をしている。私も寒いので火の側に行かせてもらう。
佐久間さんが星座の事にお詳しいのか、あれが北斗七星、あれが、おうし座、
あれが冬の大三角形と言います・・・といろいろ教えて下さる。
ご自分でもホームページを持っておられるとか・・・いろいろ主人も興味深く話を聞いている。

そろそろ帰ろうとホアンの所へ呼びに行くと、ホアンは寒いので、小さくなってすやすや寝ている。
「ホアン!ホアン!風邪引くから帰りましょう!!」と起す。
しまった!風邪をひかせたかな?鼻ジュージュー言わせている。
「僕これと寝た!」とホッカイロの事を言っている。気持ち良かったらしい。
帰って少しでも寝ないと!!
もう5時前だ、私は居間のこたつに滑り込む。主人は蒲団に入った。
ホアンはいまから寝せると、絶対朝は起きられない。
「ちょっと、しつれいしまーす」と上に上がって行った。
降りて来ないので、ホアンの部屋に行って見ると、もうそのままの姿で寝てしまっていた。
「あ〜ぁ、今日は仕方無い、学校休ませよう・・・」
夕べはスピーチの練習を2時頃までやったし、こうして流星を見て、ホアンも寝不足状態だ。

私は目が覚めたのは6時半頃。
会社にでなければならないが、ホアンはとても起きないだろう。
由也君にメールで「ゴメン、ホアン今朝5時に寝た。学校休む・・・」と伝える。
由也君達もれいなちゃんやなつ来ちゃん達と安芸府まで行き流星を見たそうだ。
「きれいだった・・・」と感激の様子。

今日学校を休んだホアン、スピーチコンテスト優勝の明くる日だけに、みなさんがっかり
なさったろう・・と一日考えていた。
夕方4時ころ、由也君から携帯に電話入る。
「おばちゃん、今からホアンちへ行っていい?」「今から??いいけど・・」
「おばちゃんの手料理食べたい・・」と言う。
「それは嬉しいけど、何人来る?」 「僕と、なつ来、れいな、3人」
ヒャー大変、帰って支度しなくっちゃ〜!!
仕事を済ませて、少し買い物をし、家に急ぐ。

一日よく寝たのだろう、すっきりした顔のホアンが玄関に出て来る。
「ホアン大変大変!今から皆んな来るって!!」
「夕食の準備手伝うのよ!」とホアンをせきたて、台所に立つ。
手料理と言われてもね・・・・と、とりあえず、私の唯一自慢出来る、オーストラリアンスープを作る事にする。
ジャガイモの皮をむいて・・・ネギをこうして切って・・・ベーコンもこんなふうにね・・・
このスープも前にホアンには作らせた事があるので、ところどころ聞きながら、段取り良く作っている。
私は食卓の準備をする。後はお肉でも焼いて出そう!

台所でホアンと奮闘していると、玄関で声がする。
私が走って出て見ると、由也を先頭に、れいな、なつ来、そして?もうひとり・・・・彼女は初めての女の子。
彼女は私と同じ”愛”ちゃん。我が家のすぐ近くらしい。
そう言えば安芸府の子がネイバーに居る、居る!と言っていたのは彼女の事だったようだ。
みんな「おじゃましま〜す・・・おじゃましま〜す・・・」
ホアンは皆さんが来られたのが気が付かず、台所でクッキング中。
「ホアン!ホアン!皆さん来られたわよ!」と言うと、にこにこっとしながらホアンも皆さんの所へ。

夕食の準備が出来るまで、私の撮った、昨日のスピーチのビデオを見る。
ホアンが優勝する瞬間は、みんな昨日と同じ様に緊張して見ている。
「第一位、心の平和!」と聞くと、もう一度皆でわーわー言って拍手をしている。
ホアンってほんとに皆さんに愛されているんだな・・・と感じる。
食卓の準備も出来たので、皆さん席に付いてもらう。
少しだけね!とワインでホアンの優勝を祝して乾杯をする。
後は皆さんにお任せで、「私は後でおとさん帰られてから一緒に食べるから・・・」と
主婦業に専念。
シチューもお代わりしてくれて、作った分、全部売り切れた。
なぜか、こんな若者でも。やはり日本人かぁ??我が家のホアンも好きなお漬物を
熱いご飯で食べてくれる。

ほぼ、お腹も落ち着いて来た様だ。
流しにお皿やお茶碗を運んでくれる。「おばちゃん、美味しかったよ、ありがとう!」と
ほんとに可愛い子供達だ!
「皆さん”おこた”でくつろいでてね。ケーキがあるから後で頂きましょう!」
それぞれに思い思いの時間をくつろいでいる。

居てくれるのはとても嬉しいが、あまり遅くなってもおうちで心配されるので
皆さんを送って行く事にした。
まず、近くの愛ちゃん、そして安芸府の近くに自転車を置いている由也君、同じく安芸府の
近くに一人住まいしているなつ来ちゃん、そして、海田の駅に自転車を置いている、れいなちゃん。
一時間ほどぐるりと送り届けて、ホアンも待っているので家に急ぐ。
家に帰るとホアンと主人が、どこまで行った?と遅い私の帰りを待っていた。
実はれいなちゃんを送っていったのはいいが、彼女も裏道を通ったらさっぱりわからず
方向音痴の2人が道に迷ってしまったのだ。
途中由也君がちゃんと帰ったかどうか、心配してくれて電話を入れてくれて安心した。
こうして、あわただしい私の夕方が終わった。