スーちゃんと稲垣夫婦のホームステイ日記

                                              愛子 記

2008年 10月
10月4日(土曜日) 江田島での二日間の研修。
昨夜、朝10時駅前集合とのLPさんからの連絡で今朝はゆっくりと起床のスーちゃん。
一泊どまりの江田島での研修なので、小さなスーツケースに荷物を詰め込んで降りてきた。
主人は今朝早々にパラグライダーに出かけ、私はスーちゃんとゆっくり朝ごはんを食べる。
10時だと思ってゆっくりしていたら、アッという間に時間が過ぎたようで、ばたばたと玄関を出て行くスーちゃんに
時計を見ると、9時半近くになっている。ひょっとして間に合わないかも・・・と心配になり、バス停まで車で送ってやる。
「いいなあ!」と言いながら、嬉しそうに車に乗り込みレッツゴー。
今日と明日の二日間は、スーちゃんにとってはもったいない二日間のようだ。というのも、月曜日から瀬戸内高校では試験がある。
スーちゃんも同じように試験を受けなければならない。
数学や、世界史、日本史など特別の時間をとって先生方が試験に備えて教えて下さっているようだ。
完全主義、良い子!!のスーちゃんは先生の期待に添うべく猛烈に暗記する。
その代わり試験が終わると、頭の中は空っぽだそうだ。
スーちゃんの暗記のやり方は、とにかく何度も何度も呪文のごとく繰り返し言って、そして紙に書いて覚える。
一度頭に入ると、すらすらと口を付いて出てくる。なんとも不思議な脳みその構造をしている。

夕方日本語クラスとスペイン語学習を終えて帰宅してみると、なんと玄関には大きな靴が所狭しと脱いである。
居間では主人のパラ仲間の方が数名にぎやかに雑談。
昨日から東京から来られたパラのインストラクターの方の勉強会があり主人も参加。今夜は我家泊のようだ。
やれやれスーちゃんが居なくて良かった。
10月5日(日曜日) 江田島での二日間の研修
10月7日はスーちゃんの18歳の誕生日。
スリランカでは18歳になると大人のすべての権限が与えられ、結婚、運転免許、選挙権、
社会に出て働く事、そして酒、タバコも自由にたしなむことが出来るそうだ。
スーちゃんのクラスメートを我家に招いて誕生会をしてやりたいと思っていた。
ところが、来週から高校では試験週間で月曜日から金曜日まで毎日試験だそうだ。
日曜日がいいなぁと思っていたが、昨日,今日とAFSの江田島研修で居ない。
そして、私も稽古事で7日と10日がつぶれる。結局スーちゃんと相談した結果、6日の月曜日にすることにした。
試験が午前中で終わるので、お昼を兼ねたバースデーパーティにし、皆さんに来てもらおうと計画。
先週からスーちゃんがクラスメートに声を掛けてきた。5人位が誕生会に来てくれるらしい。
大体材料の見当がついたので、今日のうちに材料を買って準備をする。
夕方になればスーちゃんが江田島から戻ってくるし・・・・。

昨夜我家に泊まったパラグライダーの面々、今朝はエリアに10時に集合との事でゆっくりされている。
昨夜は遅くまでパソコンをつついたりしてずいぶん遅くまで起きておられたようで、私はさっさと11時頃には休ませてもらった。
朝はコンビニでおにぎりでも買うからとの主人の言葉でなので、ご飯も炊いてないし、朝食の準備もしていない。
朝から雲がびっしりはり、天気が思わしくないので、みなさんのゆっくりされている。
さて、困った。何か朝食を準備しなければ・・・。そうだ、スーちゃんの誕生会で使おうと思っていたフランスパンが2本ある。
輪切りにし、バターやチーズを付け焼いたり、いろいろトッピングを変えて出しておいた。
コーヒーと簡単な朝食をとられて、ようやく9時半過ぎ腰を上げて皆さん出かけて行かれた。
やれやれこれでようやく明日の準備に取り掛かれる。

昼過ぎ近くのスーパーに買い物に出かけようと思ったら、外は雨。けっこう降っている。
スーちゃんは雨に濡れて帰ってくるかなぁ・・・。
明日の食事の下準備をしているあいだじゅう雨は止まず、本降り状態となってきた。そうこうしていると、主人帰宅。
「スーちゃんはまだか?」と言う。「迎えに来て」って電話するかしらねーと話していると、もう暗くなって電話のベルがなる。
「おかあさん、スーちゃんです。今駅です。今からバスに乗りますから、傘がないので、バス停までお願いします」と電話有り。
「はい、わかりましたよ。じゃあ30分位あとでね」と電話を切る。
雨だし、バスに乗っても時間がかかるだろうと、充分時間をとって迎えに出たが、
バスが2回留まったが、スーちゃんは降りてこない。
ものの5分くらいで帰れるだろうと、お鍋の火をいちばん小さいのにしてきた。
携帯も免許証も持ってきていないので、主人に連絡のしようもない。
これではお鍋が焦げちゃう!。心配になり、一度引き返して火を消し、もう一度バス停へ。
それでも20分位待つ。ようやく来たバスから降りてきた。
「おかあさん、ありがとう!」と乗り込んできたスーちゃん、「バスを乗り間違えちゃった!」という。
いつものバス停で乗ったのに、いくら外を見ても、いつもの風景とは違う。
瀬戸内高校も無い!!これは違うバスだ!!と思いすぐ降りたという。
そして小雨の降る中、不安な気持ちでスーツケースをひきずりながら、コトコト歩いて、ようやく見覚えのある駅前の橋が見え、
やっといつものバスに乗り帰って来たと言う。どうりで、時間がかかりすぎたはずだ。
スーちゃんはあれだけ日本語が上手なのに、運転手さんに聞けばいいものを・・・。
多分途中の経由地が違うだけで、降りなくても帰れたはずなのに・・・・。
随分疲れた様子なので、早めに夕食にして、休むように言う。
ところで、10月7日はスーちゃんの誕生日だ。今日LP沖田さんから、お誕生祝いを沢山頂いて帰り大喜びのスーちゃん。
素敵なプレゼントに疲れも吹っ飛んだようだ。

可愛い下駄、そして”スガンディ”の名前入りスタンプ。
そしてきっとスリランカに帰ってもこれを見ると忘れないだろうと思うのだが、紫式部によって書かれた源氏物語が
一千年目にあたる今年を記念して出された切手シートだ。
日本大好き、着物大好きのスーちゃんにとって宝物となるだろう。
日本語がもっと上手になったら、ぜひともこの「源氏物語」を読んでほしいものである。
沢山の嬉しいプレゼントを頂いて、これもスーちゃんの可愛い人柄だろう。

さすが疲れたのか、夕ご飯の後はさっさとお風呂に入り寝てしまった。
10月6日(月曜日) スーちゃん18歳誕生日を祝う
10月7日はスーちゃんの18歳の誕生日。
今日はクラスメートを招待し、我家で誕生パーティをすることになった。
今朝はいつもように2教科の試験があるので元気に登校して行った。
出掛けに、「スーちゃんなるべく遅く帰っておいでね」と伝える。
11時半に試験は終わり下校するらしい。まっすぐ帰ってくるとすれば、12時過ぎ位だろう。
お料理が冷めてはと思い、12時過ぎ頃からチーズケーキやピザを焼いたりしようと思う。
スーちゃんがスリランカ料理を作るので、相性の良いタイ米でターメリックライスを炊く。
スリランカのお母さんが送ってこられたターメリックという粉を入れると、真黄色の香りの良いご飯が炊き上がった。
大体の時間を見計らってピザを焼き始める。12時過ぎ「ただいまぁ〜!」と玄関で声がする。ところが、スーちゃんひとりだ!
「どうしたの?みなさんは?」 「おかあさん、みんなね夕方来るって!」と言う。
「どうして?」と聞いても 「わからん」と広島弁も板についたスーちゃんの返事なのだが、どうもはっきりした事がわからない。
お昼を食べて頂く様にお母さん待ってるって言わなかったの?とスーちゃんに言ったが、うまく伝わっていなかったのだろう。
少し拍子抜けした私は、スーちゃんとお昼ご飯を食べる。

もしかしたら、皆さんスーちゃんの誕生祝のプレゼントを買いに行かれたのかも・・・と内心思ったが。
皆さんの来られる夕方まで時間もあるので、スーちゃんはテストの勉強をすると言って、プリントを持って降りて来る。
私はお皿や、カップやお箸など、こまごました物の準備をする。頭の中はもう5人と決めこんで。
さて、皆さんの来られる5時半近くなり、スーちゃんは近くのバス停まで迎えに行く約束をしている。
洋服を着替えて降りてきた。「お母さん、行って来るね!」と出かけるスーちゃんに、飲み物が無いので、何か皆さんの好きな
飲料水を買ってきなさいとお金を持たせる。
皆さんが入って来られたら(スーちゃんの思い出の為に)ビデをを撮ろうと準備。
10分位すると、家の辺りで、賑やかな声がする。「あ!戻って来た!!」と心はずむ。
「こんにちは!!お邪魔します!!」と入って来られたのを見てびっくり!! ぞろぞろと玄関に一度に入りきらない程の
クラスメートの人達が来てくださったのだ。
「じゃあ、お一人お一人自己紹介お願いね!」と名前を教えてもらう。
美穂ちゃん、ゆかこちゃん、ほずみちゃん、かなちゃん、みわこちゃん、えりちゃん、しおりちゃん、そしてこなみちゃん。
みなさん笑顔の可愛いお嬢さんたちばかり。狭いリビングに入ってもらう。

 やっぱりお箸がいちばんいいね〜! こうして3本の指を使ってね! 指で奮闘の生徒さんたち。

ところが、料理のほうばかりが気になってリビングの方は全然準備が出来ていない事にあわてる。
ひとつ置いてある机では小さいので、二階から長机を降ろそう!!
そう思って上に駆け上がると、皆さんも手伝います!と言って手を貸して下さった。皆さんほんとに良いお嬢さんばかりだ。
二人でも抱えきれないほど重い机なので、そろりそろりと4〜5人がかりで降ろす。
さて食卓の準備が出来たので、皆さんお腹が空いて来て下さっているので、早速出来上がったものから並べる。
ピザ、パン、スーちゃんの作ったカレースープ。ナスを揚げてたまねぎと炒めた物等々・・・。
飲み物は2本買って来てもらったので、それで早速乾杯だ。
代表して野球部マネージャーの美穂ちゃんがスーちゃんへ誕生祝いの挨拶。そしてみんなで乾杯!!
次に、お皿にターメリックを入れて炊いた黄色いご飯を盛り、その横にスーちゃんの作ったカレーと コキス(kokis)
(スナック菓子の様なカリカリという歯ざわりの食べ物)を置き、スリランカ式に右手で食べる。
我家にスーちゃんが来た時、スーちゃんは既にお箸を上手に使って食べる事が出来るようになっていた。
ところが、スリランカでの習慣が出て、左手を机の下に置き、右手にお箸を持ち、茶碗は食卓に置いたまま食べていた。
「スーちゃん、それは日本ではダメよ、ちゃんとお茶碗を持って食べなさい!」と注意した。
インドやスリランカでは、食べ物は全て右手を使う。そして左手はお尻を拭いたりする不浄の手なので、絶対に使わない。
「郷に入っては郷に従え」で、お茶碗を持たずに食べることは、日本ではマナー違反で、見ていても感じの良いものではない。
注意してしばらくは気にして両手で食べているが、また片手食事になってしまう。
その度に注意する。最近ようやく注意の回数も減ってきた。
スリランカ式に右手で食べる事は、皆さん初めての経験なので、まずスーちゃんに見本を見せてもらう。
スーちゃんは上手に右手でご飯にカレーをまぶし、薬指、中指、人差し指の3本の上に乗せ、親指ですべらすように口の中に運ぶ。
みんなそれを見て、「へえ〜!!上手だぁ!!」と感心している。
今度は自分達で実際手で食べてみる。カレーが水っぽいのでなかなかご飯と混ぜても一塊にならないので難しそうだが、」
次第に上手に食べ始める。皆さん美味しい!美味しい!と言って食べて下さっている。
ついには”お代わり”の声も出たのだが、あいにくお代わり分が無く我慢してもらった。

和気藹々の内に食卓に並べられた料理が平らげられていき、スーちゃんにバースデープレゼントが贈られた。
皆さんからはかわいいお裁縫セット。そしてなんと担任の先生からもプレゼントをことづかって来て下さった。
沢山召し上がってくださって皆さんお腹いっぱいだ!!とスカートのホックをはずすお友達もいて、みなさんの笑いを誘う。
ケーキも沢山持ってきてくださっているので、食卓を片付ける。冷蔵庫から持って来てもらったケーキをお皿につける。
実は美穂ちゃんの野球部の顧問の先生、安部先生は何と同じ町内会のご近所さんであった。
それもスーちゃんが来て初めて知った事で、びっくり仰天だった。そして今日我家に顔を出して下さるとの事。
恥ずかしながら、ご近所というのに、まったく面識が無く、大変失礼な事だった。
つい先日スーちゃんを連れて散歩がてら安部先生のお宅近くまで行った。
お留守だったので玄関のブザーは押さなかったが、ほんの数10mくらいという目と鼻の先であった。
ケーキを並べた頃、ちょうど安部先生の来訪。すぐに失礼しますとおっしゃる先生を引きとめ、あがっていただく。
生徒さん達と先生の会話を聞いていると、学校の雰囲気や先生と生徒さんとの良い関係が垣間見えてほほえましく感じた。
実は以前スーちゃんとジョン君を学校へ迎えに行った時、車の中で二人を待っていた時の事、
野球部らしき男子生徒さんが二人自転車を押して校門のほうへ近づいて来た。
そして車の中の私に軽く頭を下げたのだ。
私は先生の指導や生徒さんのマナーの良さにびっくりするとともに、とても嬉しくなってしまった事を思い出した。
それを安部先生に話すと、昔のイメージを払拭するように、指導してきてだいぶそれが浸透してきましたとおっしゃっていた。
今日来て下さった女子生徒さんの面々も、とても礼儀正しく、好感がもててつい嬉しくなってしまった。
そしてまた機会があれば是非遊びに来てほしいと願っている。

 みんなお行儀良くしてるか!! さあさ!先生もケーキどうぞ!!

ケーキも美味しく平らげて、さて!! 次にスーちゃんの国、スリランカの民族衣装を着てみたい!!の声があがる。
民族衣装は”オサリ”というもので、インドのサリーとは巣こし違う民族衣装である。
その要望にスーちゃんも大喜び。2着持ってきているので、二人づつ順番に着る事になった。
まず丸ちゃんこと、丸岡かなちゃんと美穂ちゃんが着る。
どちらもとても可愛い衣装で、ベージュ地の布に赤の濃い色の縁取りのある可愛いお袖の付いた
上下のツーピースなのだが、スカートは長い巻きスカートになっている。肩に長い布を垂らす。
とてもよく似合って可愛い!!
二階でスーちゃんに着せてもらった二人は、しずしずと階下に降りてきて記念撮影だ。
リビングの入り口に立つ二人を、皆さん携帯のカメラでパチリ!パチリ!と撮っている。
さて次に控えしは、えりちゃんとほずみちゃんだ。嬉しそうに、そして少し照れながら二階に駆け上がる二人。
程なくドレスアップした二人がスカートの裾を持ち、降りてきた。皆さん本当に綺麗だ。色が白いので、とてもよく似合う。
そしてとっても可愛い!!
次はしおりちゃんとこなみちゃんだ。二階でスーちゃんの声だ。「おかあさん!!ピン無〜い?」 
実はスーちゃんのウエストに合わせてあるスカートは細いウエストの皆さんには
安全ピンで留めないとダボダボで下がってしまうようだ。
二階では賑やかな楽しそうな笑い声がしている。ようやく出来上がったようで、しおりちゃんとこなみちゃんが降りてきた。
下で待ち構えている友達が一斉にシャッターを切る。私もちょっと割り込んで写真におさまる。初めての経験に皆さんも大喜び。
二階に上がってみると、何んとほずみちゃんが手伝ってちゃんとみなさんに上手に着せ付けている。
スーちゃんのベッドの上には、スーちゃんの持って来たいろいろなワレェルが置いてある。
ワレェルというのは、手首に嵌めるリングの飾り物だ。5つ位の輪(リング)で出来ていて、ジャラジャラと音がする。
色も銀や金やピンクいろのもある、とても綺麗でオサリを引き立てている。
さて最後にみわこちゃんだ。今日来て下さったお友達の中で、わかこちゃんが残念ながら宇品なので、先に帰られてしまった。
という事で、最後ここは野球部マネージャーのみほちゃんがもう一度着る。
皆さんのずるい!!の声にもめげず可愛くオサリに身を包んだ二人が降りて来る。皆さんほんとに可愛くてきれいでした!!
最後に私が用意したビンゴゲームで誕生会を終了する。
私が海外旅行に行った時のお土産や、大したものは無かったがわずかのプレゼントを用意して、
ビンゴゲームで早くあがった人から好きなものを選んでもらって頂いた。
フィンランドに行った時のお土産、ムーミンのストラップ、タイの土産の手紙差し、スペイン(パンプローナ)土産の
牛追い祭りの刺繍入りのスカーフ、タイのシルクスカーフ、その他小銭入れの様な物等・・・。
楽しかったバースデーパーティだったが、あまり遅くなると、今はテスト期間中だし、お家の方も心配される。
主人のボンゴ車で、皆さんを駅まで送ってあげる事に。スーちゃんも乗り込んでついて行く事に。
皆さん食べた食器も流しのほうに持って来て下さり、重い机ももう一度二階に持ってあがるのを手伝って下さった。
本当に皆さんありがとう!!
スーちゃんはこんな素敵なクラスメートさんに囲まれて幸せだなぁ〜とつくづく思った。
私からも心から皆さんにお礼を言いたいと思った。
スーちゃんが帰国するまでに、機会があればもう一度皆さんにお会いしたいものだ

 オサリーの似合う美穂ちゃんと丸ちゃん。かわいいね。 ウエストだぼだぼのえりちゃん、そしてほずみちゃん。 しおりちゃんとこなみちゃん。 色白のみわこちゃん。 「へへへ、二度着ちゃった!」美穂ちゃん。

これ担任の先生から!! ありがとう!! 皆さんありがとう!! こんなに沢山もらっちゃった。 美味しいケーキ!!でした。ペロッ!!
10月11日(土曜日) 
今日も行事がある。これは教育委員会から瀬戸内高校に依頼された行事で、ゴミ問題について考えるというフォーラムだ。
スーちゃん達留学生や、近隣の高校生達が三原に集い、ゴミ問題について意見の交換をしたり問題提起したりする。
朝広島駅に10:20頃に行けばいいと思ってゆっくりしていた。ところが・・・・
8時40分頃LPの沖田さんから電話が入り、実は広島駅を8時にバスが出てしまったというではないか。
「スーちゃん大変よ!!」と大騒動になる。
スーちゃんは何か今日の予定表をもらっていたらしいのだが、沢山沢山行事があるものだから、
書類がごちゃごちゃになってしまいちゃんと把握していなかったようだ。時計はすでに9時前。
ガイドの方も一応連絡は取ってくださったらしいのだが、フォストファミリーを代わった事の連絡がちゃんと出来ていなくて、
前のホストファミリーに連絡があり、そしてLPの沖田さんに連絡があり、我家に連絡があったという事らしい。
でも時既に遅し!で、8時定刻通りバスは出発してしまったとの事。
近くならば追いかけてでも行こうが、三原の方ではどうしようもない。
スーちゃんは瀬戸内高校の担当の先生に、「行きます!」と約束していたのにどうしよう!!とうろたえている。
「お母さん!瀬戸内高校のS先生に連絡せんといけん!!」と泣き顔だ。
「お母さん電話するから、スーちゃん出てちゃんと誤るのよ!」と言うと「お母さん言って!!」とすがるように頼んでくる。
とにかく、携帯をまわす。ところが、当の先生、「え?今日何でしたっけ?」と来た。ちょっと拍子抜け。
事の事情をお話し、一応了解頂いき、スーちゃんに代わる。
先生とお話したスーちゃんも一応落ち着きを取り戻し、いつもの明るいスーちゃんに。
そんな訳で今日の予定がおじゃんになったので、昼から留学生会館の日本語教室にスーちゃんを伴って行くことになった。
いつものように2時から始まる日本語クラスに参加して、一生懸命勉強するスーちゃんだった。
授業が終わっても、今日は一緒に帰る訳にはいかない。今夜私は属しているボランティアクラブのリーダーの先生が
現在タイのバンコクの大学に赴任されており、そこで日本語教育を担当されている。
今回2週間ほど一時帰国されたので、今夜や夕食をしながら、タイの日本語教育事情を聞く事になっている。
先に帰るスーちゃんにお父さんと一緒に夕ご飯を食べる様に言う。
下手なりに何かスリランカ料理らしいものでも作ってくれるだろう。
10月12日(日曜日) 
明日月曜日からスーちゃんは楽しい楽しい修学旅行だ!!
13日から16日までの4日間の旅だ。
まだ何の準備もしていないスーちゃんなのだが、こんな時にもかかわらず今日もお出かけの予定だ。
実は留学生会館で知り合った同じスリランカの人で、現在広島大学医学部に学んでおられるサマダラさんという方が、
西条酒祭りでスリランカ料理のお店を出すので、いらっしゃいとお誘いを受けた。
朝留学生会館に9時に会う約束をしたので、楽しそうに出かけて行った。きっと楽しい一日になるだろう。
10月13日(月曜日)北海道へ修学旅行 
今日から楽しい北海道への修学旅行だ。
早朝、広島駅裏へ集合だ。丁度主人がアステールプラザにて市民能楽祭があり、
同じ時間に出かける為、スーちゃんを送って行く。
北海道はきっと寒いだろうと、ホッカイロを8個も持たせた。
そして、念のために私のマフラーもカバンの隅に入れておいた。
楽しい旅になるといいなぁ〜!


10月16日(金曜日) 
楽しかったであろう修学旅行もあっという間に四日間が過ぎてしまった。スーちゃんにとっても早かっただろうが、
私達にとっても、「あ!もう帰ってくる!」という気がして、日が経つのが早い。
何時頃なのか分からないが、おそらく夕方頃だろう。
いつもの学校から帰ってくるような感覚で一日を過ごし、夕ご飯の支度をしながら待っていた。
6時過ぎ頃だろうか、玄関からスーちゃんの声だ。
何と!先日スーちゃんの誕生会に来てくれた近くの美穂ちゃんが一緒だという。
高速バスで広島東インターに近い二人は降ろしてもらい、美穂ちゃんのお母さんが迎えに行かれて、
一緒に送って頂いたらしい。初めて美穂ちゃんのお母さんにお目にかかる。
「娘が先日の誕生会が楽しかった!楽しかった!と言いまして・・・」との言葉を頂いてとても嬉しくなった。
早くおうちに帰ってゆっくりされたいだろうと、玄関先でお別れする。
スーちゃんの開口一番、「おかあさん、北海道全然寒く無かったよ!!」だった。
ホッカイロを8つも持たせたが、無用だったようだ。やはり北海道も地球温暖化か??
「楽しかったよ!!きれいだったよ!!住みたかったよ!」とスーちゃんの口からは北海道絶賛の言葉が出てくる、出てくる。
今の北海道は作物の収穫期で、緑、黄色、赤といった絨毯を敷きつめたような
色とりどりの光景が広がっていて、それは見事だった様子。
ため息交じりに話してくれる。スーちゃんの表情も豊なので、充分想像出来る。
あっという間の4日間だったようで、なかなか留学生として修学旅行に行ける生徒は少ないと思うのに、ラッキーなスーちゃんだ。
カバンから北海道土産が次々と出てくる。
白い恋人、ラベンダーのハンカチとボールペンセット、熊のぬいぐるみ、コーンのクッキー等等。
少ないおこづかいからスーちゃんなりに一生懸命考えて、選んで買ってきたようだ。
「皆いっぱい買ってたよ、蟹も買ってバスに乗ったのでめっちゃ臭かったよ!」と
生ものの食べられないスーちゃんは顔をまげて話した。
北海道は蟹の本場。皆さん舌鼓を打ちながら食べていても、スーちゃんには、とてもとても口に入れることも出来ず、
蟹味噌にいたっては鳥肌が立つほど気持ち悪かったようで、お友達に皆食べてもらったよ!と言う。
あんな気持ちの悪いものを美味しい!美味しい!と食べる日本人は理解出来ない!!といった表情だ。分かる気もするが・・・。
さすが疲れたのか、夕食を食べてすぐに寝てしまった。

  ボーイズビアンビシャス スーちゃんは材料を見ると食べられない!

 遠くの山は初冠雪。手前はひまわり畑? 広い畑に感激の様子 

  観光バスの地図 人力三輪車に乗ったよ!

10月19日(日曜日) 
天高く馬肥ゆる秋。お米の美味しいこの季節、奉納を祝って町内はみこしが練り歩く。
一週間前から町内ではお祭りの準備が始まる。家の周りに張り巡らす縄と白い紙垂とい物が配られ、縄に吊るしていく。
神様をお迎えする意味なのか?と思うが・・・この白い紙の意味が悲しいかなよくわからない。
スーちゃんは近所の家に吊るされたこの白い紙を見て、「誰か亡くなったの?」と悲しそうな顔で私に質問したのだ、
「どうして?」と逆に聞くと、スリランカでは誰か亡くなると白い服を着たり、白いものを喪に使うのだと教えてくれる。
町内がざわめき、おみこしが我家の近くにやって来た。お花代を用意していなかったので、
あわてて封筒にお花代を入れて玄関に飛び出していく。
俄か神主さんが御幣を持って私とスーちゃんが頭を下げると頭上で一振り、二振りしてお払いをしてくださった。
スーちゃんも始めての経験なので神妙な面持ちで頭を下げていた。

  恐い鬼にびっくり! 

今日は近くの神社でも神楽があったり、夜店、屋台などあると聞いた。午後からスーちゃんを連れて行くことにした。
神社の下のスーパーに車を置いて、長い石段を登ると八幡神社がある。
この神社でおみこしのお払いして頂き、ここから出発する。
息子達がまだ小学校の頃は、子供達も沢山居たので、賑やかにみこしを担ぐ「わっしょい!わっしょい!」という
掛け声が響いていたものだったが最近ではすっかり子供達が少なくなった。
今朝廻ってきたみこしを見ても大人のほうが多い始末で、寂しい事この上ない。
神社に行くと、直ちゃんいっちゃんのお母さん(玲子さん)が、子ども会の役員なのではっぴを着てうろうろしていた。
聞くと、3時から”餅撒き”があるとのこと。まだ3時までには一時間もあったが、せっかくなのですーちゃんの為に
"餅撒き”を経験させてやろうと玲子さんと立ち話をしながら待った。

 御幣でお払い おかあ〜さん!沢山ひらったよ〜 私もがんばっちゃった(玲子さん)

3時近くなると、神社の方が餅撒きについての説明が始まった。
撒かれた餅の袋の中に番号が書いてあり、くじがあたると何か景品がもらえるらしい。がんばってお餅を拾おうと張り切る。
さて3時の時報とともに、神主さんたちが箱に入ったお持ちを手に持ち方々へ投げ始められた。
神社の境内にはいつの間にか黒山の人だかり。
老若男女、どこから沸いてきたんだろう!!というほどの人人!!
お餅が撒かれると、わ〜!!わ〜!!と両腕をいっぱい拡げてお餅の一個でも取ろうとがんばる。
境内は土煙があがっている。10分程でお餅争奪戦は終わった。
私もがんばったが、とろい私は落ちた餅さえ拾えなかった。わずか手には一袋だけ・・・。
スーちゃんはというと、3個か4個手に握っていた。
次に神主さんが一等、2等、3等、4等の当たり番号を読み上げる。
一等は1本で電気毛布とか、結構良い景品だった。
スーちゃんが拾ったお餅は4等と5等があたり、部屋を掃除する道具と軍手とタオルのセットをもらった。
結構楽しませてもらったので、また長い石段を降りて車に戻り、玲子さん共々家に帰る。
スーちゃんも始めての経験に楽しい時間を過ごしてようで喜んでいた。

 もちまき 4等と5等があたりは? 部屋を掃除する道具と軍手とタオルのセットをもらったよ

夕方は久しぶりに河原さんのお宅を訪問する予定だ。河原家は先日引越しをされたので、今日は初めてその御家に伺う事に。
スーちゃんも赤ちゃん(幸多君)に会えるので、大喜びである。

 こうちゃん!かわいいでしゅねぇ 腹ばいにするとすぐにこのポーズ! 北海道のジンギスカンを頂く
10月31日(金曜日) 
月日の経つのは何と早いものか。もう10月も終わってしまう。
若い時は1年が10年位に思えたものだが、今1年はほんのまばたきする間に過ぎ去ってしまう。
スーちゃんが来てすでに2ヶ月が過ぎてしまった。
我家でのスーちゃんはすっかりリラックスして、手足伸ばしているが、”良い子”の
スーちゃんから出ようとはしない。この”良い子”は18歳というこの年齢に於いては、少々問題あり!なのである。
朝学校へ出かけて行くスーちゃんを必ず私は門のところまで出て見送ってやる。今朝は出掛けに宿題を出した。
それは・・・「今日帰るまでに、お父さんとお母さんに何か聞きたいことを一つ以上見つけて帰りなさい!」と言っておいた。
スーちゃんはスリランカであまりに両親の腕の中で、ぬくぬくと育っているので、物事に対して「なぜだろう?」
「どうしてそうなんだろう?」と思う事が無いのであろうか?
家庭においては、お母さんが全ての事をされるので、自分から何かしようとか、こうすればいいのでは?と思う事が
ないのである。というか、そう思う必要が無い環境で育ったのである。
我家に来てからのスーちゃんを見ていると、いい子過ぎて、完璧過ぎて面白くないのである。
人生において一番多感で、物事に興味を持ち、時には自分の人生を左右されるような事に出会う事もあろうと思うのだが、
もっとハングリーな気持ちを持って欲しいと、自分の若かりし頃を振り返ってやきもきするこのごろである。
せっかくスリランカで、熾烈な競争に打ち勝って日本に来たというのに、もったいないと思えて仕方が無いのである。
その思いは主人も同じと見えて、17歳18歳という一番多感な年齢の子供達にかかわれる事を楽しむはずなのだが、
まったく楽しく感じていないようである。いい子過ぎて面白くないという。
最近では主人から話しかける事も少なくなってしまった。そんな感じなので、今朝私は問題提起の為に、そしてスーちゃんが
自分から何かに興味を持って欲しいという思いで宿題を出したのであるが・・・・。さてさて何か興味を持っただろうか?
先日来風邪を引いていたスーちゃんだったが、おとうさんにうつしてちゃっかり回復してきている。逆に主人はここ2〜3日重病である。
はぁ〜はぁ〜と息も絶え絶えで、やはり年齢には勝てず、治りも遅い。
薬も無くなってきたので、今朝はもう一度薬をもらいに行ってくると出かけて行った。
風邪は結局おとなしく寝ているのが一番。帰宅するとすぐに2階にあがり寝るように言う。