ホアンと稲垣夫婦のホームステイ日記

                                                   愛子 記

12日(土曜日)『パラグライダーに』
今日はホアンと一緒に神の倉へ行く予定。
せっかく一人でパラグライダーに乗れるようになったが、残る日が少ない。
とにかく、天気が良ければ眼一杯飛ばせてやろうと主人も思っている。
寝かせておいたのでは、夕方迄でも寝てしまうホアンなので、朝早くたたき起こして
神の倉に向かう。今日はまあまあの天気だ。

神の倉に着くと、既に何台か車が並んでいる。
風も穏やかでぶっ飛びモードだけれど、とにかく今日は本数で勝負だ。
早速、野口さんの車で神の倉テイクオフに上げてもらう。
主人が先にぶっ飛んで行った。すぐにテイクオフの準備の整ったホアン
藤本さんがホアンをサポートして下さりテイクオフする。
ホアンのテイクオフはなんら心配の無い、素晴らしい立ち上げ、テイクオフなので
安心して見ていられる。
今日はピッチングやローリング等新しい事に挑戦すると意気込んでいる。
沖の方へ向かい、風に正対したところで、早速ピッチングをやっている。
続いてローリングも・・・。
ランディングもターゲット近くにきれいに降りて行く。
主人もホアンがテイクオフしてランディングするまで、一言も誘導しなかった。
もうしっかり自分で考え、着実にこなしている。

私もホアンの後を追ってテイクオフする・・・が駐車場を超える事が出来ず
アウトランしてしまう。あ〜ぁ 500円!ホアンに笑われるぅー!!

降りてすぐテイクオフに上がる準備をする。時間を惜しんで飛ばなくっちゃ!
ボンゴフレンディで何人か集まったところで、テイクオフへ向かう。
これからは私は車の上げ下ろしをする事にした。そうすれば、ホアンも沢山飛べる。

2本目も同じく主人のぶっ飛びの後、ホアンが続く。
「今度は360°ターンをするから、見とけ!」と言って飛び出した主人。
ずーと沖に出たあたりで、廻し始めた。うん?360°がだんだん激しくなった。
スパイラル寸前かぁ〜??それを見てホアンはおとさんスパイラルー!!
目を丸くしている。ちょっと、入りすぎたようだ・・。
主人のランディングを見届けて、ホアンも準備する。
再び藤本さん、サポートして下さる。きれいに立ち上げ、ホアンの長〜い足を
ピッと伸ばして一直線になった身体で、華麗なるテイクオフだ。
それを見て藤本さん『ロケットスタートだね!』と賞賛。

主人と同じ様にあんな激しい360°ターンしなければいいが・・・・と思っていたら
だいぶ沖に出て、もう一度、ピッチング、ローリングをし、360°ターンを2〜3回
繰り返して止めた。よしよし!あまり危ないことしないで!と心の中で叫ぶ。
着地も、やはりターゲット近くにきれいに降りて行った。
私はすぐに車で下に降りる。

4本目を飛びに上がった時、山本さんが丁度今日退院されたとの事で
荒槙の稽古を終えて、こちらに向かった帰られているとの情報。
ホアンが飛んで出る頃に丁度神の倉に帰られたようで、無線入管。
「ホアン、準備が出来次第、テイクオフOKですよ・・・」と。
夕方のアーベントが有り、ホアンも少し長く行ったり来たりを繰り返し
楽しんでいた。

今日は結局ホアンは5本飛び、大変満足したようであった。
帰りには久しぶりに『千里香』で夕食を食べて帰る。

13日(日曜日)『おかさんと街へ、散髪もする』
昨日パラグライダーから帰る途中、近くの団地でとんどをやっていた。
ホアンに見せてやろうと、車を止めて行って見た。
例の呉服屋さんの奥さんの居られる地域だ。丁度彼女もいたので
挨拶をすると、ホアンや私達にぜんざいを薦めてくださった。
しばらく、パチパチ、ポンポーンというとんどの竹の燃える音を聞きながら
ぜんざいを頂いて帰った。

今日は私の住む団地の『とんど』なので、役員の私はバケツに水を汲んで
万一火事などになった場合を考えて用意しておく係りとなった。
11時に点火なので、我が家から少し下ったところの田んぼでやっている
『とんど』の場所までお正月のしめ飾りや、お花等を持って出かける。
ホアンも見せてやろうと思っていたが、起きそうにもないし、昨日運良く帰る途中に
見ることが出来たので、起こさないことにした。

11時にピラミッドのような形に組まれた竹に火が点けられると、竹の笹が
勢い良くバチバチ・・・と気持ちの良い音を立てて、火が燃え上がっていく。
そして、やがてモウソウダケに火が移ると、ドンドンポンポンとお腹の底に響く様に
竹の破裂する音がする。その度に周りを囲んで見ている大人や子供達の歓声が上がる。

ピラミッドもほぼ燃えて崩れ落ち、赤々とした灰状態になると、竹の先にお餅を挟んで
持って来ている人や、餅アミを竹の先に吊るして焼く様にして持って来ている人等、
それぞれに、火の周りに立てかけて焼き始める。
お餅が焼きあがった頃、子供会の役員の方々は用意したぜんざいを御椀に注ぎ始め
子供達は、焼きたてのお餅の入ったおぜんざいを美味しそうにほおばっている。

   とんど祭り!    お持ちを焼いたり、お酒の燗をしたり・・・。

12時に私の役目は終了したので、家に帰ってみる。
依然、ホアンは熟睡状態であった。

1時になったので、ホアンに声をかけると、寝が足りたと見えて、目をあけた。

午後からどうしよう?と相談すると・・・『銀行に行ってお金を全部下ろしたい』
『髪もカットしたい・・・』と言う事で二人で出かける事にした。

まず府中の銀行でお金を降ろす。私もホアンへのお土産にしたいものが
あったので、付き合ってもらう為クレドビルに向かう。
ホアンは起きてまだ何も食べていない。
『お腹がすいたぁ〜・・・』と言う。私は今朝の『とんど』でお餅2ケ食べたので
お腹は落ち着いている。それでは!とマクドナルドに入り、ホアン大好きのチーズバーガー
を注文。ホアンはペロリとチーズバーガー3ケを平らげた。
私も付き合って1ケとポテトを注文した。ポテトはとっても美味しかった!

目的の本通街の紙専門のお店に行き私の買い物を済ませる。
あたりも暗くなって来た。これからまだホアンは散髪に行かなければならない。
急いでクレドに引き返し、府中あたりのバーバーショップを捜す。
別に決めたお店は無かったので、行き当たりばったりで、最初目に入った理容院に入る。
そこは、中年のおじさん一人がやっている、小さな散髪やさんだった。
「ここでいいよ」というホアンに付いて、お店に入る。

ホアンのカットは少し特殊だ。いうならば、どんぐりみたいに、7:3位に
上のほうだけ残し、下はバリカンで2分刈りにするのだ。
だから、あっという間に終わってしまう。ホアンはいつもは輪ゴムで髪を結んでいる。
お店のおじさんは、その束ねた髪を”ちょっと持ってて下さい”とホアンに持たせて、
下の方にバリカンを入れ始めたので、ホアンは目を白黒させる。
コロンビアでは、お客さんに、その様な事をさせるなんて事は考えられない・・・と
言ってびっくりしていた。(僕、その時ちょと帰りたかった・・・・と)
まあ、でも文句言っちゃいけない! 高校生です・・と言ったら¥1,000で良いです。
と安くして下さったのだから。

   へえ〜・・・留学生さんねー!・・・。    「ちょっと、上の髪もっててね!」 ホアン 「・・・えっ 僕が??」

   コロンビアじゃー お客に持たすなんて、タブーだよ・・・。    まっ、 ¥1000だから、いいっか!!

急いで家に帰ると、すでにパラグライダーから帰った主人、テレビを見ながら
私達の帰りを待っていた。
今日は、ホアンも散髪した事だし、スーパー銭湯に行ってすっきりしましょう!と
夕ご飯の支度を休みたい私。
それがいい!それがいい!という事になり、満場一致でお風呂行きが決まった。


14日(月曜日)『由也・越達と瑞穂スキー場へ』
今日は成人の日。朝8時に由也君・越君が我が家に来る事になっている。
今日はホアンはスノーボードに挑戦したいというので、再び瑞穂スキー場に行く予定だ。
朝ご飯の支度をしていると、東広島に住む弟から電話だ。
私も長く田舎へ帰っていないので、田舎の母に何か有ったか?と心配になる。

いやいや、今日は広大法学部に通っている、姪っ子の晴れの成人の日だったのだ。
朝早くから起きて、美容院に行き、着物を着せ付けてもらったので、見て欲しいという。
”そうか!”うっかりしていた・・・主人はすぐに服を着替えて、彼らの来るのを待つ。
私はたんすの引き出しから、祝儀袋を用意する。

東広島から高速ですぐなので、ほどなくきれいに着せ付けて、髪も結い上げて
別人のような姪っ子が現れる。
今朝は千客万来だ、彼らの到着前に由也、越君が、由也のおじいちゃんの運転で到着。
由也達にも入ってもらって、記念写真を撮る。
おとうと夫婦も感無量の様子。私もうるる・・・ときてしまった。

   越君、由也君も、もうすぐだよ!!    ヘエー・・成人式ね〜・・コロンビアは無いよ!パーティはするけど・・・

   尚子ちゃんも大きくなったなぁ〜・・・!    おばちゃんもとってもうれしいわ!
成人式は9時から始まるというので、腰も落ち着かないまま、早々に弟達は帰って行った。
越君、由也君も我が家に来て早々私達がばたばたしているので、彼らも落ち着かない。

お餅を焼いて、ホアンや皆に食べさせる。
腹ごしらえが終わったので、急いで出かける支度をし、瑞穂スキー場へと出発する。
インターを降りて、いつもの様に、貸しスキー場に寄り、私と主人ののスキーを借りる。
越君はショートスキーを借りる様だ。

ここ2,3日雪が降っていないので、ボンゴフレンディでも大丈夫だった。
でも、滑るには雪質は悪いな〜と主人。
スキー場に着き、若者3人は早速滑り出す。由也君もスノーボードは初めてと言う。
低い所で何度か挑戦している。運動神経が由也もいいのだろう、上手く滑っている。
ホアンはまだ怖いのか、へたりこんで動こうとしない。
越君もスキーの経験はあるので、ショートスキーでも、難なく上手滑っている。
私がゆっくり、ゆっくり滑って降りるので、由也君も越君も気遣ってくれる。


   みんな、お手並み拝見!だね。    さあ!高いところから滑ってみよう!

   行きはヨイヨイ、帰りは・ ・ ・ ・ だなぁ〜・・・。    さあ、着きました。ホアンはちょっと不安顔?

今日は前よりぐんと高いところまでリフトで上がった。何だか私はだんだん怖くなって来た。
ボーゲンでヨタヨタと行っては止まり、行っては止まりしていた。
谷の方を向いたら一気にスピードがすいてしまった。うわ〜!!どって〜ん!!
私の足は股裂きにあったような状態で転んでしまった。”痛い〜いぃ・・・!”
しばらく動けない。下の方を見やると主人や由也君達が座って私を待ってくれている。
でも動けない!痛いょー!!とつぶやく。
どうやら、左膝坊主を無理やり反対方向に折れ曲げてしまったみたいだ。
しばらく座り込んでいた。ゆっくりゆっくり立ってみた。どうも筋を痛めたらしい。
折れてはいない様だ!立って、再びゆっくりゆっくり、みんなの所へ滑り出す。

みんな、少し疲れたか、雪の上にへたりこんでいる。ホアンも下半身びしょびしょだ。
みんな疲れが出てきたようなので、食事休憩することにした。

由也とホアンはスノーボードが上手く滑れるようになって来たので
一休みして、4時半のリフトが止まるまで、すべりまくると言う。
若者に付いて主人も老体に鞭打って、ふたたびゲレンデに出て行った。
私の足はだんだん痛みが増して来た。

レストランで待ちながら、しばらくうとうととしてしまった。
”閉店で〜す”の声に目がさめ、びっこをひきながら、下に降りて行くと
丁度、みんな滑り終えて帰って来るところだった。
由也もホアンもスノボーがすごく上手になったらしい。
私が足を痛めたのを、知らなかったので、びっくりして気遣ってくれる。

スキーをかつぎ、駐車場までとことこ歩いて行く。
痛み隠しながら、歩いていたら、由也君が「おばちゃん、スキー持ってあげる!」
私の分も担いでくれる。(涙が出るほどうれしかった・・・)

みんな、出来たらもう一度来たいな〜・・・・!と良いながらスキー場を後にする。
ホアンも”I love スノーボード!!”と叫んでいた。
コロンビアに帰ったら、僕、スノーボード買う!と言う。でも滑るとこ有るん??

帰りは皆で、スーパー銭湯に入り、夕食を食べて帰る。
う〜ん、楽しい一日だったね!(おかさん、ちょっと、痛いけど!!)

15日(火曜日)『ホアン遅く帰る』
昨日、由也君のお弁当を頼まれた。足が痛くて早々に寝たので
何も準備していない。
夕べ布団に入って、右にも左にも向く事が出来ない程痛みが増す。
真夜中、痛みで目が覚める。下に降りて時計を見ると、まだ3時頃。
ホアンや由也君の弁当、何にも下ごしらえしていなかった。
寝ることも出来ないので、いいや!と思い、びっこをひきひき、台所に立ち
お弁当作りを始める。

今日はホアンは学校に行く気でいるので、ちゃんと起きてくれる。
今日は体育が有り、縄跳びだと言っていた。
前回はマラソンで、ホアンし死ぬ!と言っていた。
どうも、マラソンのような持久力の要る運動はからっきしダメらしい。

私は休む事が出来ないので、びっこをひきひき会社へ。
割りとまっすぐに歩く事は出来るが、横に曲げたりすると、飛び上がる様に痛い。
夕べよりは、痛みが少し薄れて来たものの、まだ座ったり、立ったりする時は
悲鳴をあげそうだ。

きょうはリズム体操の初稽古だが、幸い先生も風邪をひかれて、休みの連絡が入った。
私も夕ご飯もそこそこに、早く布団に入った。
ホアンはまだ、帰らない。主人がホアンに「おかさん足が痛いので
大変だから、遅くならないように帰りなさい」と連絡を入れたそうだ。

ホアンが帰ったのも、気が付かず寝ていたが、夜中に目を覚まして
下に降りると、ホアンは一人ビデオを見ていた。
明日は調理実習なので、お弁当はいらないと言う。
少し、話をしてホアンも眠そうなので、話もそこそこに「おやすみなさい・・・」で
私も二階に上がる。

17日(木曜日)『ホアン休む』
夕べホアンは最終バスに乗り遅れ、駅から家まで、歩く羽目になった。
インターネットカフェに行き、最終バスに2分程、遅れたそうである。

『電話をすれば、おかさん、迎えに来てくれる・・・』と思っているに違いない。
”いつも、いつもそうはいきません!”

今日は、足も未だ痛いし、帰りの遅いホアンを待ってても仕方がない!と
12時を廻ったので、主人も私も布団にもぐりこんだ。
うとうと・・・としたころ、2回ほど電話がなったようだった。
軟弱な精神も少しななんとかならないか!とほうっておいた。
最終に乗り遅れたら、どうなるか?位わかりそうなものを・・・・と、腹立たしくなる。
主人も”ほっとけ!”と言う。電話掛けて来る事が理解出来ない!と言う主人。全くだ。

どうやら、えっちらおっちら歩いて帰ったらしい。2時頃、、ことこと音がしていた。
今朝はホアン大手を振って休む!と言う。
ホアン足が痛い!だって。軟弱ホアンそのものだ!!

学校休んだので、気まずい顔をして待っているかな?それともばつが悪くて
どこかへ出かけたかな??と思いながら、仕事を終えて帰ってみると・・・
麗奈が来ている。ホアンを心配して来てくれたらしい。
彼女も『ダメね〜、ホアンは・・・』と彼女にも見放されそうだ!やばいぞホアン!

麗奈が机に向かって、一生懸命何か書いている。
『それ、なあに?』と見せてもらうと、『これ、由也が作ったアンケート』と言う。
読んで思わず笑ってしまった。
面白い事考えるなあ・・・と感心する。
『クラスで一番、ハゲそうな人は?』 麗奈の答え・・・『ホアン』
『将来一番金持ちになりそうな人は?』麗奈の答え・・・『ホアン』 
『こんど、生まれ変わったら、なりたい人は?』麗奈の答え・・・・『ホアン』
『クラスで一番ケチな人は』等など

思わず吹き出しそうな設問ばかり、ならんでいる。これでトータル順位を出すんだね。
面白い!!。結果がおばちゃん知りたいな!
今日はゆっくり出来るというので、彼女に手伝ってもらって、トンカツを作る。
牛乳を買いに行くホアン。元気良くお手伝いしてくれる。
主人も帰り。夕食を済ませ、ホアンと一緒に麗奈を送って行く。

明日は休まないでよ!と麗奈に釘をさされていた。

19日(土曜日)『パラグライダーに』
今日は学校だが、クラスメート達は模擬試験なので、夕方までだそうだ。
ホアンは当然のように学校休む。
今日は主人がパラグライダーに連れていく予定にしている。

夕べ河上さんから、風が強そうだと電話あったが、さすがインターネトで
調べられた情報だけあって、正確だ。朝から庭の木々も揺れている。
日が射して、天気はいいのだが、風が強いのでは、飛べないかなぁ〜・・・・と
心配しながら、とにかく出かけて見ることにする。

今日も神の倉は飛びたいフライヤーの面々が集まって来ている。
風が強いので、未だ誰もテイクオフに上がっていない。
近藤のおばちゃんはランディング場で立ち上げの稽古をしておられる。

ホアンはボンゴ車の中で曝睡中だ。
とにかく、荒谷山に上がろう!という事になり、ホアンを起こす。
もちろん、ホアンは荒谷山では飛べないが・・・・。
午後からホアンの飛べる様な風に変わるのを期待して、主人は荒谷山で先に飛ぶ様だ。
風は少々きつめだが、ベテランフライヤーの方は次々にテイクオフしていく。
主人も飛んで出る。それを見届けて、私は車を降ろす事にする。
ホアンはまた車の中で寝ている。まあ!暇さえあれば良く寝る子だ・・・。

セブンイレブンに寄り、ランディング場に帰ると、岡本さんが、『稲垣さんはクロカンに
出られましたよー』と報告される。
さて、クロカンなら、迎えに行かなくちゃあ・・・。何処へ降りたんだろう?携帯で場所を聞いてみた。
5Kmくらい、広島方面に帰った大力鉄工のあたりらしい。
結構荒谷山であがったので、クロカンに出てみたものの、あまり遠距離に飛んで行かれなかったらしい。
いまから、キャノピーたたんで、沿道に出ているから・・・・というので、寝ているホアンをつれて、
主人を迎えに車を走らせる。

主人を見つけ、一緒に神の倉ランディング場に引き返す。
だいぶ風が変わって来た様子で、神の倉が飛べそうらしい。
寝ているホアンを起こし、何人かのメンバーと一緒に神の倉に上がる。
風は弱い。とにかく、今日は数で勝負だ。主人が先に立ち上げ出て行く。
今日はホアンは翼端折り等、やってみたいという。
沖の方で、弱いサーマルを見つけ、がんばってぐりぐりまわしている。
いいところまでいったが、ついに揚げきれず、ランディング目指して降りて行った。
「ホアン、キャノピー拡げて準備しておこうね!」と促す。
風が少し南っぽかったり、無風になったり、挙句はフォローになったりと皆さん誰も出る気がしないようだ。
ホアンも誰も出ないのに、僕も出られない・・・とのんびり座っている。

   今日は、ピッチング?ローリング? いや、スパイラルをやるぞ!    ホアンのすばらしい ロケットスタート!

日高さんが「ホアン、飛ぶのなら、いつでも出られるようにして、ハーネス付けて準備しとかんと・・・・!」と
言って下さった。ホアンはパラに関しては私の言うことはてんで聞こうとしないので
丁度、そう言ってもらって良かった!。ようやく、腰をあげて、準備し始める。
西から一瞬良い風が入って来た瞬間、ホアンの華麗なるテイクオフで飛び出して行った。

南方面でトップアウトしそうで、行ったり来たりしている。
この分ならうまくいけば、上がるかも・・・・・。でもすぐ沖の方に出てしまった。
はるか沖の方へ出て行くので、少し心配になり、「帰られます?」と井口さんに尋ねると
「充分ですよー」と言われ、安心する。
やがて、ランディング場目指して、まっすぐ飛んで行った。
また、すぐに上がるだろうからと、ボンゴ車を運転して下りる。
下に降りると、丁度他の人の車に乗せてもらい、ホアンや主人が出発するところだった。
玲子さんがいっちゃんを連れて来ていたので、ホアン達が飛び出すまで遊んでいる事にした。
いつもおとうさん、おかあさんと神の倉に付いて来るいっちゃん、いつかタンデムで一緒に飛ぼうと
子供用のハーネスを買ったらしい。
今日はブランコで慣らしている。さてさて、いっちゃんとのタンデムデビューはいつになるだろう?


   おかあさん、僕のタンデムハーネス買ってくれたけど・・・・・    いっちゃん まだ 怖いよう!

何気なくテイクオフを見上げると、主人がテイクオフしたところだった。
あわててビデオカメラを構える。ホアンの為に翼端折りをやっている。

今朝は強風だったが、今はもう穏やかな風に変わっている。むしろまったく無風状態。
翼端折を何度かやったあと、ターゲットは少しはずしたが、ランディング場にきれいに降りて来た。
続いて、ホアンのテイクオフだ。
出てすぐに、ちょろっと翼端を折った。それを見た主人、「もっとやらんと!かわいい翼端折りじゃのー・・・」とからかっている。
降りて来たホアンも、ちょっと照れくさそう!
3時過ぎまで飛べなかったので、今日は2本でおしまい。
夕ご飯を千里香で食べて帰る。
後何回パラグライダー出来るだろうか??ああ・・・日にちが欲しいホアンである。

   見て!見て! 僕の翼端折り!!    ふーぅ・・・ちょっと怖かったなー・・・。

   「おとさん どうだった? 「うん、最初は、あんなもんかな・・」    来週、もう一回とべるといいなぁー・・・・・。

明日は私と主人で計画した、ホアンのお別れ会である。
比治山の『豆匠』で、LPの西村さんとホアンのクラスメートが集ってのお別れ会をする。
由也君がホアンの友達を募ってくれて、なんと50名ばかり集まる事になった。
砂田君達や、エリックも来てくれる。
由也君は”お別れ会”は嫌なので、”お楽しみ会”にするんだ・・・と言っていた。
彼の気持ちが痛いほど伝わってくる。
由也君は”兄ちゃん!兄ちゃん!”とクラスメートから慕われるだけあって、とっても責任感のある子だ。
先生ににらまれてまで、ホアンの為に走り回ってくれている。
良い会になるといいな・・・・。

20日(日曜日)『ホアンお別れ会』
一ヶ月位前から、この会を計画していた。まだまだ先だと思っていたのに
ついにこの日が来てしまった。
ホアンとの別れの日が目前にせまっている。

今日はホアンの大切なクラスメートや友達がここ『豆匠』に沢山駆けつけてくれた。
ホアンと私達の間にたち、いつも心強い助っ人になって下さったLPの西村様も
お忙しい中、駆けつけて下さった。
AFS安芸支部で福富町にホームステイしているエリックも参加してくれた。
エリックもホアンと一緒で2月2日、コスタリカへの帰国の途につく。

クラスメートの参加に関しては、由也が一生懸命走り回ってくれ、こんなにも
沢山の友達がホアンの為に集まってくれた。
みんな、ホアンが帰ってしまうのを、惜しみ悲しんでいる。

11時半開始に合わせて、既にお料理が少しづつ、運ばれて来ている。
最初のお膳が整ったところで、まず主人が口を切る。

参加してくれた子供達へのお礼、ホアンに日本語そして、日本語の文法を
安芸府に出向かれてずっと指導して来られた西村様への御礼。

そして、ホアンと過ごしたこの10ケ月を振り返り、まずホアンが頭の素晴らしく切れる子で
ある事。文武両道という言葉がぴったりでパラグライダー、スキー、スノボー等、
何をやらせても、運動能力抜群であること。体力測定も校内N0.1であった事。
そして、勉強している場面は見た事がないのに、数学、物理も学校で図形を見ただけで理解出来る事
等‥、つらつらと挙げる。
そして、もうひとつホアンの持っている素晴らしい魅力、それは皆さんに愛される事。
この事はいくら本人が努力しても、見につくものでは無い。その生まれ備わったホアンの魅力を
コロンビアの為に生かして欲しい。
『コロンビアの大統領をめざして欲しい!』それがお父さんの願いですとスピーチする。

コロンビアという国も、まだまだ貧富の差がはげしく、マフィアが跋扈する世界一危険な国とか
コカインの国!とかいう悲しい印象は否めない。

最初、我が家に来た頃のホアンは、そんな自分の国に半ば、諦めと失望の気持ちを抱いていた。
彼の両親もホアンには、将来国を出て安全な場所で一生を送らせたいというお気持ちで
ある事など聞いていた。
この事は、何度か、夕食を食べながら、コロンビアの現状をホアンから聞くに付け
ホアンの様な、若いエネルギー溢れる若者が奮起すれば、かならずや、コロンビアという国も
変わっていく!と言って聞かせていた。

それを主人に言われ続けたせいかどうかわからないが、今のホアンはコロンビア愛してる!と
いう気持ちになり、自分達若者の可能性を少しづつでも考え始めたように見受けられる。


   ホアンには、コロンビアの大統領になってほしい!おとさんの願いだよ。    おとさん、期待が大きすぎるよ・・・・。





   みんな!ホアンが大統領になる日を夢見て ”乾杯”    落ち着いていい所だね・・・。

   お料理もおいしいよ!    たまには、こんな場所もいいでしょ!

目の前のご馳走も気になるので、主人の大演説が終了したところで、とりあえずお腹を落ち着かせる事に・・・。
ここは、豆腐料理専門だが、会席料理に近い上品な器、料理が並んでいる。
食べ盛りの子供達には、ひと箸、ふた箸でペロッと器の料理を食べてしまうので、ちょっと物足りないかな?
でも、マクドナルドのハンバーガー、ポテトの様なものを食べている子たちも、たまにはこんな料理もいいのでは?と
思いこの場所を選んだ。

でも”美味しい!美味しい!と言って、箸をすすめている。

つづいて、おかあさんから・・・・とご指名され、どうもこういう場は苦手な私、ホアンに一貫して
てこずらされた、朝のホアン起こしから、やっと開放されるぅーイエー!と叫んでおいた。
沢山沢山しゃべっていると、泣いてしまいそうで・・・・。



   朝のホアン起こしには、ほとほとくたびれましたぁ・・・・。    ああ これでやっと開放されます、イエッツピー!!

   学校でもホアン寝てばっかりって、聞いてます・・・。「おかさんうそばっかり・・・     ホアンがいなくなると思うと・・・・ううぅぅぅ・・!

私の簡単なスピーチに続き、LPの西村様。
今日来られて、ホアンがいかにみんなに愛されているか、初めて知ったと言われ感無量の様子。
ずっと、ホアンの為に学校へ赴かれていたが、図書室で勉強を教えられていたので
クラスメートの皆さんと直接会ったり、お話される機会が無かったからだ。
ホアンの魅力に改めてびっくりされる。

「ホアンがこうして安芸府で頑張ったお陰で、今年も南米からの受け入れが
決まりました」と、つい先日公となった事を発表される。
南米はベネズエラから、エンリケという名前の男の子が来る事が決まったそうだ。
エンリケは180Cmもある長身の子らしい。
「ホアン同様、皆さん仲良くしてやって下さい・・・」と。

引き続き順番に子供達のホアンとの関わり、思い出などを語ってもらう。

どの子もどの子も、『ホアンが来てクラスが変わった、自分が変われた。
孤立していた自分がクラスの中にとけ込み、クラスが楽しくなった。
クラスが一致団結していった。このクラスが大好きだ・・・』とこんなスピーチが
多かったのがとても印象的だった。

学校へ行っては寝てばかりのホアンだと思っていたが、ホアンの存在はクラスに大きな
変化をもたらしたようだ。

私も常日頃思う事だけれど、ホアンという子は不思議な子である。
自分ではその存在の大きさなどちっとも気に掛けていない。
学校へ行っては、歌を歌い、かっこよくパフォーマンスをし、気が付けばグーグー寝ている。
またそのパフォーマンスの魅力がたまらない。

最初にホアンにつけられたニックネームは”たらし”
女の子達はセクハラはやめてね!と笑いながら話す。
コロンビアをそのまま、日本に持ち込んだものだから、ついには担任の先生から
”度が過ぎます”と注意される始末。でもほとんど気にしていない。

我が家に来てホアンは毎日のように私の夕食の手伝いをしてくれた。
コロンビアの家ではまったくキッチンに立つなんてことはさらさら無かったホアン。
4月5月6月と毎晩と言って良い位、一緒にクッキングをした。
よもや、この頃にホアンがコロンビアに帰りたい!帰りたい!なんて思っていようとは
この鈍い私は気が付きもしなかった。
でもそのことを一切口にすることは無かった。歯を食いしばっていたのだ。

どこへも出かけないホアンを「この子はずっとこんなんだろうか?市内でも
出歩いてみればいいのに・・・」とやきもきしていたものだ。
でもなんの事は無い。素行の悪くなり始めた夏休み以降、海へ行ったり、花火をしたり
カラオケに行ったりとだんだん楽しくなってきた。
週に何度かは、11時、12時近くと遅い帰宅が目立ち始めた。時には外泊も・・・・。
帰らないホアンをどれほどやきもきして待ったろうか。
でも、その頃からホアンの日本語はぐんぐん上達し、夏休み以降、私の下手な英語より
主人との日本語の会話がスムースとなってきた。
時にはホアンの言う英語を主人が日本語に訳し、私に解説してくれる始末。

友達と深く関わった夏休みは、ホアンにとって日本大好きとなる大きなきっかけとなった。
彼女も出来た。
西村様もおっしゃっていた事だが、ホアンはあまり感情を外に出さないので
来た時と傍目には全く変わらないように見える。
私達の前でも、いつも明るく振舞っている。
そんなホアンだが、内面は大変ナイーブで繊細、人の観察も鋭いものをもっている。
ズバッ、ズバッとその人の性格をいってのける。しかもそれがよく当たっている。
やはりホアンはただものではない!
あのひとなっつこい笑顔。いくら怒っていても、ホアンに”にっ!”とされると
ああ!どうでもいいや、許しちゃう!許しちゃう!と言う気持ちになってしまうから不思議だ。


   ホアンのこの笑顔に何度だまされた事か・・・・。うん?    由也「ホアンとは、一生別れはありません!」

   ひろし 「あばよ ブラザー!!」    会長 「ホアンはエール エール 友達で・・・・」

   エリック 「ホアンは とっても やさしい すばらしい!」    越 「ホアンは僕の分身で・・・」

   麗奈 「ホアン 愛してるヨ・・・」    西村さん 「ホアンがこんなにも皆さんにに愛されていて・・感無量です」

「ホアン、明日はホアンの為に集まってくれるんだから、最低15分くらいスピーチしろよ!」と主人に前の晩言われたホアン、
朝方4時頃まで寝られなくなってしまったらしい。
今朝も起きないホアンに怒り心頭のおかさんでしたが・・・。

ホアンと深く関わった越君、由也。彼らとは私達も一緒に、スキーに行った、スノーボードに行った。
パラグライダーも見に来てくれた。食事したり、私の大切な子供達みたいになった。
日本に来て、夕食の時にホアンの口にする名前が越君、由也だった。
7月3日はホアンの誕生日だった。私はホアンのびっくり誕生会を計画した。
その時尽力してくれたのが、越君だ。
すでにその頃、ホアンは女の子の中でも人気があり、我が家に招待するには
あの子を呼んで、この子を呼ばないのでは・・・あの子を呼べば、この子も・・・・と
言った状況らしかったので、女の子を入れれば限りなく人数が増えそうなので、
結局今回はクラスの中の男の子限定!にしてもらった。
40名位いる中で男の子は丁度7〜8名らしかったので、男の子だけ招待した。
後で、越君女の子から恨まれたのではないか?と心配した。
越君もホアンのベストフレンドである。
ホアンも日本に来て当初、越君をとても頼りにしていた。
西村さんのスピーチにもあったように、日本になかなかなじめないホアンを
常にささえてくれた越君、越君自体もホアンが来てすごく自分が変われたと言う。
この二人の絆も一生続くだろうと思う。

由也はお父さんの仕事の関係で、アメリカ生活が長かったので、日本語のわからないホアンと
英語でのコミュニケーションが出来ホアンをいつも助けてくれた。
由也もクラスメートから少し孤立していたらしい。ホアンが来た事は由也にとっても
クラスとのかかわりが深くなるきっかけとなり、変わって行ったという。

今日この会のビデオ撮りをお願いした会長こと平田君。
彼も何度も我が家に来てくれた。いつも冷静沈着というイメージだが心はとても繊細。
ホアンとエールエールへ行って沢山マクドナルドをほおばった。
マクドナルド10ケの話も聞いた。我が家に帰ったホアンに「夕ご飯は?」と聞くと
「マクドナルド食べた」と言う。「マクドナルドくらいじゃーお腹空くから一緒に夕ご飯食べましょ」と
言うと、「10ケ食べたから・・」と言う。う〜ん!10ケじゃー夕ご飯食べられないわねーと笑った。
インターネットカフェに行くと、平田君専用のビップの部屋へ入った!と眉ご上下にしてみせる
ホアンであった。平田君のスピーチでも、「ホアンが来てくれて僕は変われたと思う」と言っていた。
ホアンは彼にも少なからず影響を与えていただなーと。

ホアンの大切な彼女、麗奈。彼女も「おばちゃん、おばちゃん!」といつも私をたよりに
してくれて、なんでも話が出来る存在となった。
私は息子ばかりで女の子がいないので、可愛くてしかたがない。何でも相談してくれる。
私の誕生日祝いといって、由也や越君と一緒に、立派なケーキを焼いて持って来てくれた。
涙が出るほどうれしかった。
そんなやさしい彼女だから、きっとホアンも大好きになったに違いない。

なつ来ちゃんもホアンに手取り足取り、日本語を教えてくれた大切なお友達。
スピーチで「この、あまぁ!」とか、あまりいい言葉を教えなかったけど・・・と
笑わせていたけれど、私がホアンの参観日に行った時、印象に残ったのが彼女だった。
利発で、はきはきと質問し、先生の言われる事に彼女だけが、いつも答えていた。
頭のいいお嬢さんだな〜・・・と心に残った。
そのなつ来ちゃんも、何度も私のうちに来てくれた。
台所に立ちお手伝いもしてくれた。ほんとに可愛いなつ来ちゃん。
彼女もホアンが帰ってしまうことを誰よりも悲しんでいる。

ホアンのあの”てかてか”のおでこが大好きというスピーチ、あのゲジゲジ眉が
好きよ!というスピーチなどみんなの笑いを誘っていた。
これもホアンの愛嬌のひとつである。


   「僕・・・・・僕・・・・コロンビア今帰りたくない、 帰りたく・・ナイ・・」    「ぜったい ぜったい 忘れない・・・・忘れる事できない・・・」




            参加者全員で ハイ パチリ!


女の子は涙、涙でホアンとの別れをさみしがり、男の子もホアンの存在の大きさをスピーチし
ホアンがいかに、一人一人に深く関わって来たかを、(でも本人の意識には無いのだが・・・)今日の皆さんの
スピーチで知った。それぞれの人に、確実な印象を与え、一人一人が変わり、ついにはクラス全体が
一致団結していくという、素晴らしい結果となった。
ホアンの存在は一体何なんだろう??。これほどまでに大きい存在の子はいないと思う。
ホアンという子はそんな星のもとに生まれて来ているのだろう・・・。
ホアンのお母様がホアンが来た最初の頃に、私にメールを下さった事があった。
ホアンは誰にも愛される子です・・・と書かれていた。
コロンビアでもまさにこんな状況なのだろうと察せられる。
街を歩いていても、ご両親の全く知らない人達が”ホアン!ホアン”と声を掛けるのだそうだ。
「ホアン、あの人誰!どうしてあの人知ってる?”と両親はびっくりして聞かれるのだそうだ。

最後にホアンのスピーチだ。
スピーチという事でいえば、来た当初、日本語へ言えるのは、
『わたしのなまえはホアンです。コロンビアからきました!』とこの言葉だけだった。
(一応スピーチか?)こればかり10回以上も言ったと笑わせていた。
いや10回よりもっと沢山だろう。
我が家に来たホアンを近所に紹介して廻った時も、『こんにちわ、わたしのなまえはホアンです・・・・』
を繰り返して言った。
そして、次のスピーチは、学校でコロンビアの事を紹介して下さいとの依頼で、国際科で語ったスピーチ。
それが大変好評だったらしい。今度は日本の諺を交えて語ったスピーチ。これも大うけだったらしい。
そして、YMCAで行われた、AFSの行事での自分の国を紹介するスピーチ。
秋のAFSの平和スピーチで優勝した時の、『身体髪膚、これを父母に受く。敢えてき傷せざるは
孝の始めなり』の
記念すべきスピーチ。
留学生はスピーチをする場面が大変多い。
ホアンもおとうさんに教わった『起承転結』を考え、大変スピーチ上手になった。
今日のスピーチはおそらくホアンにとって最後のスピーチになるかもしれない。
ホアンは思いをこめて、語り始めた。

『最初日本来たときは、まだコロンビア沢山もってた。友達沢山あったし、パーティした。
日本来てひとりだった。最初みんなも、変な人!とか、セクハラばっかりとか・・・
でもだんだん友達出来た。いっぱい悪いことした。そして、楽しくなり帰りたくなくなった。
今、僕はコロンビア 帰りたくない・・・・帰りたくない・・・と思う』
そう言って胸を詰まらせる・・・。

最後に、2つ言いたい事ある・・・
1つは『ホストファミリーとか、LPの方とかそして友達、クラスの皆んな、皆んな!ありがとう、
ありがとう・・・ほんとありがとう・・・』
そして、もうひとつ、
これは別れのパーティじゃない! ずっとずっとのパーティ、一生死ぬまでのパーティと思う・・・・』
これだけ言うと、これ以上もう言葉にならない。
ホアンも万感迫った様子。私も聞きながら、涙があふれ、クラスメートたちも目頭を抑える。
お互いに多くを語らなくても、思いがすべて伝わりあっている、そんな感じである。
ホアンのスピーチに拍手が起こる。

こうして、今日のホアンのお別れ会、由也名付けた”お楽しみ会”は涙!涙!のうちに終了。
余談だが・・・子供達がスピーチしていて、座が時折ざわめくと、「しっ!!」と由也が言うと
さっとみんな静かにする。こんなところにも、由也がみなさんに慕われていること、また
こうしてよく気が付く由也に感心させられる。ほんとに、由也君の力は大きかった。
ほんとにありがとう!
終了すると、クラスメートの女の子達が、ホアンのおかさん・・・と言って
ものを言いに来てくれる。「私もお家に行っていいですか?」と女の子。
「ええ!ええ!是非ホアンのいる間にいらっしゃいね・・・いらっしゃいね・・・」と言っておいた。
外で皆さんそろったところで、記念写真を撮る。

由也の号令でみなさんカラオケに行くらしいので、私達はLP西村様とお互い苦労の
ねぎらい合いをすべく、エールエール館に向かった。

2時間ばかり、思い出話に花が咲き、自宅に帰ったのは夕方6時頃だった。
外ではしとしと冷たい雨になっている。
ホアン寒くて風邪ひかなければいいが・・・・。

ホアンはどうせ外で何か食べて帰るだろう・・・と主人と二人で夕食を済ませる。
今日平田君の撮ってくれたビデオをみていると、9時過ぎホアンから電話。
「おかさん?ホアン、駅。今から帰る。おかさん 駅来たい?」といつも調子いいホアン。
もう、こうして迎えに行く事も無いだろう、雨も降っているし・・・・
(仕方ないけど、迎えに行ってやるか!)てな調子で車のキーを持ってうろうろすると、
『よいよ!おまえは(あまやかして・・・)・・・・』と主人の呆れ顔を横目に、いそいそと出かけて行く
私である。


      お父さんのご挨拶の原稿



      『ホアンお別れ会100景』
                         写真が多いので重いですよ